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社畜ダンジョンマスターの食堂経営 〜断じて史上最悪の魔王などでは無い!!〜  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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プロの目

一週間建国が書籍化決定致しました!

タイトルと、作者名(爆)が変わります!

作者名も菌名では無く、人名に変わりました!(笑)

「これは比較的遠目からでも罠と分かるよ」


 アイニの台詞を聞き、フルベルドが何度か頷いて罠を見る。


「ふむふむ」


 俺もエリエゼルと一緒にその後ろで聞きながら一人で頷く。


 最初はおっかなびっくりといった様子のアイニだったが、フルベルドが怖くないと判断したのか、今ではかなり自然な態度で罠について教えてくれている。


「上から落ちてくる罠はどうかね?」


「上……う〜ん、上とかはかなり警戒してるから、私はそれほどじゃないけど……あ、天井がそのまま落ちてくる罠は結構分かりにくいかな、です」




 そんなやりとりをして、アイニプロの意見を参考に皆と会議をした。


「とりあえず、落とし穴に落ちて地下大空洞は止めるか」


「そうですね。なら、あの迷路を繋げますか?」


「おお、あの不思議な迷路のことですな。素晴らしい趣向の迷路でしたが、かなりの距離があったように思いますが」


「迷路を伸ばすか。三倍くらいにすれば届くだろう。階層の深さ的にも問題無いし」


「え? そんな簡単に? あ、い、いえ……ちょっと驚いてしまっただけです」


「ご主人様はそれくらい簡単にしてしまいますからね。迷路を攻略したら地下大空洞。丁度良いのでは?」


「よし。そんじゃ、迷路を伸ばすか」


「はい」


 そういうことになった。





 結果、和風迷路はタムズ伯爵家から入れるようになり、たとえテーマパークのアトラクションでも入りたくないような広大なものとなった。


 そして、各部屋の真ん中に像を設置。


 形状は何種類かあり、一つは犬のような顔をした醜悪な悪魔の石像。背中には蝙蝠のような翼が生えている。


 そして、他には刀を抜いた鎧武者や、西洋風な甲冑などである。


 詳しい人は分かるだろう。


 一つ目の悪魔はガーゴイルという石の体を持ったモンスター。石なのにそこそこ素早く動く変な奴だ。


 二つ目は動く鎧という、あまり馴染みのないモンスターである。首なし騎士(スリーピーホロウ)やデュラハンと親戚かと思ったら違うらしい。


 迷路に迷い込んだ冒険者が像の前を通ると、一定時間経つと動き出す仕様である。


 ちなみに、ガーゴイルは四つん這いで走り、動く鎧は剣を手に走ってくる。試しに動かしてみたら、背後から追いかけられると夢に出そうなくらい怖かった。


 後は、面倒だった襖の開け閉めを全て自動化した。さらに迷路を伸ばしてモンスターを設置すると魔素が尽きたので、その日はこれで終わりである。


 そして、次の日はタムズ伯爵家の入り口から迷路までの罠を見直した。


 まず、アイニからダメ出しされた古典的な罠を撤去。冒険者達の度肝を抜くべく新しい罠を用意する。


 まずは入り口。


 罠名『届け、この重い』


 冒険者がダンジョンに入り、階段を降り切った直後に入り口の方から転がり落ちてくる巨大な鉄球。


 まず、通り過ぎた後に来るのが良いかな、と思って作った。


 次に前半戦その一。


 罠名『ちょっと待てよ』


 単純に足元からビッシリと槍が突き出る。後ろから鉄球が迫る中での足元からの攻撃は中々良いだろう。


 更に前半戦その二。


 罠名『壁ドン』


 左右の壁が勢い良く迫り、ドンされる。頑張って槍に刺された後に食らうとキュン死するかもしれない。


 更に前半戦その三。


 罠名『私を捕まえて』


 これはスライムプールの再利用である。


 壁ドンを通り抜けた冒険者達の頭上からスライムが降ってくる。


 その量はおよそ五トン。馬鹿みたいな量のスライムが降ってきて、対処失敗すると身も心も溶かされるハートフルラブコメディ。


 そして、後半戦その一。


 罠名『穴があったら入りたい』


 こちらはミミズプールの再利用である。


 天井や壁に小さな穴が無数に空いており、そこから活きの良いスパルガヌムワームがマシンガンのように射出される。


 耳や鼻、口などもしっかりと塞がないと、ワーム達が体内に侵入して中から貴方を骨抜きに……!


 更に後半戦その二。


 罠名『石橋を必死に渡る』


 長さ二十メートル幅十センチほどの橋が架かっており、そこを渡らなければ先に進めない。ちなみに落ちたら余っているスパルガヌムワームが放流された池の中である。


 ヴィネアに聞いたところ、飛翔魔術を使える魔術士はそれほど多くないとのことなので、まぁ大丈夫だろう。


 なにせ、魔術士は一人二人がそこを抜けても迷路で詰むからな。


 そして、最後の罠。


 罠名『恋は盲目』


 黒い霧が発生して視界が塞がれる。冒険者が慎重になり足が遅くなる中、上から音も無く天井が落ちてくる。


 猛烈な恋心に周りが見えなくなるばかりか、肝心の相手(てんじょう)のことまで分からなくなってしまう、甘くも切ない心の状態をイメージした詩的な罠。


「ふふ、俺のセンスが光る」


 出来上がった罠に満足してそんなことを言っていると、エリエゼルが嬉しそうに頷いた。


「まさに、極悪卑劣なる罠の数々です! 更に、引き返そうとすると落ちる落とし穴も何箇所か残ってますからね。素晴らしい出来だと思います」


「ん? 極悪卑劣?」


 エリエゼルの言い方に俺が首を傾げていると、フルベルドが笑顔を浮かべた。


「うむ、これほど性格の悪いダンジョンは中々無いでしょうな」


「んん? 性格の悪い?」


 フルベルドの台詞に俺が頭を捻っていると、レミーアが乾いた笑い声を漏らして頷いた。


「……や、やっぱりアクメ様は魔王なのね……血も涙も無い所業……」


「血も涙も無い……」


 俺は両手で顔を覆いながらレミーアの台詞を反芻する。


「はっはっは! 流石はこの俺を下したダンジョンの主! 鬼畜だな!」


 サミジナは俺のできたばかりの心の傷にワサビを塗り込んだ。


 俺はウスルに目を向け、口を開いた。


「サミジナを新しい罠の実験に連れていってくれ」


「……分かった、入り口に置いてこよう……」


 ウスルがそう言って首肯すると、焼き鳥を食べていたハーピー三姉妹が笑い出した。


「ウスルさん、入り口からは酷いんじゃない?」


「死んじゃいますー!」


「まぁ、死んでるけど」


 三姉妹が笑いながらそんなことを言うと、サミジナが鼻を鳴らして口の端をあげる。


「ふん。俺なら全て突破できるだろうな。むしろ、賭けるなら突破までの時間だ」


 サミジナがそう言うと、エリエゼルが若干苛立たしげに口を開いた。


「ご主人様、一階層のフロアボスに黒龍王を……」


「絶対ダメ」




罠名に良い名前が思い浮かんだ方は是非ご一報ください!

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