プロローグ
「はぁ、倦怠だ」
そう呟くはとある公立高校に通う二年生男子生徒。
名前は水間理篇。
親の職業は理学療法士。
兄弟はいない。
彼のスペックを並べて分かりやすく説明するとこうなる。上記の通り、彼は生粋の一般人であり、それは当たり前でもあった。
そんな理篇は今、彼の通う高校の始業式に向かっている途中であった。
「またこの日が来ちまったか……」
そう一人で呟く理篇の顔はまるで罪の無い人間に自分の罪を着せてしまった張本人のような、そんなやるせない感マックスな状態である。
「クラス替えか…まあ、大体悲惨な結果になることは何十年もの経験上、嫌という程わかりきったことだがそれでも…」
理篇はそれ以上は何も言わなかった。
いや、言えなかったのだ。
なぜか?それは至極単純なことである。
それを言ったところで運命に逆らい、新たな道を開くことなど出来ないとこれも経験上、嫌という程わかっているからである。
たしかに誰でも新生活というものには慣れるのが難しいかもしれない。それでもなんだかんだ言って、時間という名の悠久の流れがそんなことは解決してくれるものである。
(時と場合によるが…)
ようするに、誰でも最初は緊張するものであり、彼のように親の仇といわんばかりに力まなくてもなんの心配もないのだ。
しかし理篇には、それでも安心することの出来ない『規定事項』を抱えてしまっているのである。
「わかってるんだ、もういいんだ。だが、全ての望みが絶たれたわけじゃねえ。また今年もあるはずだ。そうだよな、神様!」
一人言にしては声が大きすぎたのか、隣に座っていた年齢約七十歳のお婆さんが痛い眼差しで理篇を見ていたのはさておき、彼の言うその望みとは一体なんなのか。
それはきっと運命だった。