鳴らない電話
なかなか帰ってこない恋人を待つ、とある夜の春都の独白?
耳が痛くなるほど静かな部屋の中で。
私はじーっと、テーブルの上に置かれた携帯を見ていた。
時刻はもうすぐ零時を指す。
明日も授業があるから本当は寝ていなくちゃいけない時間。
でも、私は着替えもせず、布団も敷かず、ただ膝を抱えて携帯を見ている。
注意する人なんていない。
だって
今は私しかいないから。
「……ひょうがの、ばぁか」
ぼそり、と思わず呟きが零れた。
“今日は肉じゃがを作ったの!!”
“へぇ! すごいね! じゃあ今日は早く帰るね。”
“うん、でも無茶はしないでね”
“わかってる”
そう、メールでやり取りしたのはもう、6時間ほど前。
用事があるとは聞いていた。
でも、メールの内容からそんなにかからないって思ってた。
…早く帰る、そう書いてあったし。
それなのに。
「……もう、日付変わったんですけどー…」
時計は零時を少し過ぎて、もう日付が変わっていた。
「……コーヒー、のも」
襲ってくる眠気に対抗するため、立ち上がりコーヒーを淹れにキッチンへ向かう。
昔は苦くて飲めなったブラックも今ではそれなりに飲めるようになった。
一口飲む……うん、やっぱり苦い。
「にがい、なぁ………」
やっぱり甘いほうが好きだな~……。
“無理して飲まなくていいんだよ?”
苦笑交じりの彼の台詞が頭の中で響く。
「……ふぇっ」
唐突に溢れてくる涙。
どうやら、ここが私の限界だったようだ。
「っ……うっ……ぅあっ……」
コーヒーカップの中に落ちていく涙の粒。
あーあー。しょっぱくなるなぁ。
なんて頭の隅はどこか冷静で。
でも、溢れる涙と声にならない叫びは止まらなかった。
豹牙(jb2823)が傍に居ない寂しさ。
無事か分らない不安。
なにかあったのではないかと恐怖に駆られて。
ただ待つことしか出来ない自分の無力さに嘆いた。
ずるずると膝から落ちていって。
コーヒーにいくつも波紋を広げた。
(不安と恐怖で眠れない夜)
(翌日の朝。血だらけで帰ってきた彼に「どうしたの?!」って聞かれたので、
迷わずアッパーを食らわせた私は絶対に悪くないと思う)
今回はシリアス?目に書いたつもり……。連絡がとれないもどかしさと不安とちょっとした怒りと……ある歌を聞いて思いつきました。