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12 武器がない、傷付かない、操縦しない(巨神ゴーグ)

 今回は、秋月忍さまのリクエストにより、「巨神ゴーグ」です。

 1984年放送の「巨神(ジャイアント)ゴーグ」というロボットアニメがあります。

 「機動戦士ガンダム」で有名な安彦良和さんがキャラデザインをやったアニメで、諸般の事情から放送開始が半年も遅れたため、全話完成してから放映されたという、通常考えられない制作事情でした。そのせいか、作画レベルがとても高かったように思います(要するに、話数によって顔が違うとかいうことがない)。




 この「ゴーグ」、いくつか特徴があります。

 そのひとつが“敵が大企業”であること。

 世界的な大企業:GAIL(ガイル)が自らの利益のために存在を隠蔽している島:オウストラル島。主人公の田神悠宇(ゆう)は、亡き父が島を研究していたためにGAILに追われることとなりました。

 なんだかんだあって仲間と共にオウストラル島に渡った悠宇は、そこで巨大なロボット:ゴーグと出会います。

 巨大企業が市井の科学者や少年を必死になって追い掛けるのが、この作品のメインストーリーです。なんて大人げない。


 2つ目の特徴が、ゴーグは誰にも操縦されることなく勝手に動く謎の存在ということです。

 頭部に、人が立てる広さの窪みがあるので悠宇はそこに立つことも多いですが、ゴーグは悠宇が指示したとおりに動くわけではありません。

 なぜか悠宇を守ってくれますが、ゴーグの行動理念は謎のまま。“味方なのに意思の疎通ができない”のです。

 ゴーグの存在自体がこの番組の特色でもあり、物語の牽引力でもあります。

 ゴーグは、鉄人28号以来の“武装を持たないロボット”で、内装・外装問わず武装がなく、さらに空も飛べません。作中で傷1つ付かなかった硬い装甲と怪力、敵の武装を奪って使う器用さと臨機応変さが武器なのです。

 某アニメ誌(OUT)でロボットアニメの歴史が特集された時、“最も武器の少ないロボット”の栄冠を勝ち取りました。「鉄人28号も武器を持たないが空は飛べる。ゴーグは本っ当に何もない」だそうです。ちなみに、“最も武器の多いロボット”は、大空魔竜付きガイキング(大空魔竜ガイキング)でした。大空魔竜の頭部がガイキングの胸部になるので、まあ、1体のロボットと言えなくもないでしょうか。こちらは30個以上武器があります。あ~、種類であって発射口の数じゃありません。発射口の数が多いのだと、たぶんイデオン(伝説巨神イデオン)になります。

 ちなみに、中盤でパワーアップしたガイキングは、フェイスオープン(顔面の装甲をパージ)すると顔だけで5つの武器を持っており、それぞれ「デスビーム」「デスミサイル」「デスファイヤー」など物騒な名前が付いています。


 ゴーグは、とうとう最後までエネルギー源が何かとか、材質が何かなどは謎のままでした。そして、傷付くこともなく終わりました。

 “一切傷付かない”主役ロボというのは、意外と少ないです。

 戦闘シーンがあれば傷付くのが当たり前ですから、頑丈さが特徴のマジンガーZだって、しょっちゅうあちこち壊れます。

 鷹羽がぱっと思いつく“傷付かなかった主役ロボ”は、ほかにはゴッドマジンガーくらいです。ダイケンゴーも傷付かなかったかもしれませんね。ダイオージャは…ラストで傷が付いていたような…。


 ゴーグは、一応、言葉を聞き取り理解する能力はあるのですが、ゴーグ自身は「ぐおぉぉぉぉ」と吠えるだけで、何を言わんとしているのか全くわかりません。

 この辺りに、特撮版のジャイアントロボのテイストを感じます。ジャイアントロボは「ま゛」と表現される独特の声を出します。人が乗り込まず、少年の声に応じる辺りも、イメージしてるかもしれませんね。

 ちなみに、ゴーグの“声”は、ディレクターだったかの声を機械で弄ったものだそうです。人間の声の暖かみが欲しいから、という理由だったとか。




 3つ目の特徴として、“毎回引きで終わる”というのがあります。

 悠宇がピンチのところで止め絵になり、「TUNE IN TO THE NEXT The same GORG time The same GORG channel」と表示されて終わるのです。そして、次週は、そのちょっと前の状態から始まります。バラエティ番組のCM前後みたいです。昔、冒頭からサブタイトルを挟んで前回のラストに繋げて編集されたビデオを見たことがありますが、あれは笑えます。サブタイトルの前後で、同じ内容をやってるんですもの。

 ちなみに、サスペンスで終わって次回に続けるこの演出は、次作「機甲界ガリアン」に継承され、()起承転 という独特の構成に昇華しました。おかげで「ガリアン」は、いつも戦闘シーンの最中に終わるというイメージがあります。ただ、このやり方は1回見逃すと話が繋がらなくなるので、ビデオがまだあまり普及していなかった当時は流行らなかったようです。






 結論から言うと、GAILは、オウストラル島に隠された異星人の遺跡のテクノロジーを独占しようとしていたのでした。

 終盤、ゴーグは異星人のロボット「ガーディアン」であり、ガーディアンは他にも数種類あることがわかります。

 冷凍睡眠から目覚めた異星人のリーダー:マノンが地球人に対して良い感情を持っていなかったことから、マノンの命令で下級のガーディアンがGAILの私兵を襲い、ゴーグとも戦うという展開になりました。

 その際、下級ガーディアンが使用していたビーム砲を奪ったゴーグがそれを使うシーンがあります。おそらく、同種のビーム砲がゴーグの本来の外装武器なのでしょう。ビーム砲にエネルギーを供給するためのコネクタは、背中のバックパック状パーツ下部にありますが、普段は見えません。

 GAILによる観察によると、ゴーグは、例えば膝を曲げても装甲に隙間が生じません。マグマの中を歩いても、内部にマグマが入る隙間はないのです。

 この点について、本編中で、GAILの科学者は、ゴーグの関節は二重の装甲になっていて、膝を曲げる時は、外側の装甲が内側の装甲の上を滑るような感じで広がり、表面の装甲が途切れない構造になっていると推測しています。

 本編中では語られないものの、おそらくコネクタも同じようなスライド装甲により、外部から見えない構造になっているのでしょう。




 実は、ゴーグの所有者ゼノンは、マノンの弟で、地球人との共存派だったため、遥か昔に兄と対立しました。

 ゼノンは、自分自身は地球人とどうこうすることはなかったものの、親友マシウスが地球人と子をなしたため、生前、ゴーグにその子孫を守るよう命じていました。

 そして、ゴーグはその命令に従って行動していたのです。つまり、悠宇がその子孫です。

 当初、地球人に対して敵対的だったマノンですが、悠宇が自分達の種族の血を引いていたことを知ると態度が軟化し、地球人と接触しないようオウストラル島を海に沈めて再び眠りに就きました。

 ラストには、CIAがオウストラル島を吹き飛ばして全部なかったことにしようと核ミサイルを発射したり、それをマノンがスーパーテクノロジーで消し去ったりするのですが、結局のところ、最終的には異星人のオーバーテクノロジーは手に入らず、アメリカとGAILに軋轢が生まれ、と、何も解決しない話になっています。

 ただ、父の足跡を追った少年の物語、少年とゴーグの友情物語としては一応完成しているので、無意味とまでは言わなくていいのかもしれません。


 なお、ゼノンはマノンと対立したことから冷凍睡眠しておらず、ゴーグの胸部コクピットでミイラになっています。

 あるんですよ、コクピット。両胸に1個ずつありますが、どうもゴーグはコクピットからの脳波コントロールで動くようになっているらしく、悠宇がもう片方のコクピットに入った時は、悠宇のお願いに従ってくれました。




 ちなみにですが。

 悠宇の声は、田中真弓さんなんですけど、彼女がシリアスな2枚目少年の声を当ててるのって、すっごく珍しい気がします。

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