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第Ⅱ譚 巫女と執事の邂逅

※時系列としては、紅魔郷EXが終わり、無月が新技を練習している時の話となります。



‡‡‡‡


「はっ…!」


「…っ!?」


深夜の紅魔館の中庭上空。その夜空を彩る虹色の弾幕と細い真紅のライン。


空中で美鈴が放つ様々な弾幕を同じ空中で必死に回避する無月。ただし美鈴が何も使わずに浮いているのに対し、無月は細い真紅のラインを利用し、その上を跳んだりぶら下がったりしている。


「無月…」


「……」


危なっかしい無月の動きに、思わず一度弾幕(しかも極限まで威力を落としている)を放つのを止め、心配そうに声をかける美鈴。その声を受けて無月は真紅のラインを上手く伝って地上に降りる。ここ数日、紅魔館上空で頻繁に見られる風景であり、里にも見える程の高さで繰り広げられている。(特に美鈴の弾幕は夜空では目立つ)


‡‡‡‡


「発想は良かったんだがな…」


「どうしてもワンテンポ反応が遅れてますね。」


「お兄様、フランが練習のお手伝いしようか?」


地上にて少し悔しそうに無月が呟く。美鈴も自身が感じた事を伝える。


指定席となっている背中にへばり付いたフランが笑顔で無月に提案する。


「ありがとうフラン。でもお手伝いはもう少し待ってほしい。」


「はーい。お兄様笑顔まだぎこちないね…えい。」


「スペルカードとして空中を移動する為の極細の足場を作り出す…発想は良いですが無月が動けないのがネックですね…。何か手はないものですか」


主の提案に感謝し、相変わらずぎこちない笑みを浮かべる無月。そんな無月の頬を小さな手で引っ張り、ぎこちなさを消そうとするフラン。


そんな二人を眺めながら、小さく呟く美鈴。美鈴も最初その案を聞いたときは無理だと思ったのだが、無月が能力で作り出したのを見て考えを改めた。


極細であるのは弾幕で破壊される恐れがあるから、また使用する銀筒(正確には血)の量を少なくする為(無月談)。


「……そういえば無月、仮に今の細さに慣れたとして貴方相手の攻撃を防御する時や受け流す場合はどうするんですか?貴方の技術はしっかりと踏ん張りが利くことが条件です。細いとそれができないでしょう。」


「……あ…。」


「お兄様……もしかして忘れてたの?」


フランに長くなってきた髪を弄られている無月に、思い出したように美鈴が問いかける。


無月は自分の髪型がどうなっているか少し気になっていたが、美鈴に言われて初めて思い出したかの様に目を見開く。


フランは無月の髪の毛を美鈴から借りたリボン(ちなみに色は紅)でポニーテールに結ぶと、カラカラと笑みを浮かべる。


「……呆れましたね…。振り出しですか…。」


「…ごめん…。」


流石にこの事態には美鈴も黒い一面を出して愚痴ってしまう。罪悪感から無月はかなりヘコみながら謝る。


美鈴もそこで無月が本気でヘコんでいると気付くと慌てて代案を考えはじめる。


「……。…あ、いっそのこと太く、板状に形成して防御用の盾としても使ってはどうですか?後は常に動くようにするとか」


「……なる程。その手があったか。」


美鈴の提案に真顔で納得する無月。フランの手によって髪型をポニーテールから魔理沙と同じ様に結ばれているが、本人は指摘する気がないらしい。


「ではもう一度ですね。……あと無月、髪の毛切らないんですか?」


「ん…分かった。…髪の毛切るのはどうもな…フランが遊ぶの楽しんでるみたいだし、もう暫く切らない」


頷くと少し離れ、向き直る美鈴。その時にどうしても気になるのか、髪の毛の事を無月に問いかける。


同じ様に離れた無月は、結ばれた髪の毛を触ると、首をふるふると振り、切らない旨を伝える。


「そうですか…おや?こんな時間に…誰か来ますね。」


「本当だな……魔理沙か?」


「魔理沙だったら遊んでもらえるかな?」


再び特訓に入ろうとした美鈴が、不意に暗闇に向き直る。無月も誰かが接近するのを感じ取り、スルトルを持ち直す。


フランも少しワクワクしながら、無月の背中からふわりと離れ、二人の後ろに浮かぶ。


「あれ…?」


「ん…?」


「あ…。」


三者三様にポカンとした表情になる。暗闇に浮かんだシルエットは、どこからどう見ても異変の時に現れた紅白巫女だったからだ。


「何かご用ですか?」


「そうね。用…と言うよりも人里からの依頼で来たのよ。」


「依頼…?」


美鈴が紅白巫女こと博麗霊夢に質問すると、霊夢は空中で腕を組みながら頷く。


無月は霊夢の"依頼"に少しだけ嫌な予感がしたため、警戒しつつ問いかける。


「あんた達の弾幕戦を里の人たちが不気味がってるのよ…だから止めなさい。できれば今すぐに」


「止めなければ力ずく…か?」


霊夢の警告に、警戒しながら問いかける無月。その問いに霊夢は小さく頷く。


「あの時の光景を見た私としては、あんたと争うのは面倒だから戦いたくはないわね。……それに里から見えるくらい高くなければ別に構わないわよ。」


「……なる程。」


霊夢のどこか悪戯めいた笑みと言葉に、ニヤリと笑みを浮かべる無月。美鈴も意味を理解したのか朗らかな笑みを浮かべる。


「それにしても・・・あんたって“あの時”上から落下してきた人でしょ?」


「落下してきた人・・・そういえば名を名乗ってなかったな。紅魔館、フランドール・スカーレット専属執事兼門番補佐の赤羽無月だ。」


腰に両手を当てながら無月の顔をまじまじと見ていた霊夢がふと思い出したように無月を指差す。


無月も霊夢の表現に思わず苦笑し、改めて自己紹介をする。


「博麗霊夢よ。神社に来るなら賽銭は必ず入れるようにね。」


「・・・ずいぶん現金な巫女だな・・・」


にしし。と笑みを浮かべる霊夢に思わず苦言を零す無月。すでに会ったことがあり、ある程度の性格が分かっているらしい美鈴も苦笑しており、これが霊夢のデフォらしい。


「じゃ…私はもう行くわね。あんた達も程々にしときなさいよ?(何かしらね…無月って奴…“厄介事”に巻き込まれそうな感じがするわね…しかも私も関わるような異変絡みで…ま、気にしないでおきましょうか。)」


「ああ……。」


ヒラヒラと手を振りながら離れてゆく霊夢。持ち前の勘が無月と今後様々な場面で出会うと告げていた事に少しだけ楽しくなることを期待しながら・・・。


この時の霊夢の勘が見事的中するのはまた後の話

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