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フードコート?

 広い地下空間を見て少女達が驚愕した。


 高い天井と石造りの床と壁、照明が取り付けられた無数の柱。


 それらを見て、ケイティが口を開く。


「ひ、広いですね」


「こんなに広い地下室を一時間も掛からずに……」


 ケイティの言葉に続けるようにナナがそんなことを言った。二人が話し出すと、他の少女達も口を開き出す。


 姦しい少女達を他所に、俺は目を瞑って地面に手を付いた。


 掃除とかがし易いように、シンプルなテーブルと椅子が良いだろうか。公園のベンチとテーブルのような形ならば楽だしオシャレな気がする。


「試してみるか」


 一言呟き、俺は木製のベンチとテーブルを出してみた。


「うわっ! びっくりした!?」


「いきなり椅子とテーブルが……」


 驚く少女達を横目に苦笑し、俺はテーブルに手を置く。木の優しい触り心地が良い感じである。


「掃除しやすいテーブルと椅子にしてみたが、どうだろうか?」


 そう尋ねると、少女達は顔を見合わせてから歩み寄ってきた。


「確かに掃除しやすそうです!」


「あ、でも椅子が重くなったから退けるのは大変?」


「二人で持ったら動かせるよ?」


 少女達がまた騒がしく意見を言い合い始め、ケイティがこちらに顔を向けた。


「座ってみても良いですか?」


「うん? ああ、大丈夫だよ」


 そう答えると、我先にと少女達が椅子を奪い合う。まさにお祭り騒ぎといった様相だ。


 俺は笑いながら目を瞑り、念じる。目を開くとテーブルと椅子のセットが十組並んでいた。


「わぁっ!」


「いっぱい出た!」


 小さな子らは大喜びである。


 まるで学校の教室のように皆が並んで椅子に座り、こちらを見た。


「座り心地はどうだ?」


「良いですね。少し丸みがあるからお尻が痛くないです」


「一人で座るより楽しいかも」


「あ、そうだね! 並んで座ってるって感じがします!」


「こっちの方が面白い!」


 どうやら少女達にはベンチ型の椅子の方が好評らしい。皆楽しそうに座って騒いでいる。


「よし。それじゃあ後は……」


 目を瞑り、綺麗で使いやすいフードコートを想像する。


 やっぱ、ゴミ箱とウォーターサーバーは多めにあった方が良いな。ウォーターサーバーの近くにはボタンを押すと一つずつ小さな紙コップが出る箱も設置。


 トイレは十人が同時に使える程度で良いか。男女だけ分けて、掃除用具も置いておこう。


 更に柱や壁にはカラフルな布を垂らして雰囲気作り、と。


「よし」


 目を開けてみると、全体的に明るくなり設備が少し充実した地下空間ができていた。


 少女達を見ると、皆一様に目を丸くして辺りを見回している。


「どうだ?」


 そう尋ねると、ケイティが目を輝かせて顔を上げる。


「す、凄かったです! 全部の柱の上からブワッと布が降ってきて!」


「ニョキニョキ何か生えるのも面白かったです!」


「アクメ様! あの四角い箱はなんですか!?」


 キャイキャイ騒ぐ少女達。


 うーん、久しぶりにこういう素直な反応が見れると嬉しいものである。何かもっと驚かせてやりたくなるが、アホな理由で魔素を無駄遣いしても勿体無い。


 俺は少女達にウォーターサーバーの使い方を説明してから、地下空間の奥に目を向けた。


 壁には両開きの扉がある。俺達が地下通路を通ってきた時に作った扉だ。


 あそこに店を構える形にしようと思うが、店の雰囲気が思い浮かばない。よくあるのは屋台風というか、カウンターがあってレジが二つか三つ並び、店員が笑顔で立っているといったものである。


 しかし、それ一つがポンと置かれていても寂しい気がする。フードコートは沢山店があるから楽しいのだ。


「うーん……店、店、店……よし、雰囲気だけでも良いか」


 悩んだ挙句にそんな適当な結論を出し、目を瞑る。


「ほい」


 念じながらそう呟いた瞬間、少女達が驚く気配がした。


 成功かな?


 そう思って目を開けてみると、壁にはもう店が並んでいた。


 壁には横に長い穴が開いたような格好で店が並んでいる。分かりやすく壁を一店舗ごとに色分けし、買える料理のイラスト付きの看板も貼り付けてある。


 奥は繋がっており、それぞれの店で担当の少女が注文を受けるといった仕組みにしてみたのだ。


「……道の駅とかサービスエリアの食堂みたいになった気がする」


 統一感を出し過ぎたせいだろうか。予想と少し違う雰囲気になってしまった。


 だが、少女達は大騒ぎである。


「もうお店ができたんですか!?」


「壁に穴が開きましたよ!?」


「看板が生えた!」


 少女達が大騒ぎしながらできたばかりの店を見に行き、俺は腕を組んで考える。


 いつも完成する瞬間を見ることができないのだが、どんな感じなのだろうか。どうでも良いことに興味が湧いてしまった。


 そんなことを考えていると、クーヘが皆の騒ぐ声を聴きながら、残念そうに溜め息を吐いた。


「わぁ、私も見てみたいなぁ」


 目が見えないクーヘのその言葉に、俺はクーヘの頭を軽く撫でて口を開く。


「目が見えるようになったら、特別にクーヘだけに凄いものを作ってやろう。一番に見せてやるからな」


 そう言うと、クーヘは照れ笑いを浮かべながら返事をし、頷いた。


 エリエゼルがもしかしたらと口にしたのだから、クーヘもいずれ目が見えるようになるかもしれない。


 その時は、壁一面を使ったパイプオルガンでも出してやろう。音は可愛くないかもしれないが。


 俺は驚いて大騒ぎするクーヘの姿を想像し、笑ったのだった。



フードコートではサンドイッチやその場で焼く焼き鳥やらを販売予定です。

その場で調理が簡単なもの募集中。

可愛い女の子達がメイド服で作ってくれます!


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