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貧民街に潜む闇

暗い廃墟の中で数人の人影がたむろしている。


床や壁の表面も剥がれかかったような廃墟には似つかわしくないソファーや椅子があり、男達はそれぞれ腰を下ろしていた。


よどんだ空気が広がっている室内は静かで、皆が酒の入ったグラスか葉巻を手にしている。


男達は小綺麗な服を着てはいたが、どれもちぐはぐであり、形やサイズもバラバラだった。適当に掴んだ服を片っ端から着たような奇抜な格好の男達は、ボサボサになった頭も合わさり、なんとも異様な雰囲気を醸し出している。


男達は貧民街の主と呼ばれる浮浪者の集団である。


貧民街には多種多様な者達が住んでおり、中には隠れ棲んでいる犯罪者などもいた。そういった輩が集まり、お互いの身を守る形で生活しているのが貧民街の最奥、通称廃墟通りである。


衛兵すら殆ど立ち入らない廃墟通りの一角で油断しきった男達を、突如として建物を揺らすような轟音と衝撃が襲った。


地震かと思うような揺れに、男達は椅子から転がり落ちて周囲を見回す。


「な、な、なんだいきなり……」


誰かがそう口にすると、部屋の扉が静かに開いた。


思わず扉の方に皆が顔を向けると、そこには黒いコートを着た貴族風の男が立っていた。


貴族風の男は室内を見回し、口の端を上げる。


「ご機嫌よう」


その言葉に、室内にいた男達は慌てて剣を抜いた。


「な、なんだ、お前!?」


「ここが何処だか分かってんのか、この野郎」


男達が怒鳴りながら殺意の篭った目を向けると、貴族風の男は頭に被っていた帽子を手にとり、優雅に一礼する。


「私はフルベルド・ヴァームガルデン。君達が私の名を知ったところで何の意味も無いが、せめてもの慈悲として教えてあげようじゃないか」


フルベルドがそう告げると、男達は顔を見合わせてフルベルドの背後を見た。


「……あんた一人か?」


男が訝しげにそう尋ねると、フルベルドは首を傾げる。


「おや、二人に見えるかね」


そんな返事を聞き、男達は目付きを鋭くさせる。


「……頭がイカれてんのか? 俺達をただの雑魚と思ってんなら……」


手前の男が刃先をフルベルドの顔に向けてそう口にすると同時に、フルベルドは足を前に出した。


身構える男達を眺めつつ、フルベルドは真っ直ぐにただ歩いていく。


そして、男の持つ剣の前に立った。


「……斬らないのかね?」


フルベルドがそう呟いた瞬間、男は目を見開いて剣を突き出す。


躊躇いの一切無い剣だ。その剣から身を守ろうとしたのか、フルベルドが無造作に手を上げ、刃は深々とフルベルドの手のひらを貫いた。


フルベルドの手からは血が溢れ、男の口が笑みの形になる。


「思ったよりも良い腕だ。少し、気を引き締めねばな」


自分の顔の目の前に現れた刃先を見つめ、フルベルドはのんびりとそんなことを言った。


「本当に頭がおかしいのかよ」


嘲るような言い方で男がそう呟くと、フルベルドは手のひらに刺さった剣を、そのまま握る。


冗談みたいに軽やかな音を立てて、フルベルドの手のひらに突き刺さっていた剣が折れて二つになった。


「……は?」


半ばで折れた剣を見て間の抜けた声を出す男に、フルベルドはそっと笑みを深める。


ゆったりと男の横を通り過ぎるフルベルドに、他の男達は慌てて剣を向けた。


「お、おい! 何ボーッとしてやがる!」


奥にいる男がそう叫ぶが、声を掛けられたはずの男は何も答えなかった。フルベルドは息を吐くように笑うと、男達を振り向く。


「さぁ、君達は集中すると良い。この世で見る最後の景色なのだから」


フルベルドがそう呟いた瞬間、背後で剣を手にした男の身体が半分に切れて倒れた。


普通ならばあり得ないような、首と肩の付け根から股下にかけて一直線に切り離された男の身体を見て、他の男達は息を飲み悲鳴をあげた。






「血の海じゃー」


俺は開口一番そんなことを口走った。


音が静かになったので扉を開けたのだが、中の光景はあまりにも凄惨であった。身体が二つや三つになった男達と、血だまりのある床。壁にも絵の具をぶち撒けたように血の跡がべったりと残っている。


「まぁ、本当に血の海ですね」


横から可愛らしい子供の姿のエリエゼルが顔を出してそう言った。


「いやはや、少々はしゃぎ過ぎましたか」


血の海の真ん中で困ったように笑うフルベルドに苦笑を返し、俺は廃墟の外を見る。


まるで戦争映画に出てきそうなボロボロの建物が並んでいる大通りだ。一応石畳の道が敷かれているが、ゴミだらけのこの通りを普通の人間は歩かないだろう。


「……うん、良いな」


俺はそう呟き、廃墟の中へ視線を戻した。


「此処にしよう」


「お眼鏡に適いましたか」


俺の言葉を受けて、フルベルドが何処か嬉しそうにそう言った。


「そうだな。ここなら気にせずに伸び伸びやれそうだ」


そう答えると、エリエゼルが微笑む。


「それでは、ここに新しい食堂を?」


「ああ、三号店だな」


そう言うと、二人は大きく頷き、フルベルドが鋭い牙を見せて外を指差した。


「それでは、この近辺の廃墟も綺麗に掃除致しましょうか?」


「いやいやいや」


フルベルドのとんでも発言に俺は両手を振って待ったをかけた。


「こいつらは俺達を狙った馬鹿どもの一味だから連帯責任で死刑として、他の廃墟の奴らは今のところ何もされてないからな。もし何かしようとしたら、その時はこちらも反撃すれば良いさ」


「ふむ。連帯責任……覚えておきましょう」


フルベルドは一人で連帯責任、連帯責任と呟きながら頷く。新入社員か、お前。



最強ギルドマスターの改稿作業が終わりました…

まだ社畜ダンジョンマスターは半分超えたくらい…

死ねる_:(´ཀ`」 ∠):

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