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社畜ダンジョンマスターの食堂経営 〜断じて史上最悪の魔王などでは無い!!〜  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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二号店作り

 次の日。フルベルドとレミーアが夜の内に王都内の二号店を作れそうな敷地をピックアップしてきたので、緊急会議を開くことにした。


 居住スペースや食堂は少女達が掃除しているので、俺達は掃除が後回しになっている厨房にて会議中である。


 フルベルド達がピックアップした候補地は三つ。


 一つは主要な施設が辺りに無い王都の外れ。此処は少し下級の民が暮らす地区となる。


 恐らく、そこの住民の一部にバレても苦も無く口封じ出来るだろう。


 しかし、これまではその地区の者ばかりが出歩いていたのに、食堂を作ったせいで兵士やら冒険者やらが出歩くようになると、様々な方面からバレてしまいそうである。


 二つ目は、貴族街にある空き家屋の地下。


 貴族の入れ替わりは多少あるが、殆どは昔から続く名家らしく、子沢山の貴族の孫辺りが子供に恵まれなかったりすると、暫く空き家が増えたりするらしい。


 まあ、そういう家は大概が売りに出されるか、貴族の別荘となるため、完全な空き家は珍しいとのこと。


 三つ目は、商人ギルドのある地区の倉庫街。


 ギルドや、様々な商人が持つ商品の在庫を置く倉庫が立ち並ぶ地区だ。


 ちなみに、この近くに奴隷屋があった。


「倉庫街が良いな」


 俺が候補地を聞いてすぐにそう決断すると、何故かエリエゼルが深く頷く。


「奴隷がすぐに購入出来ますからね」


「違いますよ?」


 誤解を招きそうなエリエゼルの一言に、俺は何故か敬語で否定した。


 フルベルドがそのやり取りに笑い、口を開く。


「先程述べた候補地はどれも此処から同じくらいの距離になりますが、確かに倉庫街が一番良いかもしれませんな」


 フルベルドがそう言うとレミーアが軽く頷いた。


「私もそう思います。倉庫街ならば既に後ろ暗い生き方をしている者達が隠れて拠点としていますから、今更食堂が増えたくらいなら目立たないのではないでしょうか」


「後ろ暗い生き方をしている者が気になるが…まあ、そういう意味では俺達より日陰者はいないだろうしな。よし、倉庫街にするか」


 俺はそう言って立ち上がった。


「もう作り始めるのですか?」


 驚くエリエゼルに俺は頷いて厨房の壁に向かった。


「大丈夫だ。すぐに店を開くわけじゃないさ。店番は頼んだぞ」


 俺はそう言って壁を動かし、以前作ったダンジョンへの避難経路へと進んだ。


 さて、方向は分かっているのだが、距離感がつかめない。


 とりあえず、大通りに沿う形で地下通路を掘り続ければ良いだろうか。


 そんなことを思いながら、俺は快適な地下通路を作っていく。


 そう、動く歩道付きなのだ。


 まるで空港にある長い通路と動く歩道。


 最初から動く歩道付きにするつもりだったため、通路も空港にありそうな白い壁と天井である。


 床はオフィス風のタイル張り。動く歩道の床は黒い板状となっている。


 それなりに長く作ったが、果たしてどれだけの距離となったのか。


 気になった俺は大通りの下から横に外れるように小さな通路を作り、徐々に地上へとマンホール状の縦穴を作っていった。


 地上への穴が開くと、穴の向こうは真っ暗だった。


 今は朝のはずである。


 この暗さは建物の中か。


 それにしても真っ暗だ。


 このままでは外には出られないし、俺は仕方無く今来た道を戻ろうと縦穴を降りた。


 すると、通路には巨大な人影が仁王立ちしてこちらを見ているではないか。


「ウスルか」


 俺が名を呼ぶと、ウスルはこちらへ歩み寄ってきた。


「どうされた?」


 ウスルにそう聞かれ、俺は名案を思いつく。


「灯りをやるから、ちょっと地上の様子を見てきてくれるか?」


「分かった」


 俺が懐中電灯を創り出してウスルに頼むと、ウスルは二つ返事で了承して懐中電灯を受け取った。


 懐中電灯を点けて目を僅かに見開いてはいたが、ウスルは無言で縦穴を登っていく。


 ウスル用にもう少し大きくしておけば良かったか。


 俺は窮屈そうに穴をよじ登るウスルの姿を眺めながらそんなことを思った。


 ウスルが地上へと移動して暫くすると、何かが破壊されるような音が聞こえた。


 木製の板か何かを割るような音だ。


 それからまた暫くして、ウスルが地上から戻ってきた。


「何かあったのか?」


 俺がそう尋ねると、ウスルは無表情に頷いて口を開く。


「倉庫街に着いたらしい」


「…らしい? 倉庫の中だったから外の様子が分からなかったのか」


 ウスルの返答に俺がそう推測すると、ウスルは首を左右に振った。


「いや、後ろ暗い生き方をしている者達の隠れ家らしき場所に繋がっていた」


「おお、マジか。後ろ暗い生き方をしている者でもいたか?」


 俺は淡々と語るウスルに影響されて、思わず普通に返してしまった。


 だからなんだ、後ろ暗い生き方をしている者って。


 俺がそんなことを思っていると、ウスルはまた首を左右に振った。


「箱を二つ開けてみたが、一つには血がついた金貨や銀貨が入っていた。もう一つには誘拐されたのか、ドレスを着た娘が入っていた」


「うわー、やばいじゃーん」


 俺はウスルの報告に棒読みでそんな台詞を口にした。


 マフィアかギャングか、はたまたテロリスト的な感じか?


 よく分からんが、どちらにしても悪い奴らに違いない。


 俺はどうしたものか悩みながらウスルを見上げて口を開いた。


「それで、その娘はどうした?」


「置いてきた」


「あ、そう」


 ウスルの返事を聞いて俺は腕を組んで唸った。


 本当にどうしたものか。


 見なかったことにして穴を塞ぎたいが、ドレスを着た娘が普通の家の者なわけがない。


 十中八九、貴族の御令嬢だろう。


 そうなると倉庫街に店を出した後に兵士達が調査に来たりするかもしれない。


 まあ、実際はどうなのか分からないが。


 とりあえず、此処ならば何かが起きてもダンジョンと関連付けられたりはしないだろう。


 それに、ウスルならば最悪倉庫の外へ出て逃げてもダンジョンまで帰ることが出来るはずだ。


「…制圧するか」


 俺がそう口にすると、ウスルが片方の口の端を吊り上げた。


「…俺の出番か」



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