25 ウルトラの星を見た男達(ウルトラマンティガ「ウルトラの星」)
今回は、敬称略でお送りします。
1996年放送の「ウルトラマンティガ」は1981年放送終了の「ウルトラマン80」以来15年ぶりのテレビシリーズでした。
そして、1966年放送の「ウルトラQ」「ウルトラマン」から30周年ということで、円谷プロとしても、なんとしても放映にこぎ着けたかった作品だったそうです。
国産ウルトラでは初めてのビデオ撮影作品であり、ウルトラマンのデザインも初めて青系統が入りました。
これは、ビデオ撮影ゆえに通常のブルーバックではなくグリーンバックが使えたからです。
フィルム撮影の場合、合成する際には、青い背景の前で撮影します。
この青い部分が、後で合成するための余白になるわけです。
例えば、青い背景の前でウルトラマンが光線のポーズを取り、後で青い部分に宇宙空間の画像をはめ込み、光線を書き込むと、宇宙で光線を放つウルトラマンの絵になります。
フィルムでは、この合成用の背景は青しかありませんでした。
ウルトラセブンのデザインが、当初青で検討されたものの、合成の都合上赤に変更されたというのは、割と有名です。
これが、ビデオ撮影だと、青でも緑でもよくなったので、青いウルトラマンが実現できました。もっともティガは青系といっても紫ですが。
「ティガ」では、そのほかにも、ウルトラマンの出自を光の国でなくしたり、カラータイマーが半球状でなかったり、隊長が女性だったりと、色々な新機軸を持って来ています。
変身アイテムであるスパークレンスは、変身時、カバーが開きますが、この時の形状はティガの胸の部分を模しており、3話では、開いたスパークレンスがティガの胸に変化するエフェクトになっています。
光の国出身でないウルトラマンとしては、出光とタイアップしたウルトラマンゼアスや、オーストラリア制作のウルトラマングレート、アメリカ制作のウルトラマンパワードなどがいますが、日本のテレビシリーズとしては初めてでした。
また、グレートにしてもパワードにしても、カラータイマーは多少装飾がありますが、ランプ部分自体は半球状です。唯一ゼアスだけは半球状ではありません。
おそらくゼアスでの楕円を経て、半球状でなくてもいいじゃん!と思ったのでしょう。
そして、「ティガ」最大の特徴は、“タイプチェンジ”です。
このアイデアは秀逸でした。
知らない人のために解説すると、ティガには、マルチ、パワー、スカイの3つの形態があります。いずれもデザインは同じで、模様の色と体格だけが変わります。
スピード・パワーのバランスのいい、模様が赤と紫のマルチタイプ。スピードは遅いがパワーの強い、模様が赤一色のパワータイプ。スピードは速いがパワーの弱い、模様が紫一色のスカイタイプ。
能力の振り分けを模様の色に反映させたことで、視覚的にもわかりやすくなりました。
額のクリスタルが輝き、「ン~~~~~…、ハッ!」の掛け声と共に、上の方から模様の色が変わっていくタイプチェンジも、スピーディーかつわかりやすいものでした。
普通ならバンクにしそうなものを、CGで色を塗り替えるだけという手軽さもあって、一連のアクションの中で素早く見せる。見せ場でありながら、流れを切らないのです。
また、パワータイプとスカイタイプは、着ぐるみを着ている人も違うため、チェンジした次のカットからは体格もパワーならマッシブに、スカイならスリムに変わっていて、こちらもまた見た目でわかりやすい。
そして、ファイティングポーズも、マルチは前に出した手を平手にして引いた手は拳、パワーは両手を拳、スカイは両手を平手、といった具合に分けています。
ちなみに、スーツアクターは2人なので、マルチタイプはその時々で違う人が演じていました。概ねですが、パワーに変わる予定の時はスカイの人がマルチを、スカイになるなら逆にパワーの人がマルチを演じる、という感じですね。
基本的には、マルチは細身のイメージが強いです。
ちなみに、ティガのタイプチェンジが凄いのは、同じライン上で3つの能力に分けたことです。
先程も書いたとおり、パワーとスピードのバランスで、両極端と中庸という棲み分けです。
「ティガ」以前にも、単純な強化ではない二段変身をするヒーローはいました。
例えば、仮面ライダーBlack RXです。
RXは、ノーマルのほかにロボライダー、バイオライダーにチェンジできます。
ですが、硬くて遅いロボライダーはともかく、素早くて液状に変化できるバイオライダーは、能力の方向性が違います。能力を振り分けるのではなく、別の能力を発現しているのです。
実のところ、ティガのタイプチェンジは、元々空を飛べるウルトラマンだからこそできたものです。
2000年放送の「仮面ライダークウガ」では、クウガは、基本4フォームとして、基本形であるマイティ(赤)から、スピード・ジャンプ力強化型で棍を使うドラゴン(青)、知覚強化型で銃を使うペガサス(緑)、防御力強化型で剣を使うタイタン(紫)にチェンジしました。
タイタン・マイティ・ドラゴンの違いは、一見、ティガと同じように見えますが、実は全然違います。ひとつには、それぞれ専用の武器があること。これはわかりやすいですね。
でも、もっと根本的に違います。
ドラゴンは、スピードが速くなるだけでなく、ジャンプ力も上がる=筋力が上がっているのです。
瞬発力が上がっているのに攻撃力が下がるという謎の現象が起きています。
実際、本編で、「パンチ力が落ちてる!」と言っていますが、体重が多少軽くなっているにしても、ジャンプ力が格段に上がるほど足の筋力が上がっているのに、パンチに力が乗らないなんてこと、本来あり得ません。
この辺は、能力設定の粗です。
その点、ティガだと、パワータイプでも空は飛べるので、その辺は気にしなくていいんですね。
はっきり言うと、ティガのタイプ分けは、1つの作品でしか使えないやり方です。
他の作品がマネしても、誰も彼も同じになってしまうから。
実際、「ティガ」の後番組である「ウルトラマンダイナ」では、同じく3タイプのチェンジでありながら、方向性を変えざるを得ませんでした。
一般的なウルトラマンであるフラッシュタイプ(銀・赤・青)、光線技を1つしか持たない近接戦闘型のストロングタイプ(銀・赤)、超能力による特殊戦闘型のミラクルタイプ(銀・青)として、模様も全く違います。
この辺り、同じ路線をやることの難かしさが出ていますね。
さて、「ティガ」は、「80」までとはがらりと世界観を変えた(正確には、「ウルトラマン」と「ウルトラセブン」だって世界観は違った)わけですが、円谷プロとしては、何が何でもやりたいことがありました。
初代ウルトラマンとの共演です。
当時のスタッフが高齢化する中、30周年記念作品としてのロマンです。
これは、NHK制作のドラマ「私が愛したウルトラセブン」の際、劇中の「セブン」スタッフ達が打ち上げで「怪獣音頭」を踊ったのと同じ、スタッフの自己満足です。
これも意味がわからない人が多いでしょうから解説しておくと、「私が愛したウルトラセブン」は、「ウルトラセブン」制作当時を再現したドラマなわけですが、「怪獣音頭」は、それより4年後の「帰ってきたウルトラマン」の挿入歌。つまり、「セブン」スタッフが踊れるわけがないのです。
でも、円谷のスタッフ達は、打ち上げで「怪獣音頭」を踊るのが夢だったから、このドラマにかこつけて踊らせてしまいました。
同様に、ダンがポインターを私用で使ってスピード違反で切符を切られる際、「ウルトラ警備隊の者です」と言ったりしているのも、当時スタッフが冗談で言い合っていたネタを実現したものです。
同様に、「ティガ」でも、古参の円谷スタッフは、無理矢理初代ウルトラマンを登場させました。
タイトルは「ウルトラの星」。
内容は、こうです。
怪獣を探す宇宙人を追って1965年の時代に転移したダイゴは、「ウルトラQ」に続く番組の企画が難航している円谷プロに紛れ込んでしまう。
ある夜、そこに怪獣が出現し、ダイゴはティガに変身して戦うが、エネルギーを吸収されて大ピンチ。
その戦いをただ1人見守っていた円谷英二の想いが、かつてウルトラマンからもらった赤い石の力で奇跡を起こし、ウルトラマンを出現させる。
ウルトラマンは、ティガにエネルギーを与え、共に怪獣を倒した。
円谷英二はつぶやく。「金城君、ヒーローが必要なんだよ」
はっきり言って、懐古趣味的で、中身はありません。
このエピソードは、上原正三脚本で、満田かずほが監督やってます。どちらも「ウルトラマン」から関わっている人達です。
EDでは、普段はその回の映像を散りばめているところを、「ウルトラマン」の映像が散りばめられ、ラストには「ウルトラの星」と書かれたカチンコが映るといった念の入りよう。
ちなみに、円谷一の役を円谷浩が演じていたりします。
もっと言っちゃうと、「ティガ」の世界に円谷プロがあって“かつてゴジラなどの怪獣映画を作った”なんて言われちゃうと、世界観が崩壊します。
これは、視聴者のためではなく、古参スタッフのノスタルジー回だったのです。
ですが。
気持ちはわかる。
ちなみに、この回は、ティガをパワーの方の人が、ウルトラマンをスカイの方の人が、それぞれ着ています。
ウルトラマンの着ぐるみは、目の部分にティガの目のパーツを付けたものだそうです。
自己満足でしかないエピソードですが、ウルトラマンとティガの握手は、やっぱりちょっと燃えました。
ついでに言うと、EDのカチンコの画面の後で、次回予告になりますが、このお話のノリから、いきなりヒロインのレナが「あたし…ダイゴがティガだって知ってる」とか衝撃の告白をする予告編が始まります。本放送当時は、度肝を抜かれました。
これは、翌週から最終3話に入るせいなのですが、この衝撃の告白、本編では使われていません。嘘予告です。
レナは、実際にダイゴがティガだと知っていますが、それをダイゴに伝えるのは、「どうして1人で抱え込んじゃうの? ウルトラマンはたった1人で地球を守らなきゃならない義務でもあるの!?」という台詞でした。このシーンは、「セブン」の最終回を彷彿とさせる名シーンです。
ウルトラの星を見た男達
満田かずほが好んで使う言い方。
「ウルトラマンA」において、北斗が1人で変身するようになった頃、“ウルトラ6番目の弟”梅津ダンが登場する。
ダンは、北斗に導かれる弟分的な存在で、なにかと事件に巻き込まれることになるが、その時の指標となったのが“ウルトラの星が見えるか”ということだった。
無謀や蛮勇で動く時はウルトラの星は見えず、勇気と希望を持って動く時は見える。
満田氏は、そこから転じて、夢と希望に燃え、いい作品を作ろうと奮闘した自分達のことを“ウルトラの星を見た男達”と呼ぶ。
なお、梅津ダンは、何のドラマもなくある日唐突に姿を消した。
これは、“本当のウルトラ兄弟6番目の弟”である「ウルトラマンタロウ」が始まる前に視聴者から“ウルトラ6番目の弟”を忘れさせるのが目的だったと思われる。
余談だが、この“ウルトラの星”ネタは、やはりそれなりにメジャーであり、ところどころで見掛ける。
たとえば「北斗の拳」のパロディネタで、死兆星に引っ掛けて「ふ…。とうとう昼でもウルトラの星が見えるようになったか」とやっていたり。
イラストレーターの米田裕氏が、自身の絵日記漫画で、仕事の売り込みに失敗して「ウルトラの星が…ウルトラの星が見えん」と泣いていたり。
「巨人の星」と引っ掛けたネタを見たこともあったなぁ。
「私が愛したウルトラセブン」
1993年にNHKが制作したドラマ。
アンヌ隊員役に急遽抜擢された菱見百合子をメインに、「ウルトラセブン」制作の裏側を描く。
あちこち嘘っぱちで作られているので、結構ファンからの風当たりは強かった。
特に、ポインターが、予算の関係か、似ても似つかぬ車だったのは、鷹羽の周囲では超不評だった。
菱見百合子を田村英里子が演じたことは、一部で有名。
この番組の最大の見所は、「ウルトラセブン」の没シナリオである「300年間の復讐」が(一部ではあるが)映像化されたこと。
「300年間の復讐」の脚本は、上原正三のシナリオ集「24年目の復讐」に収録されているため、ファンの間では有名だった。
世界観が崩壊
「ティガ」の世界において、“ウルトラマン”という名前は、かつて旧人類を救い、戦うための体を残して光となって去っていった戦士を表すもので、ダイゴ以外はそのことを知らない。
そのため、2話において、“怪獣にも名前があるのに、巨人と呼ぶのはどうか”ということでGUTSのメンバーが名前を考え、その際、ダイゴが、ティガの体が残されていた場所が「ティガの地」だったことに因んで“ウルトラマンティガなんてどうでしょう”と言って採用された。
ウルトラマンという単語は一般的な単語である“ウルトラ”と“マン”であることから、“ティガの超人”という意味合いで受け入れられたという形になっている。
もし、この世界に円谷プロがあったなら、当然「ウルトラマン」という番組も存在し(実際、「ウルトラの星」のエピソードでは、その企画を行っている最中だった)わけで、“ウルトラマン”が固有名詞になっていたはずであり、世界観が崩壊する。
余談だが、命名に当たりムナカタが挙げた「マウンテンガリバー」という名前は、次作「ダイナ」のコメディ回「うたかたの空夢」で、「MG5号」という巨大ロボの名前に使われている。
ちなみに、「ウルトラマン」においても、名前のなかった宇宙人に“ウルトラマン”という呼び名をつけたのは、変身する当人のハヤタだった。
円谷浩
俳優。円谷英二の孫であり、円谷一の息子。
東映の「宇宙刑事シャイダー」で、主人公:沢村大を演じた。
ちなみに、「私が愛したウルトラセブン」には出演していないが、TBSの「ウルトラマンをつくった男たち 星の林に月の舟」(実相寺昭雄の自伝の映像化)には、黒部進役で出演している。
また、前述のとおり、「ティガ」に円谷一役で出演しているほか、「ダイナ」では防衛軍のミヤタ参謀、「ガイア」にはテレビ局の田端ディレクター役と、平成3部作全てに別人の役で出演している。
ちなみに、3部作全てに出演しているのは石橋桂もそうだが、彼女は「ティガ」「ダイナ」にはシンジョウ・マユミ(シンジョウ隊員の妹)役、「ガイア」には防衛軍のチーム・クロウの一員:多田野慧役だった。




