おそろい
「ねぇねぇっ!川崎さんだよね?爽華って呼んでいいかなぁ?私のことも円香って呼んでいいからさ」
いきなり話しかけてきたその・・・・・・「円香」という女の子は、私が黙っているにも関わらず一人でしゃべり続けた。
「私さぁ、このクラス仲よかった人1人もいなくて不安だったんだけど、爽華がいたからよかったぁ」
いや、よかったって今さっき喋ったばかり・・・・・・まぁ、私は何も言ってないんだけど。
「そうだっ!今日、学校早くに終わるじゃん?一緒にエトワールショップ行こうよ!」
エトワールショップ・・・・・・あぁ、あの雑貨屋さんか。エトワールっていうのはフランス語で星という意味で、店長さんが天文学好きでこんな名前だとか。天文学好きでなぜ雑貨屋さんを開いたのかは知らないけど、とにかく雑貨屋さん。
そんなことを考えていた私は返事もしていなかったので、円香は大きい目・・・・・・もはや「ギョロ」っともしているような目で私を見てきた。
「今日、都合悪い?」
それで我に返って、私は応える。
「う、ううん。大丈夫」
なんとなく、好きになれないタイプ。
エトワールショップに入って、円香はいきなり声を上げた。
「あぁっ、これ可愛いね!爽華もそう思わない?」
円香が指差したストラップ。
嫌でも「そうだね」と言わせそうな気迫に負けて、うなずいてしまった。
「あ、300円っていいぐらいじゃない?友達記念ってことでさ、おそろにしようよ!」
グイッと体を押しつけてきて、またもその気迫に負けうなずいてしまう。
ドーナツにリボンだのラメだのゴチャゴチャとついているそれは、お世辞にも可愛いとは言えなくて、レジへとしまわれた300円が惜しい。
「明日から学校につけていこうねっ」
にっこりと笑って言う円香に、作り笑いをするしかない私。
・・・・・・なんて情けない。
でも、これは絶対に私が悪い。
だからこれを理由に円香を嫌ってはいけないと思う。だって、ストラップを買おうとして断らなかったのは私だし。
しかたない、なるべく目立たないところにつけていこう。
「えぇ、もっと目立つ所につけようよーっ!」
次の日の朝に、円香は挨拶もせずに声を上げた。
まだ言うかこいつは!
「えー、ここでも十分だと思うけどなぁ」
言い返した私に、円香は口をとがらせる。
「スクバにつけた方がいいよ。私だってそこにつけたし、その方が『おそろ』って分かりやすいし」
「・・・・・・」
もう、何も言えない。