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第1話 なんとか就職先は決まったけれども…

話の一番上に書かせていただきましたが八森青戸と申します。

文も言葉もめちゃくちゃですが読んで頂けたら嬉しいです。

よろしくお願いします。

初めまして八森青戸と申します。皆さんは自動車整備についてどういうイメージをもってますか?

車が好きな方や車をよく使う方は知っていると思いますが修理も維持費もとんでもない料金がかかりますよね汗

そんな自動車整備士の裏側を知ってもらおうと思ってこの物語を書こうとおもいました。

私自身自動車整備士資格を持っており板金塗装の仕事をやらせてもらってます。(二年目の未熟者ですが…)

自動車整備士の仕事の板金塗装という分類の仕事について書かせていただいてます。

小説は好きで読んでますが残念ながら文章力と語彙力が小学生並です…。が読んでいただいたら嬉しいです

長い挨拶すいません。 失礼します。








カチャカチャ、カンカンカン、ザッザッザッ、パサー。

「すげー…」

車の各パネルを外す音、へこんだ箇所をハンマーで叩いて直す音、パテと呼ばれる樹脂のような物をパネルに付け乾かして削る音、塗装をする音。色んな音がして色んな作業が見れるこの工場が俺はすごく好きだった。

俺は佐々木装太、12歳。ある事情で6歳のころからこの工場を経営している祖父の真三郎に引き取られた。

「装太帰ってきたのか。今日は遅かったな。」と心配そうに祖父がいう。

「うん。掃除が長くなっちゃってねー」と笑顔で俺は返事をする。

「それよりも今日はなんか俺にもできる作業ある?」と俺は聞く。

「じゃああそこにあるドアを塗ってくれ。カラーコードは近くにある書類に書いといたから調色からな。」と祖父が笑顔でいう。

「わかった。」と俺はいう。(やった!今日も塗装ができる!)と心の中で思いながら俺は作業を始めた。

俺は極度の人見知りでまともに人と会話ができないところがあった。だから最初は祖父ともまともに会話ができなかった。

そんな俺をみて祖父はこの仕事を手伝わせるようになった。はじめは祖父がなにを考えて俺にこの仕事をさせてるのかわからなかったが仕事をしていくうちに工場の従業員とか、お客さんとかと話せるようになってきた。祖父のおかげで、人見知りをある程度克服できたのだ。それからは仕事の技術を磨く毎日を過ごしている。

だから祖父にはすごく感謝しているしいずれはこの工場を継ぐということが最高の恩返しだと俺は思って毎日仕事をしている。

「ふぅ、これで大丈夫かな!」汗だくでおれはいった。

「ご苦労」と祖父は水を差し出していた。

「ありがとう」と受けとる。

仕事終わったあとはいつも30分くらい二人はボーッとする。それがいつものことだった。

夜の少し温い風を感じながら1日を振り替える。そんな時間だった。

「装太はこの仕事をやって嫌なときはないか?」と祖父がいう。

「そんなことないよ」といきなり聞かれたので驚きながらもおれは答える。

「そうか。じゃあこの仕事をしてお前はみんなになにをしたい?」と祖父が聞く。

12歳の俺には難しい質問だったけど仕事で触れあった色々なお客さんを思い出す。

「笑顔を届けたいかな。」と恥ずかしがりながらおれはいう。

「なぜ?」と祖父が聞く。

「どの車もだけど1台、1台にお客様の思い入れがあるっていうか納車するときにみんなが笑顔でいてくれればなって思ってるよ。」と俺はいった。

「お前らしいな」と祖父が優しく笑う。

それから色々な話をした。

学校での友達のこと、仕事のことなど色々話した。

祖父は笑顔で全部聞いてくれた。

初めて祖父とちゃんと話をした日だった。


10年後

ブーブーブー

スマホのアラームがなっている。

それを止める。時計をみる。

「まだ7時か…」と一人言を呟き二度寝をしようとした時だった。

バタンッ!部屋のドアがすごい勢いで開きそれと同時に腹に激痛が走る。

「フグぅハッ!」

「兄さま!二度寝しちゃだめなのです!起きてください!」

「わかっ…た…から…」苦しみながら俺はいう。

この声の主は妹の桜だ。毎朝起こすという名目で腹にダイブしてくる悪魔だ。

「今日大事な日でしょ!スーツ準備しといたからはやく着替えて下さい!」と桜がいう。

「え?」

今日大事な用事があったかなと考える。

「今日は卒業式なのですよ!」と桜が怒鳴る。

「あー、そういえばそうだったね。」と着替えながら俺はいう。

「兄さま!今日は卒業式ですよ!」

「そういえば夏音さんも待ってるから早くしてください!」と桜がいう。

「わかったよ。すぐ支度して下にいくよ。」あくびをしながら俺はいう。

リビングでは夏音と桜が二人で朝食を取っていた。

「あっ おはよう!装くん!」と夏音がいう。

「おはよう」と返事をする。

「えっ それだけなの?他に何かないの?」夏音が何かいってほしそうな感じでいってくる。

「ねーよ。てか毎日あってるし同じ家で暮らしてるんだから特にないだろ」と呆れながら俺はいう。

「せっかく髪切ったのに気づかないなんて…」夏音がボソッという。

「なんかいったか?」と聞く。

「別になんでもないもん!」ぷいっと夏音がそっぽを向く。

不機嫌そうな顔をしているのは幼なじみの神崎夏音。髪はショートカットで名前の通り夏みたいな熱くてじめじめした性格をしている。今は専門大学校に通うために同じ家で暮らしている。

もう1人が菅凪桜。祖父の知り合いの娘で4歳の時に訳があってうちに引き取られてきた。すごく明るくて真面目ないい妹だ。専門大学校に入学する時に離れるのが嫌で転校してまでしてついてきた筋金入りの寂しがり屋だ。

「じゃあ、いこうか」

時計を見ながら装太がいう。

「おーけー!」と夏音が返事をする。

「行ってらっしゃいです!あとからおじいちゃんと一緒にいくです!」と桜がいう。

「わかった。じゃああとでね。」

そういって車に乗り込む。

学校に向かうときは基本的に車で向かう。バスや電車だと混むし部活などでよく使うので車で通学している。

学校には40分ほどでつく。

夏音は隣で寝ている。

「着いたよ」

優しく夏音を起こす。毎日のことだ。起きない夏音。

いつものことだ。

「着いたぞ」

少しだけ口調を強くして起こす。毎日のことだ。起きない夏音。いつものことだ。

「お姫様が目覚めるのは王子さまからの熱い熱い激アツな口づけだけ」夏音が呟くようにいう。

「何の夢みてるんだよ。先に行ってるね。」

全然気づかない装太。夏音からしてみればこれはいつものことだ。装太は人間関係はそれなりに上手くいく方だが恋愛とかそういうことにはかなり疎い。

「気づけよ、ばか…」

今日は卒業式だ。ということは最後だからといって女子どもは玉砕覚悟で装太に迫って来るだろう。

「負けてられない!今日は卒業式だからね!装くんは私の大事な人だから…今日が最後かもだから…しっかり伝えなきゃね…」


教室に着くと予想通り装太狙いの女子と男子で溢れかえっていた。装太は見た目が女の子っぽいいわゆる美男子なのだ。だから希に男子からも告白されたりする。

「あのこれ受け取ってください」

「これあたしの番号です」

「先輩!これ俺の気持ちです。卒業おめでとうございます!」

等々色々渡されている。困った顔の装太。助けを求めている顔だ。だがこの学校の生徒達のほとんどが装太を狙っているので誰も助けてくれない。

「朝から元気だねぇ」

不意に後ろから声がする。

「こんなときは俺様の出番かな☆」

そういって男は装太に近寄る。

高い慎重に整った顔、そしてちょっとヤンキーみたいな見た目をしている男。

そういって装太の取り巻きを追い払ってしまった。

「ありがとう。レン。助かったよ。」

装太はほっとした顔で礼をいう。

彼の名前は花村蓮。装太と夏音の幼なじみだ。装太と同じで結構モテるタイプの男だ。ただし男前な顔をしてるので男子からもというわけではない。あと夏音だけが知っている情報だが彼は両刀使いだ。

「礼には及ばんよ 装太のためだったらなんでもするさ」

と甘い声でいう。

「なんかあったときはいつでもいってくれ」

「装太になんかあったときはすぐにでもかけつけるよ」

女の子だったらこんなこと言われたら即堕ちるのだろうか。

「ははw そりゃ頼もしいわw」

が装太はあっさり受け流す。さすが鈍感人間は気づかない。

「あっ!夏音!早くおいでよ!」

装太が気づいて声をかける。

「先生が来るまでストモンやろ!」

「うん!」

装太はいつも優しい。いつどんな時でも笑ってくれる。いつどんな時でも見つけてくれた。絶対に裏切ったりするような男ではない。

それは装太の過去が深く関係しているのだが装太と話すようになってから話した瞬間から好きになってしまったんだと夏音は思う。

だから…絶対に…

「そういえばドラフトも今日だよね?」

装太が思い出したようにいう。

「それがどうした?」

蓮がなんでいきなりといった風にいう。

「そうだね…緊張するね…」

夏音は不安そうにいう。

「どうしたの夏音?」

装太は不安そうな夏音に声をかける。

「ただ、どんな会社にいくのかなーって」

就職先も一緒がいいなんて間違っても言えないと考えながら夏音がいう。

「大丈夫だよ。」

と装太がいう。

「さすが頂点の人間はいうことが違いますねぇ」

と蓮が少し維持悪くいう。

「そんなことないよ 俺だって不安くらいあるよ…」

装太が苦笑いしながらいう。

「例えばどんな?」

蓮がいう。

「んー、まぁ色々かな」

装太は苦笑いしながらいう。

絶対になにか隠してると夏音と蓮は直感した。

今の整備士の卵たちは全国で知識(自動車に関する)、技術(メカニックとしての)、対応力(接客、トラブル)の3項目の数値で全国ランキングが決まる。なので1~20位くらいまでの人間は大手メーカーに就職などもできる。ただし、自分からいくのではなく野球のドラフトのように企業から指名されるという方式になっているのだ。(装太は1位、夏音は4位、蓮は9位)

「じゃあ会場に移動してください」

係の生徒に指示され三人も移動を始めた。

長い卒業式が終わり、いよいよドラフトの時間が来た。

100をこえる企業の代表者たちがいる。


まず一周目。

佐々木装太の文字が並ぶ。

このドラフトシステム、就職試験がないぶん楽そうに見えるが逆をいうと自分が行きたいところに行けなかったり、成績がいいのに大手メーカーにいけなかったり、最悪呼ばれなかったりなどデメリットもたくさんあるのだ。

複数から声がかかった場合はくじ引きになる。

代表者たちが険しい顔してくじをひく。

全国ランキング1位ともなるとどこに行っても即戦力として使えるぐらいの技量がある。そんな人間をどの企業も見逃すわけがないのだ。

そして引いたのは共和工業という会社だった。

「決まってよかったー」

装太が安心したのかボソッと呟く。

そりゃ当然だろうとここにいる全員が思ったであろう。

1~5位まではほぼ全企業が声をかける。

が二週目にいきなり夏目が指名された。

指名したのは共和工業だった。

「へ?」

あっけなく決まってしまったせいか夏音は拍子ぬけといった感じで声を出した。

「やったね。夏音。また一緒だよ。」

装太は本当に嬉しそうな顔でいう。

「ほん と だ」

途切れとぎれながらも夏音はいう。

夏音は今にも泣きそうだった。嬉しすぎて。また装太と一緒に居ることができるということが夏音にとって1番嬉しいことだから。

(このまま邪魔が入らなければまた二人…)

「おっ また一緒じゃ~ん。」

蓮がいう。

「本当だ! やったね!」

装太はまた嬉しそうな顔をする。

「やったね!」

お前もかよ!と思いながらも夏音もいう。

いつもの面子が揃って同じ会社に入るのは心強いものがある。

そうしてドラフトはおわった。


家に帰ってからは祖父母が祝賀会を開いてくれた。

桜を寝かしつけてから装太は冷蔵庫からブラックコーヒーをとりだしベランダにでた。コーヒーをお供にタバコに火をつけた。

そしてこれまでのことこれからのことを考えた。

「ふぅ」

本当に色々あった。けど乗り越えてここまできた。だから乗り越えられない壁はないと思う。乗り越えられないと思った時にはきっとみんなが、夏音と蓮司が助けてくれる。だからおれも出来ることを頑張るだけだ。

「なんとかなるかぁ…」

そんなことを考えながら2本目に火をつけた。


装太がタバコを吸っているころ、夏音は寝つけないでいた。

明日は新しい場所に行くこと、上手くやっていけるかなとか考えて考えれば考えるほど緊張してしまっていた。

「夏音ちゃん。起きてるかい?」

装太の祖母の声だ。

「はい。起きてますよ。」

夏音は、返事をする。

「じゃあ、入るよ。」

装太の祖母が入ってきた。

「渡したいものがあってね。とても大事なものなんだよ。」

装太の祖母はいう。

「とても大事なもの?」

夏音が戸惑いながら聞き返す。

「そう。とても大事なもの。」

装太の祖母はそういって少しおおきめな箱を出してきた。

その少しおおきめな箱は少し古そうな箱だがきれいに保ってある。とても大事なものが入ってると一目でわかる箱だ。

箱を開けると大量の手紙や写真やアクセサリーがきれいに整理されて入っていた。

「これはね、装太と私の大事な思い出の箱なんだよ。」

祖母が今までのことを思い出すようにしゃべる。

「ここには装太からのプレゼントや思い出があるんだ。」

「装太がまだ小さい時の写真だったり初めて笑ったときの写真だったり、初任給で買ってくれたアクセサリーだったり、辛いときの手紙だったり…」

「全部が宝物なんだよ。」

祖母は嬉しそうな顔をしたり寂しそうな顔をしたりしながらしゃべる。

「そうなんですか。これも装くんなんですか?」

夏音は公園で1人で泣いている写真を取って祖母に聞く。

「そうだよ。その時の装太はいつも1人だったから泣くときも1人だったねぇ。絶対に弱い所を見せない小さい装太だよ。」

「こんな装くんはじめてみました。」

夏音は少し驚きながら写真を眺める。今まで泣いている装太のことをみたことがなかった。どんな時でも笑ってなんとかなるよと言っている装太がなくなんて想像できなかった。

「装太はねぇ、小さい時に色々あったのは知ってるね?だからうちに引き取られてきた。うちに来たときはもう心が壊れててね。笑いもせず、泣きもせずに、ずーっと無表情で常に精神の糸を張りっぱなしみたいな感じでね…」

「学校にも行かずに毎日この公園で1人で泣いてたんだよ。涙が枯れちゃうんじゃないかってくらいね。その時、私は思ったんだよ。この子を助けてあげたい。少しでも幸せを感じさせてあげたいってね。気づいた時には装太を抱き締めてた。装太はその時初めて弱さを見せてないたんだよ。おばあちゃん助けてって大声で泣いてぎゅっと私に引っ付いてきてね。」

祖母はまるで最近あったことのように話す。

「それから装太は私の誕生日やなにか記念になる日になるとプレゼントをくれるようになったんだよ。」

優しい笑みを浮かべながら祖母がいう。

「嬉しかったんだよ。装太が少しずつ心を治していけてるようでね。」

「でもそれは私1人じゃできないことなんだよ。おじいちゃんがいて私がいて、桜がいて、そして夏音ちゃん…あなたがいてくれたからなんだよ。」

祖母は泣きそうな顔でいう。

「装太を助けてくれてありがとう。装太と一緒にいてくれてありがとう。本当にありがとう。」

祖母は泣きながら夏音に礼をいう。

「そんな助けるだなんてことしてないですよ。むしろ助けてもらってるのは私でしたから。装くんがいて、おばあちゃんがいて、おじいちゃんがいて、私の家は両親が働いてるから学校が終わったらいつも1人で…」

「そんなときに装くんと出会って、おじいちゃん、おばあちゃんがいてみんなでご飯食べたり、お出かけしたりして、暖かい時間をくれてありがとうございます。」

夏音も泣きながらでも笑顔でいう。

「血の繋がりはないけど家族だと思ってます。」

夏音は泣きながらそれでも笑顔でそういって祖母に抱きついた。祖母は優しく夏音を包み込むように抱きしめそして頭を撫でながらいう。

「これからは楽しいことよりも辛いことの方が大きくなるかもしれない。でもどんな時でも楽しいことと笑顔を忘れちゃだめだよ。どうしても辛くなったときは、私に電話しなさい。私に会いに来なさい。何でも聞いてあげるから…」

「そして渡したいものなんだけどね。これをあげるわ。」

祖母はそういってピンクのシュシュを夏音の髪に結んだ。

「これは…?」

夏音は祖母に聞く。

「装太が小学生の時に私の誕生日に買ってくれたシュシュだよ。」

祖母が優しい声でいう。

「そんな大事なもの…いいんですか?」

夏音が戸惑いながら聞く。

「夏音ちゃん。 あなたに持っていて欲しいのよ。あなたは私の大事な娘なんだから。」

その言葉に夏音はまた泣き出す。

装太みたいに両親がいないわけじゃないが共働きで1人みたいな毎日を過ごしてきた。家に帰っても誰もいない家。冷蔵庫に入ってるご飯を暖めてから食べて寂しさを紛らわすためにテレビを大音量で付け一言もしゃべらない家。自分1人だけしかいない家。家族が触れ合うことが少ない家。寂しさしかない、寒い毎日に佐々木家は暖かさを温もりをくれた。

こんな人たちと家族になれたらな…と毎日思っていた。

こんな人たちと毎日居れたらな…と毎日思っていた。

理想の家族がいつも目の前にいた。自分には届かない理想の家族が目の前にいつもいた。

そんな理想の家族の1人として認められた。それは夏音の中で今までのどんなことよりも嬉しくて暖かいことだったのだ。

「これからも装太をよろしくお願いね。」

祖母が優しい声でいう。

「はい。こちらこそよろしくお願いします!」

夏音は元気に笑顔で返事をした。

それから装太の祖母と夏音はしばらく話し込んだ。今までの楽しかったことや辛かったこと、就職先の楽しみなこと、不安なこと、そして夏音の装太に対する気持ちのことそれにまったく気づかない装太のこと全て話した。

祖母は夏音を全力で応援すると約束してくれた。

二人の話は終わり祖母が部屋に戻り夏音は1人になった。


窓を開ける。桜が開花してるとはいえまだ3月。冷たい風が入ってくる。

「やっぱりまだ寒いなぁ。」

夜はあまり好きじゃない。賑やかにすごせる昼間と比べて静かだから。静かなところはあまり好きじゃない。

「この家でみんなですごすのも最後になるのかなぁ…」

そんな事を呟きながら辺りを見渡すと装太がベランダでタバコを吸っている。

「まだ起きてたんだ。」

夏音は窓を閉めてベランダに向かった。


ベランダでは装太がお気に入りのマイリスメドレーを聴いていた。仕事のモチベーションを上げたり、勉強に集中するためだったり、気分を切り替えるためだったり、とにかく音楽に歌にはすごい助けられてた。

時々思うことが装太にはあった。自分は何をしたいんだろう…。何をすればいいんだろう…。考えても全くわからない。だから今できる最善の事を一生懸命頑張ってきた。

そしてもう1つ考えることがある。

「お母さん…」

母親の事だ。今の俺を見たら母親はなんて言うだろう。笑ってくれるだろうか。それとも怒るだろうか。それは本人しかわからない。

ただ…喜んで応援してくれてればいいな…

そうだとしたら嬉しいな。もういない母親を探すように星空を眺める。


ベランダの入り口の窓の前で夏音は装太の後ろ姿を見ていた。

装太のお気に入りの場所。なので、装太のお気に入りグッズが置いてある。二人は余裕で包める夏は涼しく、冬は暖かいという魔法のような毛布。人を駄目にするというクッション。音楽プレーヤーの充電器。雨に濡れても大丈夫な用にカバーがしてある何冊かの小説。どれも装太のお気に入り。

装太はクッションにもたれ掛かってる。傍らにはブラックコーヒーの空き缶が2本転がっていた。

「夜は飲むなっていわれてるのに…」

夏音は呆れながらベランダに入る。装太は気づかない。大音量でお気に入りのメドレーを聴いてるのだろう。

気づかなくても別に気にならなかった。装太はいつも夢中になっていると他のことなんて気にしない性格だから。

「どうしたの?」

不意に声をかけられて驚く夏音。

「気づくなんて珍しいね。なんか変なのでも食べたの?」

夏音は笑いながら言う。

「失礼な!隣に人が来て気づかない馬鹿はいないでしょ?」

片耳だけイヤホンを外して装太がいう。

「ははっ。」

「ふふっ。」

二人は笑う。こんなことで二人は笑う。

「いつも気づかないくせに。」

「気づいてないふりしてるだけ。」

「嘘つきー」

「嘘じゃないよ」

そんなやりとりをする。いつも通りの最後の夜。二人だけで会話できる最後の夜。

夏音は不安と寂しさでいっぱいだった。だからこそいつも通りの夜をすごしたいと思った。だから平然を装う。

「いつもなに聴いてるの?」

夏音が気になって装太に聞く。

「ボカロ…とかかな…」

装太がいう。装太はある動画投稿サイトが大好きだ。毎日かかさず見ているくらい好きだ。そのなかで良い曲を見つけては聴いてるといっていた。

「てか、風邪ひくよ」

装太がお気に入りの毛布をかけてきた。装太のお気に入りの石鹸の匂い(少しタバコの匂いもする)がする毛布。

「ありがと」

こういう装太の何気ない優しさがすごく好きだ。普段から優しいが一緒に暮らし始めてからさらに装太の優しさに触れたと思う。

「聴く?」

装太がイヤホンの片方を差し出していた。

「うん」

夏音はそういってイヤホンを受け取って耳につける。他の人が見たらカップルに見えたりするのかな。そんな事思いながら装太のお気に入りマイリスメドレーを聴く。

「良い曲だね。」

素直に思った事を夏音はいう。ボカロのクオリティを舐めていたので正直驚いた。歌詞もメロディーもプロのクオリティのレベルだった。

「でしょ!すごいよね!プロ顔負けって感じでさ!」

装太が興奮ぎみにいう。

「それで…どうしたの?なにか不安なの?」

装太が聞く。優しく聞く。

「うん。ちょっとね。」

夏音がいう。ちょっとどころではない、とんでもなく不安だ。

「初めての就職で新しい土地に行くって思ったら不安で…」

「だからあたしにちょっぴり勇気を下さい。」

夏音はそういって装太の肩に自分の頭を乗せる。

「えっ?ま まぁいいけど…」

装太は恥ずかしそうに顔を赤くしながらいった。

「じゃあ、俺も…」

そういうと装太も夏音の頭に自分の頭を乗せた。

「どうぞ」

夏音は緊張しながらもなんとか平然を装いながらいった。そして同時に装太が震えてる事に気づいた。

「装くんは寒くないの?寒かったらどうぞ…」

夏音は顔を赤くしていった。

「じゃあ、遠慮なく」

装太はそういって夏音と一緒に毛布にくるまった。

予想外の反応に夏音はどきどきしていた。心臓が爆発してしまいそうだった。

「夏音…あったかい…。」

装太はまるで子供みたいな甘えた声で話す。こんな装太は久しぶりだ。装太の甘えん坊モードは滅多にでないが出たときの破壊力抜群なのだ。可愛くて可愛くて仕方ない。恐らく世の中の女性はこれでイチコロだろう。でも…誰にも見せない。装太が夏音にしか見せない、夏音を信頼してるという証拠でもある。

「装くんもちょっぴりひんやりして気持ちいいよ。」

夏音は照れながら言う。最後の夜にこんなサプライズがあるなんて…。夏音はすごく嬉しかった。最後の夜に距離を縮めた気がして。

ずっとずっとずっとこの時間が続けばいいのに…。

「でも、今日で最後だね…一緒に暮らすのも。」

夏音は涙を堪えながら言う。そう…、この家でみんなで暮らすのは最後なのだ。泣いても笑っても就職先が一緒でも一緒に暮らすのは今日が最後…。

「そんなの…嫌だ」

装太はそういって夏音を毛布の中で抱きしめる。

「そ 装くん?!」

装太の突然の行動に驚く夏音。装太の声が息がすごく近くで聞こえる。装太のひんやりとした体温が夏音に伝わる。

「夏音がいないと…嫌なんだ…夏音と一緒じゃないと…意味が無いんだ…今までもこれからも!」

装太はさらに強く夏音を抱きしめる。

「私も装くんと一緒が居たい…!」

夏音も装太を抱き返す。夏音は心の中に溢れだした思いを止められず泣いていた。ずっとずっとずっと装太を思っていた。やっと届いた。そんな気がした。

装太もずっと言い出せなかった。ずっと気づいてない振りをしていた。夏音はずっとからかってるのかと思った事もあった。学校でも他の男と話してるのは見てるだけで嫌だった。でも逆の立場で考えると夏音もかなり嫌な思いをしていたんだと思った。離ればなれなんて嫌だ!絶対に嫌だ!



だから、今、言わなきゃ駄目なんだ!と装太は思った。


「夏音。」

装太は夏音の顔をしっかり見て言う。

「装太くん。」

夏音もまたしっかり装太の顔を見て言う。

装太の心臓がどくどくいっている。夏音に聞こえるんじゃないかってぐらいどくどくしている。

「俺は…ずっと…夏音…のこと…が…す…」

装太は途切れ途切れに声を震わせて気持ちを伝えようとする。

「す…?」

夏音はその後の言葉を待った。そのあとのあと一文字を待った。

その時ベランダの入り口が開く。

「ふぁう!」

装太と夏音が同時に驚きの声をあげる。

「兄さまぁ、こんな寒いところでなにしてるです?」

ベランダに来たのは桜だった。

「いや別に…タバコ吸ってただけだよ。」

装太はあたふたしながら答える。

「こんなとこでこぉんにゃこぉとしぃてぁうと」

桜はあくびをしながら喋る。

「何を言ってるか分からないよ。桜。」

装太は呆れながら言う。

「だからこんなとこにいたら風邪ひいてしまいますよ。」

「というかですね。今日は一緒に寝てくれると約束しましたよね?

桜は思い出したと言う感じで装太に聞く。

「そうだったけ?」

装太はとぼける。

「そうですよ!約束守らないとどうなるか分かってますよね?」

桜は脅しをかけるように装太に言う。

「…分かったよ」

脅しをかけられ装太はあっさり降参した。

「分かればいいんですよ!あっ!せっかくだし夏音さんもどうです?」

桜は時々とんでもないことをいう。

「な 夏音は関係ないだろ!」

装太は慌てて言う。

「ぜひ!」

夏音は即答した。

「な 夏音さん?」

装太はまじまじと夏音を見た。

「ぜひ!」

夏音は再び言う。

「いや、あのさ…こういう…」

「ぜひ!」

三度同じ返事をする夏音。装太の言葉を遮るように返事をする。

「…はぁ、分かったよ。今日は3人で寝よう。」

装太は諦めたように言う。

「やったー!3人で寝るなんて久しぶりです!」

桜は子供みたいに喜ぶ!

「ごめんね!無理いって!」

夏音は満面の笑みで悪ぶれる様子もなく装太に詫びる。

「いいよ…別に…」

装太は諦めたような疲れたような顔で答える。

「とにかく明日は会社説明会と次の住む家探しがあるから早く寝ような。あと、じいちゃんの知り合いにも、会いに行くから。」

装太はそう言って二人をつれて寝室に向かった。









登場人物紹介1(分かりづらいと思ったので書かせていただきます。)


佐々木装太

この話の主人公。女の子みたいな顔立ちをしていて美男子。髪は長くて左目が髪の毛で隠れている。

過去にトラブルがあり祖父に引き取られ、その時に板金塗装の仕事、技術を身につける。

アニメ、ゲーム、小説、マンガが好きで新作が出ると部屋から出てこなくなる。アニメの影響で空手や剣道など、様々な種類の道場に通った時期がある。

バンドをやっていた時がありギターボーカル担当だった。

自分用の簡易塗装場を作り上げ個人で安く修理を請け負ったりする。


性格

基本的に優しい。怒ると怖い。信頼してる人にはとことん甘え尽くす甘えん坊な一面もある。泣き虫。ギャンブル大好き。

好き

ゲーム、アニメ、小説(ラノベとホラーが特に好き)、タバコ、音楽。睡眠。カラオケ。犬。猫。

嫌い

虫。朝。人混み。


神崎夏音

装太の幼なじみ。小学生の時に装太と知り合う。知り合う前から装太のことは知っていた。ほぼ一目惚れ。装太とずっと一緒に居たいと思っている。

髪形は基本的にショートカットだが気分で伸ばしたりもする。

装太の個人で請け負った修理の手伝いをしたりもする。

装太の隣に立つに相応しい女になるための努力は惜しまない。

性格

明るく元気。失敗や悩みをずるずる引きずるタイプ。一人でいるのが嫌な寂しがり屋。


好き

装太 。甘い物。料理。ゲーム(装太の影響)。カラオケ。ショッピング。

嫌い

一人の時間。寒い所。装太を狙う女ども。


菅凪桜

装太の義理の妹。女子高生。 可愛い顔立ちでモテる。父親が日本人で母親がイギリス人のハーフ。髪は金髪でツインテール。装太とは年が3つ離れている。頭がよく将来は何かの経営をしたいと思っている。装太と仲良くなりたいという一心でゲーム、アニメ、ラノベに手を出すがどっぷりと浸かってしまいオタクになる。アニメやゲームの影響でコロコロ口調が変わる。装太の誰にも言えない秘密を握っているので装太は逆らえない。

性格

面倒見が良い。わがまま。寂しがり屋。

好き

装太。ゲーム。アニメ。ラノベ。マンガ。ネットサーフィン。

嫌い

1人。野菜。運動。


花村蓮

装太とは小学校の時から一緒。高身長で整った顔でモテる。中学生の時に初めて装太と話す。バリバリのヤンキーで喧嘩が強い。気が利く性格をしており、装太の良いパートナー。装太の個人的な請け負い修理のパーツ注文や見積りを手伝っている。二刀流で男もイケる。

性格

チャラい。冷静。おしゃれ。

好き

筋トレ。ファッション。タバコ。パチンコ。麻雀。スポーツ。カラオケ。ドライブ。

嫌い

真面目な奴。 馴れ馴れしい奴。










読んで頂きありがとうございます。

1話では全く板金塗装のことについて触れてなくて申し訳ございません。

次からしっかりと板金塗装のことや話が進む予定なのでまた次も読んで頂けたら嬉しいです。

コメントしてくれたら嬉しいです。


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