旅立ち
ミイと一緒に旅に出る事にした。
魔術師長を強引に辞め、必要最低限の荷物を持って……
ミイを外にやる事はあまりない。
一度声を失ってからは特に過保護にして、なるべく外には出さなくなった。
外に出るのは俺が一緒の時だけ。
長期の仕事が入れば一緒に連れて行き、それでもソルド以外の奴に近付けた事がない。
俺はソルドにも近付いて欲しくないと思ってるけど、ミイが懐いてしまったから仕方なく許している。
ミイが、ソルドに兄のような感情を持っているだけだと知っているからって事もある。
でもそんなだから、ミイは長距離を歩けない。
俺が抱き上げて歩いている時間の方が多い。
毎日少しずつしか進まない旅。
それでもいい。
ミイと一緒にいるだけで、この旅をしてよかったと思えるから。
今までにミイとこんな長い間一緒にいた事がない。
俺の仕事は危険が伴うし、毎日は連れていけない。
一日の中で、僅かしか一緒にいられない。
だからこそ余計にミイを欲した。
ミイがいてくれるだけで、俺は俺でいられる。
新たな場所に来る度、ミイに表情が戻っていく。
それが嬉しくて堪らない。
徐々に、手を繋いでも抱き締めても、ミイからの拒絶が消えていった。
今までは許可をもらってからしかできなかったけど、それでも僅かな拒絶があった。
俺の腕の中で緊張するミイ。
近くにいるのに遠くに感じて悲しかったけど、今は逃げる素振りもないし、体に変な力が入る事もない。
まだ表情も完全に戻っていないし、声も出ないまま。
それでも少しずつでも戻ってくれればいい。
「ミイ、次は観光が盛んな街だ
人が沢山いるから、俺から離れちゃ駄目だよ?」
頷くミイ。
(声が聞きたいな)
でも、焦らせても意味がない。
気長に待たなくては。
「行こう」
ミイと共に歩き出す。
ミイにとってよくない事が、これから起こるとは知らずに……




