第4話 あさりとしじみ
長野ひろしは、その日秋葉原の裏道にいた。
あの、渚さんのコンカフェに来たのだ。
平日の午後1時過ぎ、この時間はまだ営業していないようだ。
〜チャリン〜
「こんにちは!」
「はーい!
あれぇ、、来てくれたんですね。
やまなし、、の隣の、長野ひろしさん。
嬉しいっ、ありがとうございます。」
「はい!どんなお店か、興味があって。
僕、アニメとかもちろん好きなんですが、学校ではマーケティングとか勉強したんで。
コンカフェとか、すごく興味あるんです。」
「それは良かったです。
まだ、お店はじめて一ヶ月位なんですが、、。
実のところ、ちょっと苦戦してまして。」
「そうなんですか?
なかなか、綺麗なお店ですが、、ただ…。」
「ただ、何か?
何でも、ズバズバ言ってください。
私、お店の経営とか初めてで、見様見真似ではじめたんです。
時空管理局のエージェントさんからは、開業資金は出すが、後は自分達でなんとかしろって言われてて。」
「そうなんですか。
では、単刀直入に言っていいですか。」
「はい、ぜひぜひ。」
「コンセプトが、全然、実店舗に生かされていません。」
「というと。」
「コンカフェとは、その名の通りコンセプトづくりと、それを最大限生かしたお店づくりが大事なんです。
冒険者、モンスターハンター、縄文、コンセプトはいいんですが、店づくりに反映されてなくて、際立った他店との差別化が出来ていないんです。」
「はあ、。」
「具体的には、縄文を名乗っているのに、ここには縄文感が全然足りないんです。」
「えっ、あんなつまらない素朴な日常がですか。
毎日、手作りの弓矢や罠、落とし穴で鹿やイノシシを狩って、たまに猛獣に襲われ棍棒で戦ったり、足でグリグリして貝を採って暮らすあの平凡な暮らしが?」
「そんな生活、今この世界でやってる人、滅多にいませんよ。
内装、衣装、メニュー、全て、リアルな縄文の世界感を演出しましょう。」
「お姉さん、肉さばいたよ。」
白いエプロンを真っ赤に染め、黒く光る巨大な石の包丁を持った男が現れた。
超硬そうな筋肉の鎧をまとった、髪も髭も、全てがもじゃもじゃの大男だ。
「わぁっ、、。
何か凄いの出た!!」
「あら、びっくりさせてすみません。
弟の風太です。
天女様が瀕死の弟を、私たちと一緒に連れて来てくれたんです。」
「びっくりしました、渚さんと全然似てないですね。
むちゃくちゃ野性的っていうか、野性そのものっていうか。」
「はい、天女様が言うには、私と2人の娘のアップデートで手一杯だったんで、弟は必要最低限しか出来なかったって。
男なら気合いで、何とかしろって。
これでも、天女様、だいぶ頑張ってくれたんですよ。」
「風太さんってお名前は?」
「テレビでかわいい動物を見かけて、雰囲気が似てて、弟に聞いたらそれがいいって。
風太、気が小さくて、とってもやさしい弟なんです。
小さい時から、お姉ちゃん子で、かわいいんですよ。
ただ、いざ戦いになったら、戦闘力は抜群、集落では、破壊王とか言われてたんです。」
「破壊王、それは、、、素晴らしい!」
〜チャリン〜
「あら、娘達が来ましたわ。
ちょっと大きい方があさり、小さい方がしじみです。」
「あっ、お客様、
こんにちは!私あさりと、妹のしじみです。
お母さん、お腹すいた。
あっ風太おじさん、お肉さばいたの、食べたい。」
「しじみも、お肉食べたい!」
「これは、とっても素敵なお嬢さんですね。
かつての南の島のマーメイド、アグネスさんかと思いました。」
ひろしは、風太、あさり、しじみ、個性的過ぎる3人を見渡して言った。
「渚さん。
この3人が持てるポテンシャルを発揮すれば、超絶凄い人気店になります。
僕の目に間違いはありません。
とりあえず、縄文時代の衣装、内装、料理、可能な限り忠実に再現しましょう!」
「えっ、そんな、ありきたりな、つまらないのでいいんですか。」
「それだからいいんです。
唯一無二の縄文の世界感が溢れる、
モンスター討伐、褐色の美少女冒険者カフェ。
渚さん、僕をぜひ店長候補にしてください。
身を粉にして、頑張ります。」
「はい、長野さん、喜んで。」
こうして、現世にしては異世界過ぎる、長野ひろしの店長候補としての日々が始まったのだった。




