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幼なじみな二人

実に5、6年ぶりに起動。

昔書いたものを少し書き直して投稿してみます。

「あと何分…」


「あと10分くらい?」


「さっきあと5分って言ったじゃん!!」


二つの影法師が小さな公園の砂場に伸びていた。


「拓也!あんたずっと砂場でなにしてんのよ!」


じっと静かに砂を見つめている幼馴染の拓也に若干イライラしながら真由美は尋ねた。


「…砂時計の砂を集めてるんだ」


「はっ?砂時計?そんなのどうすんのよ」


「砂時計ってさ…砂が落ちて行くことで自分の中の溜まったものまで落ちて行くように感じるんだ。それを自分で作って見たくなったんだ」


「はぁ?そんなの買えばいいじゃん」


「ダメなんだ。これは俺が作らないといけないんだ」


拓也はそう言ってまたじっと砂を見つめた。


「でも、さっきからそうやって砂を見つめてるだけで集めてないじゃん!」


「いいや、ちゃんと集まってるよ」


夕日が沈んで影法師も消えてしまった頃。不意に拓也は顔を上げ、立ち上がった。


「やっと終わった?」


「うん、砂を集めるのはね」


「まだなにかあるの?!」


「これから完成した砂時計を取りに行くんだよ」


そう言って拓也は歩き出した。


「取りに行くってどこに?もう遅いよ?!」


「じゃあ先に帰ってていいよ」


「…!あんたが心配だから私もいくわよ!」


拓也は公園を出て右に曲がったかと思うと、すぐに次の角で曲がったりと、不思議な道を歩いていた。進んでいくと、見慣れない店の並んでいる寂れた商店街へと出た。


「ねえ、こんな場所近くにあったっけ…?」


「あったよ、ずっと昔からね」


道の端には丈の長い草が生えていたし、どの店も明かりはついていたが、商売をしているという雰囲気はない。ただぼんやりとした明かりをともしているだけのように感じた。中の様子をみようとしても、窓にぼやけるようにモヤがかかって店内が見えない。まるでお前たちは入る必要がない、と言われているような感じだった。

その中で一つだけ様子の違う店があった。橙色の砂時計の看板が掲げてあり、そこにはヨーロッパの言葉のようなよく分からない文字が書いてあった。

拓也はほかの店になどはいる気もないようで、まっすぐその店に入っていった。突然のことで困惑していた真由美も、急いで後をおった。


「いらっしゃい」


中にはいると、店の奥に少し目つきの鋭い中年の男が座っていた。目つきは悪いが嫌な雰囲気はなく、むしろ暖かい感じがして真由美は一気に緊張が解けてしまった。店内は少し薄暗く、いろいろな大きさの砂時計が置いてあり、一つ一つ全く別の形や色の違う砂の入った時計が所狭しと並んでいた。


「筧さん、ちゃんと砂は集まってますかね」


「あぁ、この前のやつだね。ちょっと待っててくれ」


そう言って後ろの暖簾をくぐりさらり奥へと入って行った。


「ここって砂時計を売ってるお店なの?」


「そうだなあ…砂時計自体というより。その人の貯めた思いを砂時計にして売ってるんだよ」


「でも、砂時計でどうやって気持ちなんて流せるのよ」


「それは使ってみればわかるさ」


拓也はいつもこうやって曖昧な返事しかしない。小さい頃から何を考えているのかも分からず。真由美は拓也のそういうところが嫌いではなかったが、煮え切らない感じがして少し嫌だった。


「さあこれだ」


そう言って筧が持ってきたのは手のひらくらいの小さな砂時計だった。至ってシンプルな作りではあったが中に入っている砂はうっすらとした翡翠の色をしていた。砂時計の薄い橙色がそれを引き立て真由美はその美しさに少しだけ見惚れてしまった。


「今回もいい色だ…君ほど綺麗な色の砂時計を作る子もいないよ」


「今日のは特別ですから」


「そうかい…君の思いが時間と共にゆっくり流れて行きますように」


そう言葉を交わすと拓也はさっさと店を出てしまった。真由美も慌ててついて行こうとした。


「お嬢さん、君もなにか込めたい思いがあるときはここにおいで。込めたい思いがある人間ならいつでもここにくることができる」


「え、あ……はい」


そんな簡単な返事しかできなかったが真由美はいつかまたここにきたいと思った。


あの少し不気味な商店街を出てまた歩いていくとすぐに見慣れた場所に出た。行きより短い時間で帰ってきたような気もする。

拓也は手に持った砂時計を大事に握り見つめていた。砂時計の砂は


「ねえ、それにはどんな思いが込められてるの?」


「秘密…」


「えー!教えてくれたっていいじゃん!」


「じゃあ自分で確かめて見なよ」


拓也は無表情で手に持っていた砂時計を真由美の手に押し付けた。


「え?でもこれはあんたのでしょ?」


「いいよ、真由美にあげる」


いつもの拓也とは違う有無を言わせない態度に真由美は、はっきりと砂時計を断ることができなかった。渋々砂時計をもらい帰り道を歩いた。いつもより会話がぎこちなくなってしまった。いや、いつもぼんやりしていた拓也との会話はいつもつかみ所がなかった。いつも通りだったのかもしれない。

拓也とは途中で分かれ、家に帰った。自分の机の上に置き、改めて砂時計を観察した。店は薄暗かったのでよく見えなかったがこうしてみると、一粒一粒が輝いているように見えた。ずっと握っていたため砂時計は少し温かかった。


「どんな思いが込められてるんだろう」


気になって仕方がなかったが何故か不安に思い、中々砂時計をひっくり返すことができなかった。


「あいつの気持ちか…」


 拓也はは昔、両親の仲が悪く喧嘩ばかりする中で育った。しかし、本人はそれをどう思ってるのか彼の表情からは全く読めなかった。

 幼馴染としてはそれが心配で、よくお節介なことまでよくした。だが、拓也はそれを嫌がらなかった。そして拓也が小学4年生の時、拓也の両親は離婚して、今はお母さんと二人暮らしだ。その時も、拓也はなにを考えているのか分からなかった。両親が離婚して悲しんでいるのでも、喧嘩する姿をもう見なくてすむと安心するようでもなく、ただ拓也はまっすぐ前を見ていた。周りからは冷めた子供だとか無感情だとか言われていたが、真由美は拓也が実は表に出してないだけで内に秘めた思いがあるのではないかと思っていた。だからこそ、気持ちを見るのが怖かった。

しかし、気づくと真由美は砂時計をひっくり返していた。


普通の砂時計とは違い、心なしかゆっくりと落ちて行っているように感じた。

普通の砂時計の砂が落ちる早さは、正直早いと感じていた真由美にはちょうど良く思え、じっくりと砂時計を眺めることが出来た。

その様子は、砂が落ちるというよりも翡翠の光がゆっくりと落ちて行くようにも見えた。その光はまるで真由美に語りかけるかのように温かく、心に染みていった。その温かさが真由美を包み込み、いつしか真由美の瞼は閉じていた。

夢の中に拓也が出てきた。拓也はじっと真由美を見つめ、少し微笑んだ。口を少し動かし、何か言いたげだったが一向になにかをいう気配はなかった。


「もう!はっきりしなさいよ!どうしてあんたはいつもそうなのよ!」


真由美にそう言われ少し困ったように笑ったが小さく「ありがとう」と言ったように聞こえた。そこで目が覚めてしまった。

気づくともう朝で、砂時計は目の前からなくなってしまっていた。


「ありがとう…ね…。もっと他にいうこと…あったんじゃないの…?相変わらずなんだから…」


そういいつつも真由美の顔は笑っていた。


「…私も…ありがとう…」


あまり小説とか書いたことないのでまとまりのないとこもありましたが話の雰囲気は気に入ってますw

似たような作品をあともう少し書く予定。

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