話しました
ヤンとルイとお昼ご飯を食べる。
ルイはたまにしか一緒にいない。
一人でいる事が好きな人だから、食事も一人で摂りたい時もあると言っていた。
ヤンはいつも一緒にいてくれる。
私はヤンとルイ以外に友達がいない。
いつもヤンが一緒にいてくれるし、ヤンがいうにはアキに近付きたくて私に近付こうとする人もいるらしいから、気をつけるようにって。
でもよく分からないし、それだったらヤンとルイ以外に仲良くならなければいい。
私みたいに喋るのが苦手な人と、友達になりたいって人はいないだろうし。
でも、その日はいつもとは違っていた。
私の前に、あのクウを苛めた人が座ったからだ。
「……エスト?
貴方が人に近付くなんて、珍しい事もあるんだね」
ヤンが彼に声をかける。
(この人、エストって言うんだ……)
私にとってエストは、クウを苛めた嫌な人。
もうしないって言ったから許したけど、警戒は解けない。
(今日はクウを寮で留守番させておいてよかった)
今クウがいたら、何かされていたかもしれない。
何もしないと言ったけど、嘘かも知れない。
知らない人だし、信用はできない。
アキからしたら、私は甘いらしいけど。
「アンタ、魔術師長の許嫁なんだな」
(許嫁?)
アキには嫁にするって言われてるけど……
もしかして、それが許嫁?
「本気か?
あの人冷酷って噂あるけど、本当らしいじゃん」
(アキが……冷酷?)
私へ何かした人に対してはそうだと思うけど、私に対しては泣き虫で甘えん坊で、私を何よりも大事にしてくれる人。
「アキ、いい子」
「は?」
「泣き虫」
「……はぁ?」
「可愛い」
「……お前、どっかおかしいんじゃないか?」
どうやら信じてくれてない。
(嘘じゃないのに……)
アキって、私がいない所ではどんな感じなんだろう?
「それだけアキ様にとって、ミイが特別って事でしょ?
私も信じられないもん
特に『泣き虫』がね」
ヤンの言葉に首を傾げる。
(そうかなぁ?)
アキ、よく泣くんだけどな。
警戒しなきゃいけない人なのに、エストに質問されてついつい答えてしまう。
「そもそも、どうやって魔術師長と知り合ったんだ?」
「……保護」
私がアキと知り合ったのは、あの部屋にいる所を保護された時。
その時のアキは、若くしてもう魔術師長をしていた。
「保護?
何かの事件に巻き込まれたのか?」
「……覚え、ない」
そう、何も覚えていない。
何故あの部屋にいたのか。
何故、死体が沢山あったのか。
何故私一人が生きていたのか。
そもそも、自分は誰なのか。
何が起こったのかが分からないだけでなく、過去の記憶すらなかった。
「ミイは記憶喪失なんだよ
名前もアキ様につけてもらったって言ってたしね」
ヤンが補足してくれた。
「だから保護したのか?
でもそういう場合って、普通は施設へ送るんじゃないのか?」
「そんなのアキ様に聞きなよ
詳しい理由はアキ様しか知らないでしょ」
ヤンの言う通り、何でアキが私を保護したのかは分からない。
最初は情報を聞き出す為に、保護じゃなくて一時的に手元に置いていた。
今と違って、全然話してもくれなかったし。
保護っていうより監視だった。
でもある時、一気にアキの雰囲気が変わった。
その変化は急過ぎて、理由は何も分からない。
急に私にべったりになったアキに、私も周りも戸惑っていたと思う。
その時の私は、やっと言葉を話せるようになった時期だった。
「この子に集まって、何の意味があるの?
放っておけばいいのよ
アキ様も次第にお気付きになるわ
この子はアキ様にとって必要ない子だって」
「そうね
サリスの言う通りよ」
サリスとマナが近寄ってきた。
「サリス、まだ言ってんの?
もう諦めなよ」
ヤンの言葉に顔を赤くするサリス。
「諦めないわ!
こんな子、相応しくないのよ!!」
「そうよ!」
二人は私を睨んでくる。
怖くてヤンの服を掴む。
「守ってもらうのが当たり前?
そんな態度、いつまでとれるかしら?」
敵意を感じる。
二人はそのまま離れていったけど、私は悪い予感に体を震わせた。
その予感は悪い事に当たる事になる──…




