罪の産物
____街外れの古びた公園。
そのベンチに寝転がる少年。
荒い息遣いだけが静かな夜に響く。
「…っ…この機械……結構、重い…」
真横に置かれた筒状の容れ物を軽く叩く露綺。
乱れた息を落ち着かせ、そっと中のものを覗いた。
ビクリと肩を震わせ、水色の瞳が不安気に揺れる。
「…何もしねぇよ」
その言葉で妖精の表情が徐々に柔らいでいく。
露綺は小さく笑う。
「今出してやる」
そう言って、筒状の機械に手を伸ばした時だった。
(…なんだ、この感じ。)
ザワザワと妙な風が吹いた。
(空気が揺れてる?いや、違う…空気の流れが変わった。)
「っ!?」
妖精の容れられた機械を抱え、露綺は咄嗟にベンチから飛び退く。
___スパン!!
突如、音が響いた。
音のした方に自然と顔を向ける露綺。
「………ベンチが…」
真っ二つに割れたベンチを見て唖然とする。
体中に電気が走るような感覚がした。
自分の全細胞が危険だと叫んでいる。
周囲に警戒しながら、妖精を守るように筒状の機械を抱きしめる。
(……何処だ…、絶対何かいるだろ…。)
冷や汗が首筋を伝う。
(…ただの人にこんな事出来るか?)
頭を回転させるが答えに行き着かない。
機械を抱きしめる腕に微かな振動を感じる。
妖精に視線をやると必死で何かを訴えかけているように見えた。
「え?…何?」
妖精はその小さな指を頭上に向けている。
「……っ…上かよ!?」
露綺は妖精が指す空へ視線をうつす。
「なっ…」
言葉にならない声が漏れた。
(なんだこの生き物…。)
公園のランプに照らされるそれ。
人間の骨格に鳥のような翼、全身を毛で覆われた奇妙な生き物。
グルル、と喉を鳴らす様は気味が悪い。
その生き物は耳を劈く奇声と共に、露綺へと向かってきた。
間一髪で避けるも、それは目と鼻の先にいる。
「…ゔ、ゔあぁぁぁぁあっ!!」
機械じみた動きで首だけを露綺に向け低い唸り声をあげる生き物。
垂れ流したままの唾液がポタリと地面に落ちる。
直ぐさま、その得体の知れないものと距離を取る露綺。
「な、んだよ…この生き物……」
「……研究者達の罪の産物“ソロー”」
立ち尽くす露綺の隣でポソリ誰かが呟く。
視線だけを横にずらすと、蜂蜜色の髪が視界に映った。
「お前…」
「走れますか?」
そう尋ねると同時に、少女は露綺の手を握る。
「絶対、その子を落とさないで下さいね」
「え?その子…って、おい!?」
露綺の言葉を遮るように走りだした少女。
小さな身体には不似合いな少女の足の速さに驚く露綺。
(こいつ、本当に何者なんだ…。)
街灯のない真っ暗闇の路地を迷うことなく進んでいく少女。