ついて行きました
話せなくなった次の日。
私はアキ達と一緒にいた。
アキの仕事着は、青色の縁取がある黒い服の上に、黒くて長い外套を羽織っている。
ソルドも同じ格好。
外套に着いているカフスの色が違うだけ。
アキは金色で、ソルドは銀色。
他の人達は赤だったり青だったり……
一人一人違う色をしている訳じゃない。
色が決まっているのは、アキとソルドだけみたい。
役職によって変わるって聞いた事がある。
因みに、私も外套を羽織らされているけど、カフスはない。
中の服も淡い緑色のワンピース。
私はアキの仕事仲間じゃない。
それなのに一緒にいるのは、声を出せなくなったアキが側を離れないから。
でも、アキは忙しい人で、仕事は沢山ある。
仕事はしなきゃいけない。
私がついていけば、アキは仕事に行く。
だからついてきた。
危険だと承知で。
凄く渋ってたアキとソルド。
でも、私の意志が固いと分かると折れてくれた。
魔法が使えない私がついてきた理由は色々あるけど、任務内容もついてきた理由の一つ。
任務は暴れている動物の討伐。
見た事もない動物らしく、退治できないからアキ達にきた任務。
此処にいる人達は皆、魔法が使える。
魔法が使える人にとって、退治は普通の人に比べると簡単。
でも、私がついてきた理由は退治をしたいからじゃない。
何故か私は動物の気持ちが分かる。
詳しくは分からないけど、“嬉しい”とか“悲しい”とかが伝わってくる。
だから、助けられるなら助けたい。
私がアキに助けてもらったように。
「危険だから俺から離れたら駄目だ」
そう言って、まだ何も見えないうちから抱き上げられている。
私には長距離を歩く体力がないみたいだから疲れなくていいけど、アキは疲れるよね?
でも下ろしてくれない。
アキは過保護だ。
居心地はいいから何も言わないけど。
「いたぞ!」
ソルドの声に、周りの人達の雰囲気が変わる。
──アキも。
凄い轟音がしたと思ったら、木を薙ぎ倒しながら此方へ来る茶色の物体が見えた。
何の動物かはよく分からない。
でもかなり速いスピードで動いているから、生き物なのは確か。
「攻撃準備に入れ!
取り囲む」
「「はい」」
皆が一斉に動く。
でも、準備に入るだけで攻撃はまだしない。
私は下に降ろしてもらい、その生き物の方に歩いていく。
「ミイ、危険だ!」
相手の速さが想像以上だったのか、アキが私を止めにくる。
でも首を振ってそれを拒否する。
だって、伝わってきたんだ。
“痛い”って……
(大丈夫だよ)
声を出せないから思うだけしかできないけど。
(怪我をしてるの?)
私には暴れているっていうより、痛くて泣いているようにしか見えない。
近付いていく私に、生き物は攻撃をしてこない。
(アキ)
アキを呼ぶ。
顔をアキに向け、声は出ないけど名前を言うように口を動かせば、アキには分かる。
すぐに来てくれた。
『この子怪我してる』
その間に紙に書き、アキへ見せる。
「怪我?」
アキも一緒に探してくれた。
(あ、彼処!)
足の一部に枝みたいなのが突き刺さり、血が出ている。
アキに知らせると、枝を抜き取り魔法で治してくれた。
(もう痛くない?)
その毛で覆われた体を撫でると、顔が此方に向いた。
(あ、可愛い)
つぶらな目が見える。
そのまま顔が近付いてきて、頬を大きな舌で舐められた。
(ありがとうって言ってるみたい)
嬉しいって感情が伝わってくる。
撫でてあげるとまた舐められた。
「流石はミイだな
俺達だけでは退治するだけだった」
ソルドが近寄ってくる。
「フシャーー!!」
大人しくなってたのに、急にソルドに向かって威嚇をする。
(どうしたの?)
私とソルドの間に体を入れ、更に威嚇している。
「ミイは凄いな
もう手懐けているなんて……
近付くなって威嚇されてるみたいだ」
ソルドの言葉にアキが笑う。
(大丈夫
ソルドはいい人だよ?)
体を撫でると、また近寄ってくる。
その時、一瞬にして姿が消えた。
……違う。
小さい、リスのような動物になった。
私の体を駆け登り、肩に乗る。
(この子がさっきの子?)
大きさが全然違うし、今は普通の動物のようにしか見えない。
(可愛い)
顔を擦り寄せてくる。
両手で掴み、抱き締めながら撫でる。
気持ち良さそうな顔をしているのが可愛い。
「……ふふ」
思わず笑みが溢れる。
「……ミイ?
今、声出た?」
アキに言われ、そういえば声が出たと思って話してみる。
「アキ」
出た。
ちゃんと声が出た。
「ミイ!」
アキに抱き締められる。
「良かった!
本当に、よかった」
「うん」
アキはまた泣いてる。
泣き虫なアキ。
大好きなアキ。
ずっと心配してくれていた、優しいアキ。
「も、平気」
泣き続けるアキの頭を撫でる。
優しい腕の中。
でも、いつまでもこのままでいる訳にいかないのは分かっている。
「ソルド
学校」
「ミイ!?
無理しちゃ駄目だ!」
アキが直ぐ様反対する。
「平気」
「ミイ、無理をするな
急がなくていい」
ソルドにも言われる。
「ソルド、正しい
甘える、メ
学校
大丈夫」
「大丈夫じゃない!
ソルドは正しくなんかない!!
ミイは甘えていいんだよ?
学校なんか行かなくていい!!!」
アキに強く抱き締められる。
「心配、ない
会う、来て
頑張る」
私の言葉にまた泣いた。
「うん、絶対会いに行く
行ける日は絶対に」
(だったら、頑張れる)
泣く大きな体を抱き締める。
(寂しいけど我慢)
他の子も我慢してる。
だったら私も我慢しなきゃいけない。
私を特別扱いしてくれるのはアキだけで、国は関係ない。
これからもアキの側にいたいなら、色々学んでいたい。
声が出たなら、休む理由がないのだから。
でも、私が学校へ戻った事で、再びアキが壊れるのを見るとは、この時は思ってなかった。
そして、それは私にもいえる事だという事も──…




