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プロローグ 引っ越しの朝

「姉ちゃん、こっちOKだから」

妹の瑠奈が、和室の方に顔を覗かせて言う。

「ありがとー。ごめん、こんなこと手伝わせて」

爽華は瑠奈の方を振り返って言った。

「いいよー。そのかわり、私の時手伝ってよね」

「分かってるって。ったく、なんであんたはいっつも見返りを要求してくるかな__」

爽華はため息をついて、でも笑いながら言う。

「いいじゃん。私ね、自分にとって得な道しか進まないの」

瑠奈が得意そうに言った。

「だから彼氏出来ないのよ」

ぼそっと呟いた爽華に、瑠奈はキッと爽華を睨んだ。

「姉ちゃんに言われたくないから」

そう言って、プッと吹きだした。

「はいはい分かりましたよだ。それよりさ、休憩しよ。隣の人がくれたお菓子あるんだ」

と言ってキッチンに向かう。

お茶を入れて、瑠奈の前に置いた。このマグカップはここに住むようになったときに瑠奈がくれたもので、

ドット柄が爽華、もうひとつセットについていたリボンの絵が書いてある方がよく遊びに来る瑠奈のものになっていた。 

「ぁ、紅茶?」

瑠奈が顔をしかめる。この歳になってもまだ、瑠奈は紅茶が飲めない。

「はいはい。牛乳入れたらいいんでしょ」

爽華はそう言って気付いた_____

冷蔵庫はもう引っ越し先の家に会って、牛乳はもちろん、食べ物がない。

「牛乳、ないや」

「えぇ!?」

口をとがらせた瑠奈に爽華は言った。

「諦めてよ」

「もぉ・・・・」

瑠奈はしぶしぶ、紅茶に口をつけた。

「うぅ、苦っ!」

口直しとつぶやきながら、その「お菓子」をつまんだ。

「おぉ、すごいこれ。美味しいよ」

さっきとはまったく違って、瑠奈は顔を輝かせて言う。

「ホント?食べてみよー__」

最後まで言い終わらないうちに爽華も顔を輝かせた。

そのあとも少しずつ食べて一段落したあと、瑠奈が言う。

「ここも、ガランとしたなぁ・・・」

「まぁ、ね。でもすぐに人が入って来るらしいよ」

と言って爽華は立ち上がった。

「よし、んじゃ和室もうちょっと片付けてくる。瑠奈はもうちょっと休憩してていいよ」

と爽華は和室に向かった。

押入れのものを全部出すと、一つの箱があった。____いや、箱はたくさんあるのだが、「中学」と書かれた箱と「高校」と書かれた箱。

「中学」の箱を開けてみると中にはストラップやらシュシュやら、ごちゃごちゃしたものが入っていた。

一つのストラップが目に留まる。

大して好きでもなかった「友達」と『おそろにしよー♪』とか言われて、大して可愛いとも思わずに買い、一度もつけていないというストラップ。

フと笑みがこみあげてきた。

あそこまで無愛想だったのに、なぜみんなが寄ってきたんだろう。


  こんな調子で爽華は、ぐんぐんと『思い出』の中に引き込まれていった_____


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