11 きみのは栗色だな(サイボーグ009)
先日、NHKの「100分で名著」という番組で、石ノ森章太郎さんが取り上げられました。
鷹羽が見ていたor読んでいたのは「石森章太郎」作品ですけど、世間的にはすっかり「石ノ森」で浸透したようです。ですので、以後の文章では、「石ノ森章太郎」で統一します。
鷹羽は、「仮面ライダー」を最初期から見ていましたが、それはあくまで特撮番組としてであり、漫画家「石ノ森章太郎」との出会いは、親戚の家で読んだ「サイボーグ009」でした。
読んだのがいつ頃かははっきりしないのですが、幼稚園の年長か小学1年くらいだったと思います。ませてますね。自慢するようですが、鷹羽は字を読めるようになるのは早かったのです。両親が共働きで絵本の読み聞けとかほとんどしてもらえず、自分で読めるようになってしまったので。
2歳の時にはひらがなカタカナは全部読めましたし、幼稚園の時にはある程度の漢字も読めました。書く方はさっぱりでしたけど。
ですから、幼稚園時代でも「サイボーグ009」読めたんですね。親戚の家にあったのは0013の辺りまでで、それ以降は、小学生時代に友人の家で読みました。
「サイボーグ009」…未完結のまま作者が亡くなった作品ですが、途中何度か○○編として完結・中断しています。また、何度かアニメ化されていて、テレビシリーズも3本あります。
連載開始がベトナム戦争時代だったこともあって、敵である黒い幽霊団は“武器商人”です。“敵組織の名称がカタカナになったのは「サイボーグ009」からだった”と、何かで読んだ覚えがあります。かっこいいですよね、「ブラックゴースト」なんて。
この作品の特徴は、主人公達がブラックゴーストによって改造された新製品の試作品であるということです。
よくある“悪に対抗できるのは、同じ悪の力だけ”という作品の元祖だそうです。「仮面ライダー」や「デビルマン」より早いですしね。
ブラックゴーストから見ると、009達は初期も初期の試作品であり、性能は軒並み低いです。そもそも戦闘系の能力をもっているのが、002,004,005,009の4人だけですから。
後のベトナム編では、実戦投入型の試作兵士も登場しますが、彼らモブの方が性能的には優秀なのです。
009達を示す「ゼロゼロナンバーサイボーグ」という呼び方も、“旧式の試作品共”といった蔑みのニュアンスがありました。
その中にあって、総合的な戦闘能力は9人中最強でありながら、どこをとっても一番になれない器用貧乏が009です。
“火を吹く”や“変身”といった特殊能力は言うに及ばず、スピードでは002に、頑強さ・パワーでは005に、水中機動性では008に、それぞれ劣ります。
元々001~008は一芸特化の改造で、それらの中から有用な能力をバランス良く盛り込んだのが009ですから、自明ではあるんですけどね。
よく忘れられていて、本編でもほとんど使われていないのですが、002の加速装置の最大速はマッハ5,009はマッハ3です。002の場合、飛べることが特色であるせいか、009が霞むのを防ぐためか、マッハ5で走ったのはごく初期だけですね。
“実質上の最終回”と言われる「地下帝国ヨミ編」のラストでは、009はたった1人で、成層圏に脱出したブラックゴースト本部に送り込まれ、死を覚悟して本部を破壊します。宇宙空間に投げ出された009を迎えに来た002。しかし、大気圏脱出で既に燃料を使い果たし、2人で落ちていくしかない。
002だけなら助かる可能性があるから離れろと言う009に、002は死ぬ時は一緒だと断ります。
「だめだあ! ジェット 無駄死にしては」
「おっと もう遅い 大気圏突入!
ジョー! きみはどこに落ちたい?」
そして、摩擦熱で燃える2人は流星となり、それを見たどこかの少女が「世界中の人が仲良く平和に暮らせますように」と祈って終わります。
いやあ、初めて読んだ時、泣きましたねぇ。
鷹羽の場合、コミックスで読んでましたから、そのすぐ後に続編を読んでしまい、何食わぬ顔で生きている009を見て、喜ぶよりも「あの感動を返せ!」って感じになりましたけど。
さて、以前にも書きましたが、時代背景によって、演出や設定が通用しなくなることがあります。
平成版のアニメを見て驚いたのが、004と009の改造の経緯でした。
004は、元々ベルリンの壁(というか検問)をこっそり突破しようとしてバレて重傷を負ったことが改造のきっかけです。そこには、東西ドイツの対立という時代背景がありました。
ところが、ベルリンの壁は平成2年になくなり、東西ドイツも統一されました。
つまり、004が改造される理由は、放映された時代には、もうないのです。しかし、重傷だったからこそ、全身を武器の塊にするような無茶な改造をされたわけですし、その時死んでしまった恋人という設定が性格に与える影響もありますので、理由は変えられません。そのため、004は改造途中で40年間冷凍保存されていたという設定が付加されています。
順番的に、003までの3人もそれ以前でなければならず、煽りを食らったかっこうです。年齢60歳の美少女って、ありですか?
一方、009は、少年院を脱走した際にブラックゴーストに捕らえられています。
原作においては、日本人の母と外国人の父を持つハーフで、そのためにいじめられてぐれた、という設定です。
ほかのメンバーとの自己紹介の際、002に「日本人の髪は黒いって聞いてたが、きみのは栗色だな」なんて言われた009が傷付くシーンもあります。
ところが。
今の世の中、ハーフなんてそこら中にごろごろいます。栗色の髪の毛だって、地毛でも染めたのでも、いくらでもいます。
なので、009が少年院に入った理由も、冤罪で、となりました。
これ、鷹羽的には、すっごく感慨深いんですよ。
というのも、002に髪の色のことを言われた009を慰めるために001が言った言葉が、「いつか、混血なんて当たり前の時代が来る」という意味のものだったのです。
正に、混血児が珍しくもおかしくもない時代になったんですね。
描かれた当時、そんな未来が来ることは、石ノ森章太郎の希望的観測、もっと言えば“夢”に過ぎなかったでしょう。
それが、現実になった。
設定の変更とかより、その時代の変化が、鷹羽は嬉しいです。