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『不幸な彼女』
語るのはいつだって、不幸な人生の自慢話や笑い話だ。
そうやってネタにしていないと、不憫でしょうがない。
生きてりゃ何か良いことあるだろうと自分に言い聞かせ、小さな幸せを拾っては、
「生きていることが幸せなんだ」
と悟り、毎日をなんとか生き伸ばしている。
ペラペラで薄くなった人生はクルクルと巻かれ誰かの中に保管されるが、そんな薄っぺらい人生など、俺には無縁なものだった。
「むかつく。生意気。あなたに不幸を押し付けてやりたいわ」
ふてくされながら彼女はそう言って、目の前の小石を蹴り飛ばそうとして転ける。
アホだ。
「無駄だ。お前が俺に不幸を押し付けられたとしても、結果的にお前が不幸になるだけだ」
「なにその絶対的自信」
制服に付いた砂を手で叩き立ち上がる彼女は、再び歩き出す。
「運命論なんてクソ喰らえよ。だから私は認めないわ」
そう言いながら彼女は、溝に足を沈めたのだった。