表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/76

3 そうら、幸福がここに(ペリーヌ物語)

 11月16日、「ペリーヌ物語」の主人公ペリーヌを演じた鶴ひろみさんが亡くなりました。

 鷹羽は、名作シリーズ初期の作品は全部見ていますが、この「ペリーヌ物語」が「赤毛のアン」と並んで好きです。

 そこで、追悼として、「ペリーヌ物語」について少し語りたいと思います。



 ちなみに、今回のタイトルは、オープニングの3番のサビです。

 1番では「だけど道は遠いよ」、2番は「ほうら、幸福(しあわせ)はすぐに」で、3番で「そうら、幸福(しあわせ)がここに」となっています。



 「ペリーヌ物語」は、1978年放送の作品で、原作は「家なき娘」というフランスの小説です。「家なき子」とは別の作品で、原題は「en Famille」です。

 大まかな内容は、以下のとおりです。


 フランスのマロクール村の紡績王ビルフラン・パンダボアヌの息子エドモンは、インドで現地の娘マリと結婚したために勘当されたものの、事業に失敗し、父を頼って家族を連れ帰郷する途中で病死した。

 残された妻マリと娘ペリーヌはマロクールを目指すが、マリもまた道中パリで病に倒れ、ロバのパリカールや馬車など財産を全て売り払って薬を買うも病死。

 ペリーヌは単身マロクールに到着。だが、ビルフランはエドモンの結婚を認めてはいないため、ペリーヌは正体を隠しオーレリィと名乗ってパンダボアヌ工場で働き、徐々にビルフランの信頼を得ていく。

 そして、遂にエドモンの死がビルフランの知るところとなった。


 実は、原作は、マリとペリーヌがパリに入るところから始まりますが、それでは1年もたないので、ボスニアでエドモンの葬式が終わったところから始まります。

 そのため、16話まではアニメオリジナルとなっています。



 ビルフランは、勘当はしたものの、エドモンの帰還を待ち望んでおり、フィリップ弁護士に依頼してその足取りを追っていました。

 全53話中の45話でエドモンの死が判明し、ビルフランは深い悲しみに沈みます。

 この頃、オーレリィ(ペリーヌ)はビルフランの秘書をしており、屋敷に住まわせてもらっています。

 献身的なオーレリィ(ペリーヌ)のお陰で少しずつ元気を取り戻し始めたビルフランは、エドモンの乳母だったフランソワーズを呼んで、エドモンの思い出話をさせます。そして、フランソワーズの口から、「オーレリィはエドモン様の幼い頃にそっくり」という言葉が。

 ビルフランは、オーレリィがエドモンの娘なのではないかと思い、フィリップ弁護士を呼び、オーレリィが以前滞在したというパリの調査を依頼しました。

 ビルフランは、オーレリィとのこれまでの交流で、その人柄を信頼し、エドモンの娘であってほしいと願うようになっていました。

 そして、49話で、パリでの調査を終えたフィリップは、ビルフランの屋敷で報告します。その部屋には、オーレリィ(ペリーヌ)もいました。

 フィリップは、パリでの調査は終わったが、マロクールでの調査が残っていると報告します。どれくらいかかるかと聞いたビルフランに、「すぐです」と答えたフィリップは、オーレリィ(ペリーヌ)に話しかけます。


 「パリでは、パリカールに会ってきましたよ。元気そうでした」


 「まあ、パリカールに?」


 「それから、男みたいな格好をした女の方、ええと…」


 「ルクリおばさん!」


 「そう、ルクリさん。彼女があなたによろしくと言っておられましたよ、ペリーヌ様」


 この誘導尋問にペリーヌが引っ掛かり、ビルフランの孫であることが判明するのですが、こんな高度な会話が(子供向けの)アニメで交わされたのです。



 ペリーヌがマロクールに到着したのは29話。

 マロクールに来たペリーヌは、ビルフランが今でもエドモンの結婚を認めていないことを知って孫だと名乗り出るのを諦め、トロッコ押しとして工場で働きます。

 安い賃金で生活するため、シーズンオフの狩猟小屋に住みつき、魚を捕って料理したり、下着や靴を自作したりと工夫して。

 そして、英語ができることから、入院中の通訳人の代わりを務めることとなり、徐々にビルフランの信頼を得ていきます。

 上記の一連のセリフは、ペリーヌがこの苦しい生活を乗り越えてきた上でこそ、カタルシスを与えるのです。

 5か月に亘ってマロクールで頑張ってきたペリーヌの努力が報われた瞬間でした。

 じっくりと時間を掛けて描いてきたからこその感動というものもあるのです。



 この「ペリーヌ物語」は、ペリーヌが祖父の元を目指して旅をし、一緒に暮らすようになるまでの物語です。

 途中、大きな事件と言えるのは、母の死だけ。

 実に淡々と物語は流れていきます。



 鷹羽の書く小説は、あまり抑揚のない淡々としたものが多いのですが、もしかしたら「ペリーヌ物語」とかの影響も受けているのかもしれませんね。

 このエッセイを書くためにセリフの確認をしようと、以前スカパーで録画した「ペリーヌ物語」のDVDを見ようとしたところ、読み込めなくなってました。

 最後に見たのは今年の2月、その時は問題なく再生できました。

 普通に考えて、DVDが劣化したかデータ面が紫外線にやられたか、というところなのでしょうが、こうもタイミング良く読めなくなると、鶴さんと一緒に天に還ったかと思いたくなります。

 鶴ひろみさんのご冥福をお祈りします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ