そろそろ囲碁広めます
そろそろ囲碁広めます
ダニエル達とパーティを組んで2週間が経とうとしていた。
僕達は今のところ全てのクエストを完璧にこなしている。
それもそのはずだ、出てくるモンスターは攻撃を受けようがなにをされようが逃げることをせず僕を追いかけくる。
つまり、僕が死ぬかモンスターが死ぬまで闘いは終わらないのだ。
僕が追いかけられている間ダニエル達がやりたい放題攻撃をするというのが僕達の戦い方だ。
正直、僕だけ頑張っている気がする。
しかし、僕もただ逃げていたわけではない。僕の唯一使えるスキル[寄生]を使ってパーティみんなから経験値を奪っているのだ。おかげで今のステータスはこんな感じだ。
レベル16
HP 12/12
職業 究極のおとり人
ついでに今までのスキルも紹介しておこう。
スキル
・工作スキル (碁石と碁盤しか作れません)
・諦めれる勇気 (諦める決断が早くなります)
・一進一退 (一歩あるくと一歩後ろにワープする。このスキルはオンオフができます)
・寄生 (同じパーティメンバーの経験値を奪える。このスキルはオンオフができます)
・ウォーターフロー (海や川に身体の一部をつけると水の流れが分かる)
・黄金の足 (3秒間だけ足が黄金のように光る。ただし、1回使うと5分間使えない)
まあ、こんな感じだ。ところで皆さんは気付いただろうか、僕のHPが全然レベルに釣り合っていないことに。それには理由があるらしい。僕の職業であるおとり人は一般的に逃げるだけなのでHPが上がりにくいのだ。
そして、僕のようの究極のおとり人ともなると余計にHPが上がりにくくなる。つまり、究極のおとり人とは普通のおとり人よりもHPが低いのでそれだけ必死になって敵から逃げることが出来るんだそうだ。
正直、もうそこらへんの一般人と何が違うかわからない。
そんな職業だが僕はギルドを辞めようとは思わない。なぜならパーティの仲間との生活が楽しいからだ。あと、仕事終わりの酒が美味い。
クエストが終わると、毎日みんなでギルドの食堂でメシを食う。今日も食堂に行くと思っていたら、ダニエルに止められた。
「待ちな、トモヤ」
「なんだよ。ダニエル早くメシ行こうぜ」
「まあそうせくなよ。お前もここに来て2週間近く経つ。そろそろ、このギルドの本当の姿を知ってもいい頃だろう」
「なんだよ、本当の姿って」
「ついて来な」
そして、ダニエルは食堂とは逆の方向にあるクエストを貼りだす掲示板に近づいて行き右上に貼ってあった依頼書を剥がした。
「おい、ダニエル。今日はもうクエストは、」
そう言いかけて僕は口を閉じた。なんと、剥がした紙の下に小さな魔法陣が描かれていたのだ。
「まさか、これに触れると地下への道が開くとかそんなことわないよな」
僕は恐る恐る聞いた。
「そのまさかさ」
そう言って、ダニエルは魔法陣に触れた。
「ゴクリ」
そして、
何も起こらなかった。
「ダニエル、地下への道は隣の扉ですよ」
と、僕の後ろからリスキーが言った。
「おい、リスキー。バラすのが早いぞもう少し経ってから言え」
いや、全然早くないよ。
「すいません、トモヤ君。これウチのギルドの伝統なんです。新人さんを驚かすための」
なるほど、まあギルドならそういう、伝統があってもおかしくないか。僕はそう思いながら地下への扉を開けた。扉の先には、地下続く階段があった。その階段を降りると眩しい光が僕を襲った。
「ようこそ、カジノへ」
僕は綺麗なお姉さんさん達に迎えられた。そこには、今まで見た事がないくらい大きなカジノが広がっていた。
(いや、カジノなんてもともと見たことないけどね)
「驚いただろ。ここは、表向きはギルドとしてやっているが、本当はカジノをやるための場所なんだ」
どうしよう、なんてとこに僕は入ってしまったんだ。
と、僕が後悔していると、
"ミッションが発令しました。メールで確認して下さい"
2週間ぶりのミッションだな。そう思いながらメールを開いた。
"ミッション3、仲間達と協力してこの町の約30%の人に囲碁を広めろ 期限は2カ月。また、ステータスで町に何%囲碁が広まっているか確認でる"
その時、僕の体を電撃のようなものが走った。思い出した。そうだ僕は囲碁を広める為にこの世界に来たんだった。あまりにもここで生きていく事に必死過ぎて忘れていた。
しかし、これでやっとここへ来た目的を果たせる。まだ、確信はないがこうやって色んな町や都市で囲碁を広めていけばもとの世界に戻れるかもしれない。そう思うとやる気がでてきた。
よし、やってやるぞ。
「おい、トモヤ。そんなとこに突っ立ってないでお前も遊ぼうぜ」
見ると、ダニエル達は楽しそうにカジノをしていた。
"スキル、[諦めれる勇気]が発動しました"
明日から頑張ろ。
僕の決意は、はかなく消えていった。