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13 勝負あった!ジタバタすんな!(機動警察パトレイバー)

 たこす様、あーちゃん2さまのリクエストにより、今回はパトレイバーです。

 今回紹介する人物については、全て敬称略でやっておりますのでご了承ください。

 1988年にOVAリリースとコミックの連載が始まった「機動警察パトレイバー」という作品があります。

 マンガ、OVA、劇場版アニメ3本、テレビアニメ、テレビの続編ビデオシリーズ、ノベライズ、特撮映画と、多岐に亘る作品で、それぞれのジャンルごとに微妙に設定が違うのも特徴です。

 鷹羽の中では、言い出しっぺであり漫画版を描いたゆうきまさみが原作者という認識ですが、ご本人はあくまで原案で、原作は企画そのものだと仰っているようです。

 企画というのは、「ヘッドギア」名義での活動を指すのでしょうが、元々この企画は、とある喫茶店でのアマチュア時代のゆうきまさみと出渕裕、火浦功などの雑談が最初だったようです。この喫茶店は、永野護や川村万梨阿など、後にアニメ業界で活躍した方々がたむろしていたようで、一部で「ナンカアロウ」と呼ばれている店です。ゆうきまさみの漫画「究極超人あ~る」に登場する西園寺まりいは、ゆうきまさみが川村万梨阿のイメージを元にふくらませたキャラだとか。

 「パトレイバー」の元々の発想は、人の死なないロボットアニメだと、どこかに書いてあったように記憶しています。

 ただ、その時点ではあくまで雑談で、同じように雑談のネタだったものが火浦功の小説「未来放浪ガルディーン」として先に日の目を見ました。そんな経緯から、「パトレイバー」 の制作が決まった後、雑誌「ニュータイプ」に連載されていたゆうきまさみのコラム「ゆうきまさみのはてしない物語」の中で、イングラム(アルフォンス)が「そんなわけで、私はガルディーンに負けたくない」と言っています。多分、勝ちましたよね?


 「パトレイバー」OVA版メイン脚本の伊藤和典は、「魔法の天使クリィミーマミ」や平成ガメラシリーズの脚本を手掛けた人で、ゆうきまさみとは「あ~る」連載終盤頃に交流が始まったようです。「あ~る」は、上述のまりいの他にもゆうきまさみの友人知人をモデルにしたキャラが多数登場しており、伊藤和典をモデルにしたキャラも登場します。




 「パトレイバー」は、作品始動時の約10年後である1999年を舞台にしたSF作品です。東京近辺を襲った地震の後、非整地でも活動できる人型作業機械「レイバー」が発達し、それによる事故、犯罪が急増したことから、警察でもレイバーを持つようになった時代を舞台に、パトレイバー(パトロールレイバーの略)を運用する、(いずみ)野明(のあ)が所属する通称「特車二課第2小隊」の物語です。

 えらく寄せ集め感の強いメンバー編成のため、コメディチックに描かれていますが、漫画版では組織内での軋轢など結構リアリティもありました。

 また、OVA版では、TDKをスポンサーとし、本編中にカセットテープのCMを入れることで、それまで1本1万円していたOVA作品の中にあって半額以下の4800円という低価格を実現しました。




 上で、「それぞれのジャンルごとに微妙に設定が違う」と書きましたが、ジャンルは漫画版、OVA版、テレビ版、特撮版の4つに分けられます。

 特撮版はずっと後になって作られたものですし、鷹羽が見ていないので除外して話をしますが、主役メカである篠原98式AV(篠原重工製1998年式アドヴァンスド・ビークル)イングラムの呼称についても、98式AVだったりAV98だったりと、統一されていません。

 漫画版連載当初は、イングラムの背面ファンの形状や頭部アンテナ部分のディテールもだいぶ違っていました。テレビ版が始まった辺りから、かなりアニメ版に歩み寄っていますけれど。輸送用トラックの形とか、警棒からスタンスティックになったりとか。

 ちなみに、ほとんど全身が白と黒という、ロボットアニメの主役メカとしては非常に地味なイングラムのカラーリングは、もちろんパトカーを意識したものです。ロボットアニメの主役メカの特殊能力が“人型に近くて器用”って、ずいぶんショボいですよね?

 身長が約8mと低いのも、足の裏にゴムが貼ってあるのも、武器が薬莢の飛ばないリボルバーなのも、市街地での運用を意識してのもの。OVA版2話では、身長が中途半端なため、歩道橋を跨ぐこともくぐることもできずに苦労するシーンもありました。


 ちなみに、OVA版とテレビ版は直接は繋がっていませんが、OVA版6話の後で騒動の責任を取らされ辞職するハメになった祖父江課長が、テレビ版17話で復讐に現れていたりします。あと、どっかの話で「正義のために超法規的行動を取るのは第2小隊のお家芸」的なことを言われてましたが、テレビ版にはそんなエピソードはありません。OVA版5~6話と劇場版1作目くらいのものです。




 漫画版とアニメ版(OVA、テレビ、映画)の最もわかりやすい違いは、1号機に付けられた“アルフォンス”というニックネームです。

 野明は、自分のペットに代々アルフォンスという名を付けていました。犬、猫、そして98式AV。

 漫画版の野明は、イングラムを愛機として認識しています。

 対して、アニメ版の野明は、アルフォンスに疑似人格を感じ、猫かわいがりします。

 言葉にするとイマイチわかりにくい違いですが、漫画版ではイングラムを“お気に入りの道具”“愛車”として使っているのに対し、アニメ版では愛玩動物のように可愛がっている感じです。


 違いと言えば、2000年式AVの設定も漫画版、劇場版、テレビ版で全部違いますね。

 一番最初は、劇場版のラスボスとして登場したAV-X0、通称「ゼロ」です。

 篠原HOSハイパー・オペレーション・システムで動くゼロは、素手でレイバーを砕く戦闘的なレイバーで、ニューヨーク市警にも導入されている、という設定でしたが、3機の0式AVの中で、唯一グリフォンと戦っていないことから、グリフォンとどちらが強いかという議論がよく持ち上がりました。

 テレビ版のAV-0「ピースメーカー」は、ニューロンネットワークという瞬間の反射的動作に重きを置いた新しいコンピュータシステムで動いていました。こちらはグリフォンと戦い、“街に被害を出さないように動く”というシステムの弱点を突かれてあえなく敗れてしまいました。当時のアニメ誌の解説では、“ビルを壊さないよう、上半身を吹き飛ばした”と書いてあるものもありますが、あれは単にビルを庇って無理な体勢を貫こうとしたために腰関節が折れただけだと思います。

 漫画版に登場するAVR-0は、衛星から送られる周辺情報に基づき適切な動作をするというシステムで、グリフォンの攻撃を勝手に避けてみせたりもしていますが、衛星とのリンクを遮断されて敗れました。

 結局、性能的に最強であるグリフォンを破ったのは、野明の操縦センスと、データを蓄積され成長したイングラムのペアだけです。


 グリフォンの強さの秘密は、その設計コンセプトにあります。

 現行のレイバーの規格に合わない独自の駆動体系と制御システム「ASURA」により、“生物のように動けるロボット”なんですね。ほかのレイバーが二足歩行する機械なのに対し、生き物のように動く機械なわけで、設計思想から段違いなのです。


 この黒いレイバー:グリフォンは、漫画版、テレビ版共に登場する「パトレイバー」を代表するメカの1つですが、このグリフォンの型式番号が「タイプJ9」というところに、ゆうきまさみらしさが表れていると言ってもいいでしょう。

 「あ~る」はドラマアルバム(まだレコードメインの時代)が発売されていますが、その音楽を担当したのは、ゆうきまさみの要望により、山本正之でした。

 山本正之はタイムボカンシリーズの曲を手掛けたのが有名ですが、ほかにも「銀河旋風ブライガー」に始まるJ9シリーズも手掛けています。

 「ブライガー」は、火星辺りのアステロイド帯を舞台にした“ロボット版必殺仕事人”といった趣の作品です。ブライガーを操るのはコズモレンジャーJ9というチームで、当時人気だったビデオデッキの名機「ベータマックスJ9」から命名されました。「β方式のビデオデッキ」と言っても、今ではビデオデッキすら見たことがない人もいるかもしれませんね。昔、ビデオにはVHSビデオ・ホーム・システム方式と、β方式の2種類があり、ビデオテープのサイズも違っていたんです。画質などはβ方式の方が優れていたそうですが、アダルトビデオが主にVHS方式でレンタルに並んだため、β方式は淘汰されてしまいました。必ずしも性能のいいモノが生き残るとは限らないという、世の中の難しさが見えます。


 話を戻すと、タイプJ9は、「ブライガー」のJ9を引っ張ってきたわけです。

 一応“総合9番目の日本製の機体”という意味で使われていますが、先行して登場したドイツ製のブロッケンが「タイプ7」でしかなかったことを考えると、後付けだなぁと感じますね。




 漫画版の「パトレイバー」では、その大部分をグリフォン絡みのエピソードが占めています。

 グリフォン製造のための実戦データを集めるタイプ7(ブロッケン)との3回にわたる戦い、グリフォンと2号機、AVS-98(廉価版)との戦い、1号機との戦い、企画7課が海に沈んだ「ASURA」を回収する中、「ASURA」の発する周波数に反応する廃棄物13号、そしてグリフォンとの最終決戦に至る流れ。

 裏でこれらの糸を引いているのがシャフト日本支社企画7課の内海課長です。

 何を考えているのかわからない愉快犯的に描かれ、その真意はとうとう最期までわかりませんでした。

 ちなみに、企画7課の面々は、ナンバー2の黒崎を筆頭に、青砥、赤石、緑川、と色のついた名字で統一されています。

 




 ちなみに、鷹羽が「パトレイバー」で一番好きなシーンは、OVA版6話「二課の一番長い日(後編)」ラストで、アルフォンスがリボルバーカノンを構え、操縦する野明が「勝負あった! ジタバタすんな!」と叫ぶシーンです。

 パトライトを点灯回転させたアルフォンスがとても格好良く見えました。5~6話を通してアルフォンスが動いているシーンはここだけ、というのもすごいです。


 この5~6話は、クーデターを企む甲斐と、それに立ち向かう特車二課というお話です。

 年末年始の休みの間に、何者かが特車二課建物を占拠し警視庁を包囲するという事件が起きます。実はこれは囮作戦で、裏では在日米軍から盗み出した核ミサイルで東京を狙いつつ憲法の無期限停止などを要求してくるというクーデターでした。

 後藤隊長は、クーデターを予測していち早くアルフォンスを移動させて奪われずにすませます。

 野明の実家が北海道にあるという設定を活かし、年末年始に行き場のない遊馬が野明の実家を訪ねることで、苫小牧にいた甲斐を発見し、それにより後藤隊長がフェリーからのミサイル発射を予見し…と、偶然必然散りばめながらミサイル発射阻止のために奮闘するのです。

 この苫小牧で甲斐を発見するシーンは、立ち食い蕎麦屋で遊馬が食べている横に、“立ち食いのプロのような”男が来たという展開なんですけど…。実は、この“立ち食いのプロ”という言葉、伊藤和典も参加した「紅い眼鏡」という映画(押井守監督)に登場する「月見の銀二(演:天本英世)」というキャラの職業だったりします。

 結局、2号機が全くいいところなく終わった以外は、みんな活躍の場のある前後編で、大柄ゆえ普段レイバーに乗れない山崎ひろみが99式AV「ヘルダイバー」で海中からフェリーに強襲を掛けたりもしています。

 この前後編と劇場版1がアニメ版のベスト2ですね。

 もう1個選ぶなら、「二人の軽井沢」かしら?

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