結局、強行突破します
結局、強行突破します
クソ、領主様に頭を踏んでもらうとか無理だろ。しかも、3日以内なんて会うことすら出来ないよ。
でも、だからと言ってここでメソメソしていても仕方ない。とりあえず、ギルドに行って領主様に会う方法が無いかどうか聞いてみよう。
そう思いながら僕はギルドへ向かった。
ギルドに着くとちょうどダニエル達が食堂でメシを食っていた。
「よお、ここに来るには久しぶりだな。どうしたんだ」
コッチに気が付いたダニエルが話しかけてきた。
「実は、領主様に会う方法を探しているんだけど知らないか」
「なんだよトモヤ、もしかして惚れちゃたのか」
「ああ、まあそんなとこかな」
僕は、苦笑いしながら言った。
「まあでも、無理だな。領主様は最近自分の館から出てないらしいし、訪ねようにも領主様となんの接点もない俺らじゃ追い返されるだろうさ」
やっぱり、そうか。そんな簡単に会える訳ないよな。
そう、落ち込んでいるとダニエルに肩を掴まれた。
「まあ、1つだけ方法がなくもない」
「なんだよ、その方法って」
「強行突破さ」
ダニエルは自信にあふれた顔で言った。
こいつに頼った僕がバカだった。
リスキーやモナカにも領主様に会う方法を聞いてみたが知らなかった。
結局、何も方法は得られないまま、その日は過ぎていった。
しかし、ここで諦める訳にはいかない。なんたって、このミッションをクリアしないと死んでしまうのだから。
そう思いながら次の日も領主様に会う方法を必死で考えた。そして、僕はある結論に至った。
もうこの手しかない。だも、これは1人では実行できない。
僕は急いでダニエル達のもとへ行き、計画に協力してもらうよう頼んだ。
ダニエル達は仲間のためならと快く引き受けてくれた。
やっぱり持つべきものは頼れる仲間だな。
そして、ついに決戦の日がやって来た。僕はダニエル達と領主様の屋敷へ向かった。
領主様の屋敷の門の前には兵士が4人いた。おそらく、警備兵だろう。
僕はダニエル達となにくわぬ顔で警備兵に近づいていった。警備兵の1人がこちらに気付き近寄ってきた。
「お前ら領主様の屋敷に何にかようか」
「はい、実は先日領主様が私のお店を訪れた際に商品を忘れになられたみたいでして届けに参りました。領主様にお目通り願えないでしょうか」
もちろん、領主様はなにも忘れものなんてしていない。
「わかった。では、私達が預かろう」
やはり、そうきたか。このまま素直に領主様のところまで行きたかったが仕方がない。やはり、あの手を使うしかないか。
「いえ、それがあなたがたにお渡ししてよいものかどうかわからないんです」
「・・・・どういうことだ」
「実は、あれなんです。領主様がお忘れになったもの」
そう言って、ダニエルの方を指した。
「すまん。どれだ」
「いや、だからあれです。見えますよねあそこにいるゴツい男です」
「あれか、あそこにいるいかにもゴツいあの男か」
「はい、それです。領主様は私から人をお買い上げになったのです。こんなことが世間にバレてしまっては領主様のイメージが損なわれてしまいます。もしかしたら、この事を知ってしまった人は消されるなんてこともありえますよ」
警備兵はどうしたらいいのか迷っているのか、頭を抱えている。
「本当にあれを領主様が買ったんだな」
「はい、確かに私から買いました」
僕は真剣な表情でいった。
「わかった。とりあえず、屋敷の中で待機していろ。私が領主様を呼んでくる」
そう言って、僕達は屋敷の客間に通された。
作戦成功だ。考えた時は少し無理があるかと思ったが、なんとか成功してよかった。これがダメだったらダニエルの言うとおり強行突破するしかなかった。
あとは、領主様に会って頭を踏んでもらうだけだ。
そう考えていると、扉が開き全身に鎧をまとい腰に剣をさした男が入ってきた。
「話しはさっきの門番から聞いた。その結果、お前達をここから出す訳にはいかなくなった」
出るもなにもコッチから訪ねてきたんだが。
「どうしてですか」
「お前らの話がもし本当だったらとしたら、お前らがその事を他のヤツに話す前に消す必要があるからだ」
「いくら領主様が偉くてもそんなことをしていい訳が無い」
僕は声を強めて言った。
「勘違いするな。これは領主様の命令ではない。俺の意思だ」
「なおさら、分かりません。どうして、あなたの意思で私達が消されなければならないんですか」
「どうしてだと、そんなの決まっているだろう。俺が領主様の事を好きだからだ。ゆえに、領主様に少しでも悪影響を与えるヤツは俺が消す」
ダメこの人、愛さえあれば大丈夫みたいな人だよ。仕方がない。僕はダニエル達の方を向き言った。
「強行突破するぞ」