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33 岬ユリ子はもうただの女だ(私が愛したキャラクターたち&仮面ライダーSPIRITS)

 東映のプロデューサーで、平山亨さんという方がいました。

 スーパー1までの「仮面ライダー」シリーズのプロデューサーをやっていた人です。

 TBSの「空想特撮シリーズ」は、円谷の「ウルトラQ」「ウルトラマン」から東映の「キャプテンウルトラ」に引き継がれ、その後また円谷の「ウルトラセブン」と続いて終わりました。

 この「ウルトラマン」から「キャプテンウルトラ」への引き継ぎのパーティーで、ムラマツキャップ役の小林昭二(あきじ)さんと平山さんが話す機会があり、その際、平山さんは、小林さんの子供番組への姿勢に深い感銘を受け、“いつか一緒に番組を作りましょう”と約束したそうです。

 一般に、こういう約束は社交辞令でその場限りのものになりやすいのですが、平山さんはその後、本当に「仮面ライダー」の立花藤兵衛役に小林さんを起用しています。

 小林さんが「ウルトラマン」「仮面ライダー」という日本の二大ヒーロー番組にメインキャラで出演しているのは、偶然なんかじゃないんですよ。




 さて、この平山さん、番組のキャラに強い思い入れを抱く人らしく、そのキャラの背景なんかを考えるのが好きなようです。

 「仮面ライダー」のサントラLPへの寄稿だったと思いますが、一文字隼人が対仮面ライダーの改造人間の素体として選ばれた理由を書いています。

 有名なので知っている人も多いでしょうが、仮面ライダー2号:一文字隼人は、本郷猛役の藤岡弘(当時)さんが撮影中に大怪我をして入院してしまったため、穴埋めとして急遽設定されたキャラです。

 一文字の登場に伴い、本郷を戦死させようという意見もある中、平山さんは“それでは藤岡君が治っても復帰できない”と、“本郷猛は、ショッカーの計画を追ってヨーロッパへ行き、一文字が日本を託された”という設定を考えたのだとか。

 これが、その後のダブルライダーというイベントに繋がっていったわけですね。本郷が死んでいたら、「仮面ライダーV3」以降の作品はなかったかもしれません。

 ちなみに平山さんは、「悪魔くん」でも、メフィスト役の役者さんが出演できなくなった時に、“メフィストは魔界の法に違反し捕らえられたので、弟が代わりにやってきた”という説明で、通称「弟メフィスト」を登場させたことがありました。




 話を平山さんの寄稿に戻すと、一文字は、オートレーサー本郷猛の追っかけカメラマンで顔見知りでした。その関係でショッカーに目を付けられ、本郷への刺客に選ばれた、ということになっています。

 もちろん、平山さんのオリジナル設定です。

 平山さんは、1984年ころから、朝日ソノラマが出している「宇宙船」という隔月刊の特撮雑誌に「私が愛したキャラクターたち」という連載を持っていました。

 「仮面ライダー」の死神博士、地獄大使、「人造人間キカイダー」のプロフェッサー・ギル、「イナズマンF」のガイゼル総統など、主に悪役について、“なぜ歪んだのか”を突き詰めています。

 色々な人に裏切られ続け、ついには娘にまで反旗を翻されたガイゼル総統が、最後に「敵は裏切らない!初めから敵なのだ。イナズマンは裏切らない。イナズズマンは私を殺しこそすれ、絶対に裏切りはしない」と、イナズマンとの決戦に臨むシーンは、ぞくりときます。

 これを読んだ後で「イナズマンF」最終話のガイゼルの断末魔「イナズマン…」を聞くと、本当にガイゼルがそう考えていたんじゃないかとさえ思えるほどです。

 同じ雑誌で、「仮面ライダー」への寄稿もしていて、そこでは、暗闇大使という“地獄大使のそっくりさん”程度のキャラが、平山さんの手によって壮絶な人生を与えられました。

 演じていたのが地獄大使を演じた潮健児さんで、衣装もそっくり、仮面ライダーから地獄大使と間違えられ、「あんな奴と一緒にするな!」と激高した、それだけの背景から、地獄大使=ダモンと暗闇大使=ガモンの確執を描くに至ったのです。

 この設定は、村枝賢一氏による漫画「仮面ライダーSPIRITS」でも引用されているようです。

 「私が愛したキャラクターたち」は、雑誌連載で単行本(現在は絶版)も出ていて、LPレコードのライナーノーツと違ってメジャーですから、村枝氏が知っていても不思議はない、というか、仮面ライダー関連で商業誌に書くなら、きっと資料に挙がるレベルの常識なんでしょう。あくまで「商業誌に書くなら」ですよ。




 村枝氏の「仮面ライダーSPIRITS」は、ライダーに対する愛が感じられていいですね。

 正直言って、独自の解釈や設定もあるので、全面的に肯定するわけでもありません。Xがマーキュリー回路がオーバーヒートした際にセタップ変身するとか。ですが、それらを差し引いても、この作品は好きです。

 好きなシーンはいくつもあります。例えばスーパー1編。

 「仮面ライダーSPIRITS」は、序盤、1号を主役にした読切から連載になり、2号~スーパー1まで、1人ずつ主役にした物語を綴りました。

 そのスーパー1編「流星(ほし)の神話」での“月にウサギはいたか”のやりとりなんかいいですよ。

 仮面ライダースーパー1は、国際宇宙科学研究所が作った惑星開発用改造人間という設定で、ファイブハンドと赤心(せきしん)少林拳がウリのライダーです。

 ファイブハンドというのは、通常のスーパーハンド(銀色)を、パワーハンド(赤)、エレキハンド(青)、冷熱ハンド(緑)、レーダーハンド(金色)の4つの特殊能力を持つ前腕に交換できる能力です。OPの歌詞にある「5つの腕で守る」というのは、これのことです。

 赤心少林拳は、この作品用に少林寺拳法をアレンジした架空の拳法です。元々スーパー1は、ジャッカー電撃隊のような、変身装置によって変身する設計でした。ところが、完成直後に敵組織:ドグマの襲撃に遭い、仲間は全滅、変身装置は壊されてしまいました。

 けれど、その時に偶然変身できたことから、変身装置を介さずに変身する方法を模索した結果、赤心少林拳によって気合いを高めることで変身できるようになったのです。番組中盤以降、“拳法の腕が上がったので、気合いを高めやすくなった”という説明で変身ポーズが短縮されています。


 さて、「仮面ライダーSPIRITS」スーパー1編です。

 アメンボロイドに襲われた月面基地から脱出し、無理な体勢で大気圏突入するスペースシャトルを守るため、スーパー1は船外に出て冷熱ハンドで温度を下げ続けます。

 そんな中、シャトルを操縦するセルゲイに、息子からの伝言として「月に兎はいたのか?」と伝えられます。セルゲイは離婚していますが、離婚当時まだ幼かった息子は、セルゲイから聞かされた“(釈迦に食べられるため火に身を投じた)兎に会いに月に行く”という言葉を覚えていたのです。

 それに対するセルゲイの「いたぜ兎がな!! 話のとおりバカがつくくらいお人よしの兎だ!! だがな そいつはスゲェタフなヤツだ… 炎の中にとびこんだって絶対に死にはしねえ!!」という言葉がシビれるのです。

 アメンボロイドは、元は拳法家で、老いて衰える肉体に絶望してバダンの怪人になりました。

 地球で対峙した際、「拳士ならその力 己が拳の為にあるのではないのか」と言うアメンボロイドに対し、スーパー1は


 「俺は拳法家である前に、サイボーグS-(スーパー)1として生まれた。人の夢の為に生まれた。この拳…この命はその為のものだ」


と赤心少林拳の構えを取ります。

 これで燃えなきゃ(おとこ)じゃない。

 作品に対する愛が溢れていますね。

 ちなみに、スーパー1は、このアメンボロイドが「奴の針には俺でも手こずる」と評したヤマアラシロイドと、ZX(ゼクロス)編で戦っています。

 スーパー1は、ヤマアラシロイドの針を赤心少林拳「梅花(ばいか)の型」で叩き落とします。 梅花は、梅の花を守るように全てを包み込む守りの技であり、ここでも“倒すための戦い”ではなく“守るための戦い”というスーパー1の姿勢が表れています。




 ZX編になってからですが、V3=風見志郎がZX=村雨(りょう)を信用できないと言っているところに滝和也が投げかけた


 「村雨(あいつ)だってお前らだって人間だろうが」


という一言も、とても好きです。

 仮面ライダー=改造人間も、心は人間なのだと。

 本郷や一文字と共に戦ってきた滝だからこそ、一切の気負いなく“お前達は人間だ”と言い切れる。

 言われた風見があっけにとられていたのが印象的でした。




 そして、「私が愛したキャラクターたち」は、ストロンガー編でも引用されているようです。

 平山さんが取り上げたのは、悪役ではなくタックル=岬ユリ子でした。

 タックルは、番組中、デルザー軍団編で、ドクターケイトの毒に冒され、自爆技であるウルトラサイクロンでケイトと相討ちになりました。

 かつて、プロトン爆弾から東京を守って散ったライダーマンに、V3はライダー4号の名を送りました。

 けれど、怪人と相討ちになってストロンガーを救ったタックルには、ライダー8号の名は送られていません。

 ライダーマンもタックルも、同じように口元が露出したデザインで、同じように戦いの中で散ったのに、どうしてタックルは仮面ライダーではないのか。

 その疑問に対する平山さんなりの答えがこれでした。


 ストロンガー=(じょう)(しげる)は、ユリ子を伴侶として葬ってやりたかったのだ。



 テレビ番組としての「仮面ライダーストロンガー」では、茂とユリ子の間柄は“相棒”“ケンカ友達”レベルに終始していました。

 ですが、唯一、2人の気持ちを感じさせる会話がありました。

 それは、毒に冒され死を悟ったユリ子が茂にコーヒーを淹れた際の


 「いつか、悪い怪人がいなくなって世の中が平和になったら、2人でどこか綺麗なところに行きたいわ」

 「いいねえ、俺も行きてえよ」

 「ほんとに約束してくれる?」

 「ああ、約束だ」


というものです。

 この会話を、平山さんは拾ったのです。

 共に戦ってきた大切な女を、戦士としてではなく伴侶として葬りたかったのだと。




 「仮面ライダーSPIRITS」ストロンガー編である「彷徨(さすらい)の雷鳴」では、デルザーを滅ぼした後の茂がユリ子の墓を守って暮らしていること、墓の周りに植えた花は枯れてしまうことが描かれています。ユリ子の死体から染み出した毒の影響で、花が根付かないのです。


 茂は、襲いかかってきたバダンのコマンダー(後のZX)から、墓の下に眠っているのも仮面ライダーかと訊かれて


 「そいつは十分すぎるほど闘った

  『仮面ライダー』を名乗る事もねえ

  岬ユリ子はもう ただの女だ」


と答えます。

 素直に想いを口に出せず、いがみ合ってばかりいたけれど、想い合っていた2人。

 コマンダーとの戦いが終わり、ユリ子の墓の傍に根付いた百合の花を見付けた茂は、バダンとの戦いに赴くことを決意します。

 「俺よ、ボチボチ行かなくっちゃな

  約束だからよ」

 “いつか悪い怪人がいなくなって世の中が平和になったら、2人でどこか綺麗なところに行きたい”

 その約束を守るため、世界が平和になる日のために、茂は「今日もたたかう」のです。


 このエピソード、チャージアップしたストロンガーがコマンダー如きにボロボロにされたり、ストロンガーがウルトラサイクロンを使ったりと、鷹羽的には気に入らないところも多いのですが、ユリ子についてのこの展開は感動せずにはいられません。

 平山さんが出したパスを見事にシュートに繋げたと言えるでしょう。


 実のところ、本編の台詞や描写から裏側を考察するという鷹羽のスタイルには、平山さんの影響が少なからずあったりします。

 女性の仮面ライダーは、「仮面ライダー龍騎」劇場版に登場する仮面ライダーファムが初となります。

 その前作である「仮面ライダーアギト」には、アギトそっくりに変身する女性が登場しますが、戦ったりはしませんし、変身後の名も与えられていません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 平山亨さん ライダーのほかに赤影やらジャイアントロボも造ってるんですよね わたしは平山亨と円谷と手塚で育ってます [気になる点] アギトの場合人類が「進化」してアギトになる設定でアギトの…
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