43 赤射・蒸着(宇宙刑事シャリバン)
前回書いたとおり、鷹羽にとってのターニングポイントとなった作品は、「ダイナマン」と「宇宙刑事シャリバン」です。
ただし、「シャリバン」は、本放送当時は、最終回しか見ていません。
それなのに、そのインパクトの大きさから、鷹羽はスーツアクターになりたいとか思っちゃったのです。
「宇宙刑事シャリバン」は、1983年から1年間にわたって放送された作品です。
前年の「宇宙刑事ギャバン」に続く宇宙刑事シリーズ2作目であるとともに、この後1996年放送の「ビーファイターカブト」まで続く通称“メタルヒーローシリーズ”の2作目でもああります。
このメタルヒーローシリーズは、更に「ギャバン」を1作目として、3作目である「宇宙刑事シャイダー」までを宇宙刑事シリーズ、5作目「時空戦士スピルバン」までをコンバットスーツヒーローシリーズと細分化されています。
これらの違いを簡単に説明しましょう。
まず「宇宙刑事シリーズ」は、正に「宇宙刑事」とタイトルが付くシリーズで、完全に同一の世界観を有しています。
コンバットスーツヒーローシリーズと言ったときは、「宇宙刑事」と冠しておらず世界観も違うが類似する設定群を持つ「巨獣特捜ジャピオン」と「スピルバン」を含みます。
そして、メタルヒーローシリーズと言うと、その後の「超人機メタルダー」や「世界忍者戦ジライヤ」などの“金属的な外観の装甲を持つヒーロー”全般を指すことになります。
なお、「ビーファイターカブト」の翌年から放送された「ビーロボ カブタック」「鉄ワン探偵ロボタック」についても、それぞれヒーローモードになったときの外観がメタルヒーロー的であるため、メタルヒーローに含める人もいたりします。
さて、宇宙刑事シリーズというのは、バード星に本部を置く銀河連邦警察から地球に派遣された宇宙刑事が、宇宙犯罪組織の魔の手から地球を守るためにその特殊装備を駆使して戦う物語です。この設定は当時大変斬新なものでした。
銀河連邦警察という組織をバックに、主人公をそこの刑事、敵を地球に本拠を置く犯罪組織とすることで、戦う目的と理由を明確にしたのです。
これは、「ウルトラマン」などに代表される、宇宙人がその特殊な力や進んだ科学で地球を守るために戦う物語に特有の“どうして宇宙人が命懸けで地球を守ってくれるの?”という疑問を素直に解消してくれるものでした。
更に、いずれの作品でも、主人公は地球育ちという“仕事以外でも地球を守りたい理由”が与えられており、戦いが職業的にならないよう配慮されています。
「シャリバン」は、銀河パトロール隊長に昇進したギャバンの後任として地球に赴任した伊賀電が、シャリバンのコードネームと赤いコンバットスーツを与えられ、パートナーのリリーと共に、魔王サイコ率いる宇宙犯罪組織マドーと戦う物語です。
シャリバンは、「赤射」の変身コードを叫ぶことで、ソーラーメタル製の赤いコンバットスーツを1ミリ秒(0.001秒)で装着します。
ギャバンのコンバットスーツがグラニウム合金製で蒸着タイムは0.05秒だったのに対し、変化を付けました。
この辺は、2作目としての特色を出すためでしょう。ちなみに次作「シャイダー」では、青いグラニウムα製で、変身コードは「焼結」、装着タイムは1ミリ秒です。
当初、電は純粋な地球人として描かれていましたが、19話で、2000年前マドーに滅ぼされたイガ星人の末裔であることが判明します。これ以後、電は、イガ星再興という新たな目標を持つことになります。
同じくイガ星の生き残りで、地球にやってきたベル・ヘレン、ベル・ビリーの姉弟との出会いと死に別れで、その思いはより強くなりました。
一方、サイコは自らのパワーアップのため、地球に逃げ延びたイガ星人が隠した高密度光エネルギー結晶:イガクリスタルを狙います。
そんな中、死霊界からやってきたレイダーがマドーの雇われ幹部となります。
実は、レイダーもまたイガクリスタルを利用して万年王国を作ることを夢見ており、マドーの幹部であるガイラー将軍を陥れるなどして暗躍を始めました。
そして終盤、レイダーによってイガクリスタルは奪われ、マドーの本拠地:幻夢城で、ドクターポルターによりエネルギー抽出装置が制作され始める。
機が熟したと見たレイダーは、遂にサイコに反旗を翻して倒しますが、サイコの分身である戦士サイコラーが現れて、サイコを復活させました。
サイコとサイコラーは命を共有しており、どちらかが死んでも、もう片方が復活させることができるのです。
レイダーを倒したサイコラーは、そのままシャリバンを倒しに行きます。
倒しても復活するサイコラーに苦戦するシャリバンは、駆けつけたオルガナイザー(宇宙の平和活動家集団)の協力でからくも脱出し、ギャバンに応援要請します。
こうして、最終回「赤射・蒸着」において、ギャバン&シャリバンの2大ヒーロー対サイコ&サイコラーの最終決戦が行われることになるのです。
では、最終回です。
(ストーリー)
サイコラー出現とのシャリバンの報告を受け、応援のためギャバンとコム長官がドルギランで地球にやってきた。
また、同時にオルガナイザーも、イガ星戦士達に“地球で最終決戦近し”の檄を飛ばしていた。
幻夢城へと続くサイコゾーンの入口を探す電を戦闘員アウトローの集団が襲う。
地球へとやってきたイガ星戦士団と共に戦う電の前に、再びサイコラーが現れた。
そして、ギャバンも加え、幻夢界で遂に最終決戦が始まった。
ギャバン・ダイナミックとシャリバン・クラッシュの必殺技同時攻撃も、不死身のサイコラーには通用しない。
やがてサイコラーは姿を消し、「お前達は永久に幻夢界から出られない」と魔王サイコの声が響く。
幻夢界は、サイコラーを倒さない限り解除されることはないのだ。
脱出不能になった2人の前に、イガクリスタルの守護者である“聖なる者”が現れる。
“聖なる者”は、なぜイガクリスタルを守ってくれなかったのかというシャリバンに「いずれ分かる」とだけ答え、幻夢城への道筋を案内するコンパスを残して消えた。
コンパスの導きで幻夢城に突入し、ドクターポルターらを倒してサイコと対峙した2人は、サイコの高圧電流攻撃でコンバットスーツのメカが狂いはじめて絶体絶命の危機に陥る。
そのとき、イガクリスタルがサイコの前に現れ、サイコのエネルギーや高圧電流を吸収し始めた。
“聖なる者”は、このときのためにイガクリスタルを幻夢城内に持ち込ませておいたのだ。
「一緒に撃つんだ!」ギャバンとシャリバンは、エネルギーを吸われて力を失ったサイコとサイコラーに、それぞれ必殺技を放つ。
命を二分して持っているサイコ達も、同時に倒されればもう再生はできない。
遂に魔王は倒れ、幻夢城も崩壊した。
マドーは滅んだ。
電は、イガ星を再興するために旅立つことになった。
喜ぶ電に、コム長官は「言っておきたいことがある」と言う。
「イガ星再興のために全力を尽くせ、でしょ? 分かってますよ」と答える電に、長官は「違うな。本日ただ今より、イガ星地区担当刑事を命ずる」と新たな使命を与えた。
みゆき達イガ星人を乗せ、地球を飛び立つグランドバース。
その前方にイガクリスタルと“聖なる者”が現れ、イガ星に向かって飛んでいった。
“聖なる者”は、イガ星の守護神だったのだ。
苦しかったマドーとの戦いの日々、志半ばにして逝ったヘレンやビリーのこと、地球での暮らしなど万感の思いを胸に、電は地球を後にする。
このエピソードは、2つの重要な意義を持っています。
1つは“コンバットスーツ姿のギャバンとシャリバンが共闘する唯一の回”であること。
コンバットスーツ姿のギャバンは48話で登場していますし、電と烈が一緒の画面に並んだことはありますが、コンバットスーツ姿のギャバンとシャリバンとが並んだことはありませんでした。
また、次作『シャイダー』では、ギャバンもシャリバンも本編にはイメージシーンのイラストでしか姿を出していません。
最終回後の特番『3人の宇宙刑事 ギャバン・シャリバン・シャイダー』では、3人がコンバットスーツ姿で並び立つ姿が一応画面に出てはいるものの、ただ出てきて名乗りをあげただけ。
そういうわけで、この共闘は実に貴重だったりするのです。。
2つ目は、東映トクサツには非常に珍しい盛り上がりつつ綺麗にまとまった最終回だということ。
東映トクサツは、最終回で失速するパターンが実に多かったのです。
昭和『仮面ライダー』シリーズの大部分のように首領との対決が拍子抜けするようなものだったり、『シャイダー』みたいに大帝王クビライの頭部にとってつけたような身体を付けた上に、数万年前の伝説の戦士の乗り物がブルホークに飾りを付けただけのシロモノ(小道具作るのをケチった)だったり、『メタルダー』のようにいきなり亡霊が襲ってきたり。
このように、それまでの盛り上げが嘘のような変な展開をしたりして、素直に感動できなかったり、感動した後で振り返ってみると疑問点が山のようにあったりするものが多かったのです。
『シャリバン』ではラスト4話の間に、
・イガクリスタルが奪われたとき、なぜか聖なる者が助けてくれなかったこと
・サイコゾーンは幻夢城に通じていること
・サイコゾーンへの入口は日本の各所に隠されており、マドーはそれを利用していること
・1話から度々登場していた坊主頭の男がサイコの分身サイコラーだったこと
などの様々な情報を巧くまとめあげ、
・サイコを倒す決め手となったのが、奪われたイガクリスタルだったこと
で、決戦目前に大切なイガクリスタルを奪われてしまった失敗が失敗ではなく勝つための(聖なる者による)布石だったことになり、更に、サイコを倒すためには、サイコとサイコラーを同時に倒さねばならないことで、同時必殺技という見せ場にもはっきりとした理由が与えられたのです。
こうやってまとめ上げた戦いの後に、コム長官が「本日ただ今よりイガ星地区担当刑事を命ずる」と言ったことにも大きな意味があります。
実は、グランドバースは「シャリバン」というコードネームの宇宙刑事に与えられた装備であり、「シャリバン」の担当地区が地球である以上、グランドバースに乗ってイガ星に行くのは公私混同の上に命令違反なのです。
本来、電がイガ星再興を目指すのなら、銀河連邦警察を退職した上で自力で宇宙船を調達し、それに乗ってイガ星に行かなければなりません。
電としては、ごく自然にグランドバースを移動手段として使おうとしていたわけですが、これをこのままやっていたら、恐らく後年、作品の欠点として指摘されていたことでしょう。
『シャリバン』では、これをコム長官の口から語らせ、電が「あ…!?」と驚いてみせることでオチとしての笑いとなり、同時にコム長官の粋な計らいで、イガ星再興を宇宙刑事の仕事の一環として行えるようになったことを示してもいるわけです。
ちなみに、シャリバンのパートナーとして地球に赴任していたリリーは、イガ星担当としての辞令を貰っていないため、住処であったグランドバースを追い出された状態で地球に残りました。
『3人の宇宙刑事』で語られた後日談によると、リリーはすぐに宇宙刑事養成学校の教官となってバード星に帰ったようです。
ところで、この最終回では、こういったドラマ部分は本編のごく僅かに止まり、残りの時間はアクションシーンばかりです。
言ってしまえば、“ほとんど戦ってばかり”の最終回なのですが、このアクションがまたハイレベルなのです。
ギャバンとシャリバンは、同系列のヒーローであるが故に、同種の武器と技を持っています。
このエピソードでは、最終決戦にしてダブルヒーローの初共闘と、ただでさえ視聴者のボルテージをあげまくる上に、細かいカット割で両者を交互に映しているので、戦闘シーンのテンポがとてもいいのです。
例えば変身シーンでは、
烈「蒸着!」
電「赤射!」
烈「ジョウ!(ジャンプ)」
電「ジュウ!(ジャンプ)」
(2人で交差しつつ前宙返り)
(烈、壁を蹴る)
(電、壁を蹴る)
(2人で並んで前宙返りしつつ光球に)
(光が消えてコンバットスーツ姿になって着地し、それぞれが振り向く)
シャ「宇宙刑事! シャリバン!!」
ギャ「宇宙刑事! ギャバン!!」
といった具合です。
この1行分ごとにカットが変わっています。
また、戦闘中にも
シャ「シャリバンキック!」
ギャ「ギャバンキック!」
シャ「スパークボンバー!」
ギャ「ディメンションボンバー!」
と、同種の技を連続で決めます。
その上、幻夢界に入るときも
ギャ「サイバリアーン!」
シャ「モトシャリアーン!」
とやっているのです。
残念ながらドルとグランドバースが共闘するシーンはありませんが、単純にアクション物として見た場合でも、トクサツ好きなら燃えること請け合いのシーン続出です。
そして、最後のトドメのシーンでは、
ギャ「一緒に撃つんだ!」
シャ「はい!」
ギャ「ギャバン・ダイナミック!」
シャ「シャリバン・クラッシュ!」
と続きます。
とにかく2人の戦闘シーンは、好対照をなしていて見ていて小気味いいのです。
戦闘シーンだけでも十分いける最終回なのに、綺麗に終わっている…これがどんなに素晴らしいことかは、東映トクサツ好きならきっと分かってくれることでしょう。




