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社畜ダンジョンマスターの食堂経営 〜断じて史上最悪の魔王などでは無い!!〜  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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ダンジョンの改築

 ダンジョンが広くなり、店も二店舗目が本格的にオープンした。


 店は離れているが、倉庫街にある二店舗目は料理が得意な淡い金髪に白い耳の犬獣人であるシーマと、オレンジ色の髪のヒト族であるドロシーの二人が常勤し、後は焼くだけや温めるだけの料理などを提供している。


 他にも冷たい料理や、デザート、ドリンク類も一号店から運ぶだけなので問題が無い。


 ちなみに、運ぶのは十歳以下の四人組がキャーキャー言いながら地下通路を走り回り配達している。子供達の無限とも言える体力と動く床との相乗効果により、想像以上にタイムラグの無い料理提供時間となったのは良い誤算だった。


 と、いうことで、食堂経営に余裕ができたということもあり、ダンジョンの改築である。


「やはり、居住スペースをダンジョンの最下層にした方が良いのは間違いないか」


 俺がそう口にすると、エリエゼルが頷く。


「そうですね。ご主人様の場合、エレベーターという反則技があります。作る労力と大量の魔素が必要ということもあって普通なら作ろうとも思いませんが……そのお陰でダンジョンマスターなのに、引き籠らずに食堂経営も可能にしていますからね」


 エリエゼルにそう言われ、俺は腕を組んで唸った。


「ん〜……地下四階に移動しても良いけど、階層を深くする度に移動するのは面倒臭いよなぁ。今は一応地下大空洞に直通エレベーターはあるし、今回はそれを改築するか」


 俺はそう呟くと、辺りを見回した。


 開店準備の掃除をしている少女達の姿が目に入る。俺は一号店の食堂にて、エリエゼルと向かい合うようにテーブルを挟み、座っていた。


「ケイティ」


 俺が名を呼ぶと、何故かやたらと俺の近くばかりを掃除していたケイティが顔を上げる。


「はい! なんですか!?」


 出番が嬉しいのか、ケイティは輝くような笑顔で俺の前に立ち、返事をした。


「これからまたダンジョンを改築するから、皆を食堂に集めておいてくれ。変に動き回らないようにな」


 俺がそう言うと、ケイティは大きな声で返事をして走っていった。


 まあ、改築するのはダンジョンの入り口と居住スペースへの道に関してだけだが、タイミング悪く居住スペースから食堂に行く通路に人が立っていたら、間違えて壁の中に誰かを閉じ込めるようなこともあり得るかもしれない。


 用心に越したことは無いだろう。


「さて……では」


 俺はそう呟くと、目を瞑り、頭の中でイメージを固める。


 侵入者が来た場合のダンジョンへの入り口はタムズ伯爵家の敷地からと、食堂と食堂を繋ぐ連絡通路の二箇所に限定する。


 そして、俺達が食堂から居住スペースに行くには、連絡通路に入ってウスルの寝泊まりしている待機部屋にある隠しエレベーターに乗り、地下三階の地下大空洞に降り、そこからまた隠しエレベーターに乗ると、地下一階の居住スペースへと帰ることができるようになった。


 朝の出勤時間が十秒から五分に大幅アップである。


 しかし、そのお陰で夜寝る時は安眠できるはずだ。多少の通勤の不便さなど気にするべきではないだろう。


 ちなみに、少女達は特に文句も無く通勤時間が延びたことを受け入れてくれた。素晴らしき社畜の精神だ。


 ついでに、我がダンジョン初のボス部屋の建設も完了した。


 まず第一のボス部屋、連絡通路のウスル待機室。


 玉座の間を意識した、豪華な内装の体育館並みの広さを持つ広間だ。奥には階段状になったフロアがあり、その最上段に豪奢で大きな黒と赤を基調にした椅子を用意した。


 ウスルの巨体に合わせたせいで馬鹿みたいにデカい椅子だが、ウスルに座らせてみると案外しっくりきた。


「座り心地は良い」


 と、ウスルにお褒め頂いたので問題ないだろう。


 そして、地下大空洞の地底湖に聳える、いまや二十に達した巨大な塔の最奥にある通称『真の塔』。


 現在、この塔の最深部がダンジョンの最下層に位置するため、そこにフルベルドのボス部屋を作った。


 暗い、直径一メートルほどの柱が規則的に並ぶ無機質な広間だ。


 吸血鬼が出そうなイメージの部屋を作ったつもりだったのだが、できたのはむしろゾンビゲームのボス部屋だった。


 奥にはフルベルドが二人入るほどの大きさの棺を置いており、ポケットコイルとウレタン層が寝心地を約束する高級マットレスと高級羽毛布団が標準装備となっている。


「素晴らしい寝心地に永眠しそうですな」


 と、フルベルドにお褒めの言葉を頂いたのでバッチリだろう。


 最後に、新人のハーピー三姉妹である。


 ハーピー三姉妹は、『真の塔』の最上階に作った豪華なペントハウスに住んでもらうことになった。


 ワンフロア丸々使った広間に、四方の壁は無く、天井から何枚も垂れ下がったカーテンが幻想的な空間を演出している。


 奥には天蓋付きベッドを三つ並べ、その脇には一人暮らし用の小容量の冷蔵庫が置かれている。ちなみに料理はできないとのことなので、地底湖前にお供えのように食事を置くことにした。


「景色が良く、快適です。更に料理が驚くほど美味しいですね」


「ベッドがこの世のものとは思えません」


「凄い美味しいですね!」


 と、概ね好評のようであった。


 ちなみに少女達との交流はパーティー形式でやろうと考えている。


 バーベキューにしようかな。余った肉はサンダーイール達が食べるし。


 俺はそんなことを考えながら、最後の仕上げも終え、居住スペースの自室へと戻ってきていた。


 俺が改築結果の確認をしようと思っていると、エリエゼルや手の空いた少女達が部屋を訪ねてきた。


「ご主人様、もうお休みですか?」


 昼過ぎということもあり、ダンジョン改築が終わって急に自室に戻った俺を心配したのか、エリエゼルの後ろに並ぶ少女達の顔も曇りがちである。


「いや、ダンジョン改築の結果を確認しようと思って」


 俺がそう答えると、エリエゼルを含め全員が首を傾げたので、とりあえず皆にも見てもらうことにした。


 ソファーに座った俺とエリエゼルと、ソファーを囲むように周りに立つ少女達。


 困惑する皆の前で、俺は畳みたいにデカいテレビの電源を入れた。


 すると、テレビには九つに分割された画像が表示される。


 食堂と厨房、地底湖、和風迷路などのリアルタイムの映像だ。


「……え? これは……」


 そう呟き、エリエゼルが目を瞬かせてテレビに映る映像を注視する中、ケイティが不思議そうに口を開いた。


「あの、これは?」


「このダンジョンの映像だよ。全部で五十箇所にカメラを仕掛けたから、交代制で監視する人を置こうか」


 俺がそう言うと、意味が分からなかったのか少女達は不思議そうな顔を浮かべていた。


 そんな中、エリエゼルは呆れたような顔で俺を見ると、静かに口を開く。


「ダンジョンの防衛というか、警備会社みたいなノリになってきましたね」


「いや、便利でしょ? 絶対超便利だよ?」


 エリエゼルの謎のコメントに俺がそう返すと、エリエゼルから可哀想な子を見るような目で見られてしまった。



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