旦那様はホモの人だけど私は全力で応援します!
短編第1号です
「フィリオーネ...君の間違いを正してあげないとね」
壁ドンならぬベッドドンをされている私。しているのは旦那様である。はて、何故こうなった?
あ、初めまして。私はフィリオーネ・フランベルジュ16歳、旧姓はフィリオーネ・アラベスクです。フランベルジュ公爵家現当主のリードヴィッヒ・フランベルジュ21歳の正妻やってます。
まずは私の説明からしないといけないですね。実は私、前世の記憶があるんです。前世の私は日本人で確かOLやってましたね。それで確か交通事故に遭って気がついたらフィリオーネとして生を受けてました。それを思い出したのは3歳くらいで、まあ前世の記憶をまったく生かさず16歳まで生きてきました。
そんなある日、お父様から唐突に言われたの。『フランベルジュ公爵とお見合いだよ』...なんて軽いのでしょうか。てかフランベルジュって誰だよと。屋敷の中では活発な引きこもりな私はそういう話にはまったくもって疎い。だから名前言われても顔なんて分かるわけないのですよ。はは...お見合いかぁ...面倒だなぁ、独身貫いちゃ駄目かしら。
地味な抵抗をしてみたけど時間は勝手に流れるのね...あっという間にお見合い当日よ。侍女達に好きに弄られ、見た目だけは美しい侯爵令嬢になった私は、半ば引き摺られるように応接室へ連れていかれました。
「旦那様、お嬢様をお連れしました」
「ありがとう。さあフィリオーネ、此方へ」
「はい」
嫌々行きましたよ。顔には出しませんよ?女優並みの演技力だと誉めてほしいわ!それにしても、私のような引きこもりを妻になんてどんな男だ?
「フィリオーネ嬢、初めまして。フランベルジュ家当主のリードヴィッヒ・フランベルジュです」
「初めまして。フィリオーネ・アラベスクです」
うわぁ...超美形なんですけど!
「お噂通り、フィリオーネ嬢は大変お美しいですね。花の妖精かと思いました」
いやいや、貴方のほうが美しいですよ。180㎝はあるだろう身長、金髪碧眼の笑顔が似合う王子様。キラキラ光って見えるのは錯覚だよね?
リードヴィッヒ様が私を誉めちぎりお父様が謙遜するの繰り返し...私、最初の初めましてから喋ってないわぁ...魂飛ばしてたら話はトントン拍子に進んでいたらしく、私リードヴィッヒ様に嫁ぐこと確定らしいです。
うーん...何故私?会ったのだってこの前が初めてだし会話だってしてないし...リードヴィッヒ様ほどの人ならもっと家柄も良く綺麗な人と結婚できるのに。
うんうんと唸りながらいつの間にか裏庭まで来ていました。おっといけね、と頭こっつんしながら戻ろうとした時、誰かの話し声が聞こえてきた。誰だろうと覗いてみるとそこにいたのはリードヴィッヒ様とお兄様。実は2人、友人らしいんです。知らなかったぁ...だって引きこもりだから!
まあ友人なら一緒にいるのも納得だけどなんで裏庭?なにか聞かれたくない話でもしているのかしら。そう思っている私の考えは次の瞬間、見事当たることになる。
「好きだよ。いや、好きじゃ足りないな...愛してる」
「そ、そうか...」
ぽっと頬を紅くするお兄様。これってもしかして...もしかしなくても...BLですか!!!普通なら嫌悪するんでしょうが前世腐っていた私は寧ろありがとう神様状態。生の、しかも美形のBLが間近で見られるなんて...至福極まりない!
はっ!ここでやっとリードヴィッヒ様が私を選んだ理由が分かりました!私と結婚するということはつまりお兄様と縁者になるということ。2人きりで隠れて会っていても縁者だからと怪しまれない。つまりいつでもいちゃこらし放題!!私は隠れ蓑なのですね!!いいでしょう、やりましょう隠れ蓑!2人の愛の為に、私の萌えの為に、立派な正妻になりましょう!!!
「汝、フィリオーネを妻とし、永遠の愛を誓いますか?」
「我がフランベルジュの名にかけて誓います」
「汝、リードヴィッヒを夫とし、永遠の愛を誓いますか?」
「私、フィリオーネの名にかけて(リードヴィッヒ様とお兄様の麗しき愛を見守ることを)誓います」
こうして私は、名ばかりの妻になったわけです。
「フィリオーネ、大丈夫か?」
「ええ、少し気分が優れなくて...私は部屋で休むのでリードヴィッヒ様はお兄様とお話なさっては?」
「なぜ具合の悪い妻を置いてあいつと話さなければならないのだ?」
それは怪しまれず愛し合えるという私の配慮ですよ。話すイコール愛し合うですよ。うふふ
「ほら、ただ寝ているだけの私のそばにいてもつまらないじゃないですか」
「そんなことはないよ。今日は俺達が結婚して初めての夜だ。なにもせずともこうやって語らうのもいい」
「でも...」
それじゃいつ2人のいちゃらぶを見ればいいのさ!
「フィリオーネ、君はやたら俺にあいつと一緒にいることを強要するね。なにを企んでいるんだ?」
「企んでなどいませんわ!私は2人の愛のお手伝いを...」
しまった!自らバラしてどーすんじゃー!!!急いで口を塞いだけど最早遅い。ほとんど喋っちゃってるから!
「フィリオーネ?その話、詳しく聞かせてくれるかな?」
「は、はひ...!」
怖いです!笑ってるけど目が笑ってないんだもん!命の危機を感じて私は全部、なにからなにまで話しました。
「それで、フィリオーネは日陰の女として生きるつもりだったわけ?」
「勿論です!愛し合う2人の仲を裂くなんとこと、絶対しませんから!そんなやつは馬に蹴られて死んでしまえです!」
「あーもういいから。まず根本が違うんだよフィリオーネ。俺と君の兄はそんな関係じゃない」
私の横に腰を降ろしたリードヴィッヒ様はふかーく溜息をついてジロリと私を睨んだ。
「でも私は確かに聞きました。リードヴィッヒ様がお兄様に好きだと...愛していると仰っていたのを」
「それはいつのこと?」
「確か...結婚式の前々日で、場所はアラベスク家の裏庭です」
私がそう言うと目を閉じて記憶を辿り始めました。数秒後、あ、と声をあげて項垂れていました。
「あれか...聞かれていたんだな」
「ええ、だから私は...」
協力を、と言おうとした瞬間ガッチリ肩を掴まれました。
「それはあいつにじゃない。君のことだフィリオーネ」
「ふへ?」
なぜそこで私が出てくるんです?まったく意味がわからず首を傾げると再び深い溜息。
「俺は初めから君を好きだった。一目惚れというやつかな。君の瞳を見た瞬間に俺の心は君に囚われたんだよ。君が聞いたのは俺の言葉だけなんだろ?その前にあいつに言われたのは『本当にフィリオーネと結婚するつもりか?好きでないなら考え直してくれ』だ。あいつはどうやらシスコンみたいだ。君が嫁いでしまうのが寂しかったらしい」
「お兄様...」
だからやけに私に絡んできたのか。若干鬱陶しく感じましたよ。
「君が聞いたのはその答えだ」
「そうなのですか...」
リードヴィッヒ様が私を?一目惚れねぇ...2次元にしか興味なかった私には生身の恋がよく分からない。好きだと面と向かって言われてもピンとこないのだ。リードヴィッヒ様は2次元並みの美形なんだけどね。
「じゃあリードヴィッヒ様は男色じゃないんですね」
「そうだね」
「男色じゃなくてもお兄様だけ好きとか、じゃないんですね」
「フィリオーネ...君の間違いを正してあげないとね」
んでここで冒頭に戻るわけです。
「正す?えっと...それはどうやって?」
なんとなく身の危険を感じた私はリードヴィッヒ様から離れる。大きなベッドの上をずりずり後退しながらひきつった笑顔を向けると、リードヴィッヒ様はシャツのボタンを外しながら私に近づいてきた。
「どうやって?決まってるじゃないか。君のその体に、たっぷりと俺の愛を注いであげるよ。2度と変なことを考えないようにね」
「ひぃっ!」
獲物を狙う鷹のような鋭い視線を向けられて悲鳴をあげそうになった私は悪くないはず。
「さあフィリオーネ、今夜からたっぷり愛してあげるから覚悟しておくんだね」
リードヴィッヒ様の宣言通り、私はその夜から毎晩彼に愛されました。そしてすぐにそれは形となって私のお腹に宿りました。ええ妊娠したんですよ。10カ月後にはお母さんですよ。
「これで俺がどれほど君を愛しているか分かっただろう?」
「はい...もう十分思い知りました」
私のお腹に優しく手を触れるリードヴィッヒ様はとても嬉しそうで、これはこれでありかなとか思ってしまいました。
「この子が産まれたら、また頑張ろうね?最低3人は欲しいから」
「げっ」
このあと私は5人の子を産むことになり、愛する旦那様と子供達に囲まれ幸せに暮らすのでした。
転生、貴族、主人公が腐っているを掛け合わせたらこんなんになってしまった。