第1話 異世界転生アドバイザー
「はじめまして。
異世界転生アドバイザーの群馬渚です。
よろしくお願いいたします。」
女は名刺を差し出した。
そこには、異世界転生アドバイザー 群馬渚と書いてある。
住所の記載は無く、携帯電話番号だけだ。
「あっ、よろしくお願いします。
異世界転生の相談でお電話をした、長野ひろしです。
群馬さんて、珍しい苗字ですね。
まあ私も長野ですが、お隣ですね。
それに渚さんて、群馬には長野と同じく海が無いのに。」
「はい、私の生まれ育った場所、故郷が、今の群馬県のある場所だったんです。
その頃は、群馬にも海があったんですよ。
かれこれ、一万年から6000年前位の大昔ですが。
家族で潮干狩りが出来るような、とっても綺麗な渚があったんです。
それで、、、渚にしました。」
「そうなんですか、びっくりです。
ひょっとして、群馬さんそこから転生して来たんですか?」
「はい、数年前に、2人の双子の娘と。
転生って言っても、異世界って訳じゃなくて、7000年位前の同じ場所からなんです。
あまりこういう例は無いんですが、やむにやまれぬ事情や、果たさなければならない使命があって。
そんな訳で、縄文土器とか鹿骨のアクセサリーとか、黒曜石の矢じりとかたまに作ってますよ。」
「凄い、そうなんですか。
縄文時代となると、文化や生活とか全然違いますよね。
こちらの世界に馴染むの、大変だったんじゃないですか?」
「いえいえ大丈夫です。
転生の時、天女様がたっぷり現代仕様にアップデートしてくれたんで。
そのままだと、だいぶ問題がありますので。
何せ、縄文時代ですから。
東京の方からの転生相談が多いので、今は東京に住んでます。」
「それで、山梨さんは何故転生をお考えで。
また、どんな異世界がご希望ですか?」
「山梨じゃなくて、長野です!」
「あら、ごめんなさい、、。
私、まだ、この世界に慣れてなくって。
あの辺りは、昔は集落が多かったんでごっちゃになって。」
「はははっ、大丈夫ですよ。
気にしないでください。
僕、昔から異世界アニメとか好きで、特に美少女達とパーティー組んでモンスター討伐とかするのが夢なんです。
大学出て一応会社入ったんですが、3日で嫌になって辞めちゃって。
みんなが同じ常識に従って一斉に働くのが、気持ち悪くて耐えられないんです。
と言っても、生活とかしないといけないし、だったらこの際、思い切って転生とかしてもいいなって思って。
その時、ネットで群馬さんの広告を見て電話したんです。
驚きましたよ、こんな人いるんだって。」
「そうなんですか、ありがとうございます。
お気持ちわかりますよ。
それでご希望は、美少女達とパーティー組んで、モンスター討伐ですね。
そういう希望、とっても多いんです。
失礼ですが、モンスターは、ヌメヌメ系とベトベト系のどちらがお好みですか?
どちらにしても、むちゃくちゃデカくて凶暴なのは一緒ですが。
行く世界によって、生息するモンスターが違うんです。」
「どちらかと言えばヌメヌメ系が好きって、、すみません、変な意味じゃないですよ!
でも、やっぱり両方嫌だなぁ。
だいたい、そんなの倒せるんですか?」
「宝剣とかあれば、パパっと。」
「その宝剣、異世界行くときくれたりするんですか。」
「いえ、最初は、山で木の棒とか拾って、石でひたすら削って棍棒作るくらいからですね。
スキル値が上がれば、手に入れられるかも。」
「えっ、棍棒でそんなのと戦うんですか。」
「まあ、厳しい戦いにはなりますが、、。
まあ、棍棒ひとつで成り上がった人もいますし。
極めて稀な例ですが、。」
「ゴブリンとか、小さめなのはいないんですか?」
「あっ、洞穴ジトジト系ですね。
スキル上げるために、穴に入るパーティーが多くて。
ゴブリンもかなり強いですよ。
でも、さすがに狩られ過ぎて、今は保護対象なんです。
洞穴系が良ければ、足がいっぱい系なら、まだバンバン狩れますが。
まあ、あんまりお勧めしないです。
むちゃくちゃ強い上に、毒とか持ってるし、何より気持ち悪いですから。
私も、あれだけは嫌なんです。
変な音するし。」
「はあ、、、美少女パーティーとかは?」
「ええ、異世界にも美少女とかいるにはいるんですが、人気が高いんで高慢ちきで性格悪い子がほとんどですね。
それに、かわいい子はどうしても、イケメンや金持ちのパーティーに入りたがって。」
「ドジっ子な隠れ美少女とか、掘り出し物はいませんかね。」
「はあ、いるかも知れませんが、そういうドジっ子は、やはり、早々にモンスターの餌食になっちゃうから。
モンスターの前で派手にすっ転んだりして、あれ、私ドジっ子!てへっ、バカバカっ、とか言ってる間に、パクって具合に。
まあ、そんな感じであんまりいないですね。」
「最初は、引退間際のじいさん冒険者辺りと組むのがお勧めですね。
いきなりスキルが高い美少女とパーティーなんて、そんな都合のいい話はありませんよ。
じいさんの昔の武勇伝とか、マジ凄えっす、うんうん、ヤベぇっす、って聞いてれば、じいさん、調子に乗っていろいろ教えてくれるし、それなりに働いてくれますよ。
駆け出しの若者と組むよりは、経験値がある分、よっぽど生き残る確率が高いです。」
「はあ、俺、めんどくさいじいさんとか嫌だなぁ。
説教とか大っ嫌いだしな。
それだったら、会社で我慢するのとあんまり変わらないし。」
「長野さん、言いにくいんですが、正直、異世界に向いてないかも。
少し考えてからの方が、いいんじゃないですか。」
「はい、、そうかも、、ですね。
とりあえずは、何か仕事探さないと、、。」
「私、異世界転生アドバイザー以外に、この世界で別の仕事もしてるんですが。
秋葉原の裏道にあるお店なんです。
コンカフェって感じなんですが。
今、店長候補を探してて。
栃木さん、良ければやってみたらいかがでしょう。」
「長野です!」
「あっ、ごめんなさい、、。
私、ドジっ子なんです。」
ドジっ子にしては、ちょっと薹が立っている彼女は一枚の名刺を差し出した。
〜モンスター討伐!美少女冒険者カフェ 縄文〜
「私の双子の娘も働いてるんですよ。
よろしかったら、一度、遊びに来てください!
もしかしたら、、長野さんの夢がかなうかも。」
彼は、その出会いが、自身の人生をとんでもない方向に一変させることになるとは、その時は想像だにしなかったのだった。




