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不幸な彼女と幸運な俺  作者: 雨宮結愛
『人生は幸せも不幸も、最後にはプラマイゼロになるらしい。』
5/5

『プラマイエンド』


ある日を境に、彼女は学校に来なくなった。

どうやら家の事で忙しいとの事だった。

自宅の部屋で横になっていると、先日引き取った子猫のラッキィがお腹に乗って鳴きだした。


「どうしたラッキィ」


鳴き止む事なく、何か訴えるような瞳が俺を見つめる。

同時に胸が騒ついたのを感じた。


「ラッキィ?」


俺は、


「...!!」


気付けば走り出していた。

理由はわからない。

ただ、嫌な予感がした。

汗だくになりながら辿り着いたのは彼女の家。

インターホンを押し、息を整えながら返答を待った。

ドアが開く。


「お兄ちゃん?」


そこに現れたのは、彼女の妹だった。

枯れた声に赤い目。


「お姉ちゃんは!?」

「そこの、大っきい病院」


それを聞き再び走り出した。

思い当たる大きい病院は、一つしかない。

そこに彼女がいる。

車を使えばいいものの、そんな事も忘れ、ただ無心で走った。





病室で彼女は眠っていた。

どうやら過労で倒れたらしいのだが、思ったより衰弱していて危険な状態との事だった。

両親はすでに他界していて、一人で家族の生活費を稼いでいたみたいだった。

そんな事、一言も言っていなかったじゃないか。

少しやつれている彼女の手を取り、俺は強く握る。


「俺を不幸にするんじゃないのかよ」


記憶が巻き戻っていく。

どんなに不幸でも、常に彼女は彼女らしくそこに存在していた。

笑えば俺まで幸せを感じた。

泣いたとこなんて見た事がない。

強くて、真っ直ぐで、誰よりも思いやりのある奴だった。

思い出す。ある日の彼女の台詞を。


「知ってる?幸せも不幸も、最後にはプラマイゼロになるのよ」

「そんなのありえない。人それぞれに決まっているだろう」


俺はその言葉の本当の意味を、実は知っていたが言わなかった。

あまりにも彼女には残酷だったから。


【死んだら誰だってプラマイゼロだ】


「俺が否定してやる」


こんなの俺が許さない。


「持っていけッ...俺の幸せ、全部__」





彼女は一命を取り留めた。

でも、一向に目を覚まさなかった。

彼女の家族は俺の家で預かり、一緒に彼女の目覚めを待っている。

あれから三年、俺は医師を目指し大学に通っている。

今までの幸運は一般レベルに低下したが、持っている才能は確かだ。

今やトップの成績を誇っている。


「今日も寄っていくか」


俺は暇さえあれば病院に通っていた。

少しでも幸運を分けてやりたいと、非科学的な事を繰り返している。

しかし、『光子の非局所性』と言って、人の選択が他所に影響を与えるというのが証明されている。

要するに『運命論』の否定である。

俺は、この運命を変えようと、変えれると信じて動いているのだ。

病院の外、空を見上げる。


「...え?見間違いか?」


屋上に見える人影。

俺は走り出す。





屋上のドアを開ける。

晴天の中、気持ち良さそうに背伸びをする彼女がいた。


「あっ!おはよう!」

「おはようじゃ...ねーよ」


長く伸びた髪が風でなびき、筋力が低下しているからかよろける身体___


「危ない!!」


__を、俺は抱き支える。

驚いた表情の彼女は、吹き出すように笑った。


「あっはっは!大きくなったんだね」

「あれから三年だぞ、バカ」


いつからこんなに彼女の事が、愛おしくなったんだろうか。

不思議でしょうがない。


「ラッキィは元気?」

「あぁ、元気だ」

「もう大学生?」

「医学部だ」

「頭良いんだね」

「そうだ」

「いっぱい話したい事があるよ」

「俺もだ」


彼女の言った事は、確かに正しかったのかもしれない。


「なぁ」


きっと俺たちならちょうどいい。


「俺がやった幸運全て____」


俺たちじゃないと釣り合わない。

だから、


「____俺に返してくれないか?」


俺を不幸にさせてくれ。


「あっはっは!えーっとね〜、」


彼女は笑って、


「私も付いてくるけど、いい?」


幸せそうに、そう言った。





完結


これで完結でございます。

なかなかチープで申し訳ない。

その後、彼女達はどうなったのでしょうかねぇ〜。

まぁ、きっと幸せでしょう。

ではではこれで、また会いましょう!

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