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出会いました



学校に戻ってから、特に何もなく日が過ぎていく。


アキも毎日じゃないけど来てくれるし、クウもいる。


ソルドもたまに来てくれるし、前よりも寂しくない。


前は一日で寂しさに押し潰されたけど、言われて来たのと自分で決めて来たのでは違うのだろう。


寂しくないといえば嘘になるけど、前みたいに泣く程じゃない。


アキが来られない時はヤンの部屋に泊まる事にした。


ヤンの同室者はルイといって、薄紅色のショートボブに、茶色の瞳の女の人。


あまり表情の動かない人で怖い印象があったけど、話してみるといい人だと分かった。


同じ歳の筈なのに、私を妹みたいだと言う。


でも、嫌な感じはしない。


学校ではいつもヤンとルイといる。


サリスにはたまに睨まれる。


いつも横にマナって子がいて、その子にも睨まれる。


マナはアイボリー色の髪に茶色の瞳。


いつもツインテールをしている。


敵意には慣れない。


昔に声を出せなくなってしまった事を思い出すから。


アキが壊れるのを止められなかったのを、思い出すから。


もう見たくない。


──アキが人を殺す所なんて……


アキは魔術師。


稀少な存在を守るためなのか、アキへの処罰は何もなかった。


アキより強い人がいないと、ソルドから聞いた事がある。


国はアキを敵に回したくないんだと、呟いていたのも……


ソルドによれば、私に会うまでのアキは荒れていたらしい。


魔法を使えるという事で、周りからチヤホヤされ、敬われ、時には恐怖の対象になる。


人を信じられなくなってたって、昔にアキが話してくれた事がある。


気に入られようとゴマを摺り、心の中では恐怖する。


そんな人達ばかりだったって……


まるで感情がないみたいに仕事を淡々とこなし、会話にも混じらない。


それが昔のアキだったと。




今日は授業が終わってから、芝生の敷かれた中庭にいる。


クウと一緒。


久しぶりにヤンともルイとも一緒にいない。


「クウ、遠く、メ」


「ピー」


遠くに行っちゃダメってクウに言い、私は少し日向ぼっこ。


一人でいる事は寂しいけど、それに少し慣れている私はこうして日向ぼっこをするのも好き。


ぼんやりしてたら、時間はあっという間に過ぎるから。


アキを待つ時間が短く感じられるから。


(そろそろ帰ろう)


日が沈んできて、寮へ帰ろうと立ち上がる。


「クウ」


呼んでもクウは現れない。


(どうしたんだろ?)


「クウ?」


また呼んでも姿を見せない。


(何処に行ったんだろう?)


クウが走っていった方へと歩いていく。




クウの名前を呼びながら歩いていると、鳴き声が聞こえた。


その方へ歩いていくと、透明な箱みたいな所に入ったクウと、一人の男の人がいた。


「クウ」


「ピー」


カリカリと箱を引っ掻いているみたいだけど、出れないみたい。


(何でこんな事になっているの?)


この人が関係しているんだろうか?


「これ、アンタの?」


聞かれて頷く。


「何でアンタがこんなの持ってんの?」


再び聞かれ


「アキ」


答える。


「『あき』?

あきって何?」


でも伝わってないみたいで、どうしていいのか困る。


「アキ、魔術師長」


「魔術師長?

でも、何の関係があるんだ?」


アキと同じ金髪の男の人。


でもアキよりも髪は短いし、瞳は私の嫌いな赤色。


座っているからたぶんだけど、アキよりも背が低い。


そんな彼が怪訝な顔を見せる。


「アキ、預かる」


「……魔術師長から預かったって事か?

どんな知り合いだ?」


「一緒」


「は?

意味分かんねぇ」


やっぱり通じない。


でも今は紙を持ってないし、書いて伝える事もできない。


「ピー」


クウから悲しいって伝わってくる。


「クウ」


近寄るけど、箱は開けられない。


触れられない。


「出して」


この人にお願いするしかない。


「コイツ、魔法を使える魔獣だぞ?

危険動物だ

許可できない」


でも出してくれない。


「クウ、いい子」


「はぁ?

魔獣がいい子な訳ないだろ?」


「クウ、いい子

悪い子、違う!」


クウは大きくなるだけ。


それに私のいう事を聞いてくれるから、学園で威嚇する事もないし、大きくなった事もない。


「魔獣は退治されるモノなんだよ」


(退治……?)


そんなの嫌!


「嫌!

クウ、大事!!

返して!」


箱を抱き締める。


クウを退治されるなんて嫌。


私にとって、クウは大事。


隠すように腕の中に箱を抱える。


「ピー……」


クウから悲しみが伝わってくる。


「お前……何泣いてんだ?」


男の人が驚いた顔をしてる。


でも、退治なんてされたくない。


(そうだ!

アキ……アキなら何とかしてくれる)


慌てて電話を取り出す。


『ミイ?

どうした?』


すぐに出てくれたアキ。


「アキ、助けて!

クウ、退治、嫌!!

助けて!」


『すぐ行く!』


泣きながら訴えると、すぐに返事があって電話が切れた。


クウの入れられた箱をまた腕に抱えるけど、移動ができない。


空中に留まったままの箱。


早く此処から出してあげたい。


「何だ、今の電話……

もしかして魔術師長に連絡したのか?

……いや、まさかな」


何かぶつぶつ言ってるけど、クウを助けたい私の耳には届かない。


この箱は、たぶん魔法。


(この人も魔法を使えるの?)


学生みたいだけど、魔法が使えるなら何で学校に通っているんだろう?


魔法が使えても、年齢で決まるのかな?


詳しくは分からない。


でも魔法なら、私は何もできない。


泣くしかできない。


「ミイ!」


「アキ

……お願い

クウ、助けて!」


アキが来てくれた。


腕を解いて見せると、アキは一瞬だけ顔をしかめた後、指を鳴らす。


(あ、消えた)


クウを閉じ込めていた箱が消え、咄嗟に抱き締める。


「ピー」


「クウ、良かっ……」


ホッとしたら沢山涙が出てきて、言葉が詰まる。


「アキ、あり、が、と」


アキにお礼を言うのも途切れ途切れになってしまう。


「魔術師長!?

何で?」


クウを閉じ込めた人が驚いてる。


アキは冷たい視線を向けていて、少し怖い。


「何、ミイを泣かしているんだ?

そんなに潰されたいのか?」


「……っでも!

それは魔獣ですよね?

退治すべきモノでしょう?」


青い顔をしながら話している。


でもアキが何か言う前に、訂正を入れる。


「クウ、いい子

悪い……しない!

退治、メ!

大き、だけ」


必死に訴えると、アキに頭を撫でられた。


「確かにクウは魔獣だ

でもこうしてミイに懐いている

暴れもしないし、魔法も大きくなるだけだ

表面は少し頑丈になるみたいだが」


アキが私の言葉に補充してくれる。


「クウはもうミイが大事にしている

もし既に退治していたら、今頃お前の命はなかったな」


アキがいじめているみたいに見えたけど、止めない。


だって、クウを退治するって言ってた人だから嫌い。


(あ、そうだ)


「アキ、ごめ……

仕事」


「ん?

ああ、もう今日は終わりにしようと思っていたから平気

気にするな」


また頭を撫でられ、安心して抱き着く。


やっぱりアキの匂いが一番落ち着く。


「アキ、泊まる?」


「うん

でもその前にご飯食べに行こうか?

今から作るのは大変だろ?」


クウの事があったから、結構時間が経っている。


確かに今から作ったら遅くなる。


今日はアキもいるし。


「どういう関係です?」


まだあの人がいた。


「ミイは俺の嫁になる女だ

今度何かしたら、命はないと思え!」


またアキが恐い顔をしている。


「行こ」


この人の為に、アキに嫌な気持ちを持って欲しくない。


また壊れたアキを見たくない。


こうして恐い顔をしているアキは、いつ壊れてもおかしくないように感じる。


「もう、しない?」


「へ?」


「しない?」


「……分かった

もうその魔獣に手は出さない」


「なら、いい」


クウに何もしないならもういい。


クウに怪我もないし。


「アキ、行こ」


「……次はないと思え!

ミイ、行こうか」


男の人に向けた顔とは違って、私には笑顔を向けた。


アキの頭の上にクウが乗ってて、余計に可愛い。


思わず笑顔を向けると頭を撫でられた。


手を繋いで学園を出る。




その後ろ姿を、その男の人がジッと見ていた事を知らずに──…

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