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約束の審判  作者: 次野/うずらの


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「ボクのことダウジング扱いするとか、ありえないんだけど……」

「まあまあ」


 あの世側からはミシェルと閻魔さまがシドの痕跡をたどっていた。


「ケータイとやらがあればなあ」

「これ以上境界線あやふやにする気?」


 そんなやりとりの後、いったん刑視局に戻ってきた一同と合流する。

 現世の地図を広げ、ミシェルは○で囲った。


「……本当にここなんですか?」


 服装も髪色も、口調も正して、ニクスはすっかり元通りだ。


「間違ってないと思う。そっくりなんでしょ、ここと」


 アカツキものぞき込む。


回生かいせい総合病院って――ミシェルちゃあん、冗談だよねぇ」

「ちゃん付けしないで」

「つれないなぁ。さーみーしーい」

「うるさい。途切れてたんだってば、そこでっ」

「うっそだぁ」

「私も共にしたが、あの建物はたしかに――」

「アスモさん、その前に言うことあるよね」

「なんだい?」

「シドのことだよっ。なに、鎌なくて仕事できるって」

「それを言ったところで、足取りが消えたことの説明はつかないが?」

「そうかもだけどっ」

「ミシェル、すみませんがもう1度……」

「ここなのっ。ニクス、しつこいっ」

「ここなわけねえだろ」

「――!?」

「ちょっと、ミシェルちゃんの前でそれダメだって!」


 口々に話す、『ありえない』の一点張りに、ルカは首を傾げた。


〝回生総合病院〟


 一方通行で現世に行け、一方通行だからと6階から飛び降りた、あの病院だ。シドの痕跡が途切れていても、なにもおかしくない。


「――納得いかないようだね、お嬢さん」


 輪に入らなかったエルサにその理由を教えれば、「へぇ」と関心するような相づちが。

 しかし、アカツキは再度否定してくる。


「いやいや、ニクスでも近づけない場所なんだって。そこから鳥居くぐらないで現世行けるって、マジでない」

「行ったんだってっ」

「ルカちゃああん、分かってよー。生死さまよってる人ばっかのところに、死神がほいほい行けたら困るでしょー?」


 水掛け論になる前に、エルサが割って入った。


「ここは僕の出番だね。お嬢さん、道案内をお願いするよ」


 ――話がしたいだけ。


 そう言っていたが、本心は分からない。


「なあに、悪いようにはしないさ」


 エルサはルカの了解を得ないまま、彼女を抱えた。

 その手つきはまだまだ荒い。


「待ってよ、エルサさん」


 アカツキが立ちはだかる。が、連れていくことに反対しているわけではなく。「これを」と、ふわふわの毛布が入った、取っ手のないバスケットをエルサに渡した。



 ――ルカちゃんの持ち方、危なっかしいんで。これなら、やさーしく運べるでしょ?



 おかげで快適な道中だった。が、連れてこなくてもよかったのでは? と思うくらい、あっという間に目的地に到着する。


「ここだね。ふむふむ、ふんふん」


 独特な相づちをうちながら、エルサはガラス張りの大きな建物を見上げた。隣接する建物とは連絡通路でつながっており、このあたり一帯すべて病院ようだ。

 どこから入ろうか迷っているのだろうか――なんて思わせない堂々とした足取りで、なんのためらいもなく正面玄関から入っていく。


「わわわわわっ!!」


 シドと来たときよりもはっきりしている内装と人の気配に、ルカは声をひそめて慌てた。

 その様を、エルサは笑う。


「大丈夫だよ、まだ狭間。彼は11階にいるようだけれど、さすがに階段はね」


 相乗りさせてもらおうと思って、とエレベーターの前で立ち止まった。


「……エルサさんって監察官なのよね」

「そうとも」

「天の使い、ってやつ?」

「あぁ、そうとも。この世の摂理をねじ曲げてまで己の欠片を探している、無慈悲な天の使いさ」


 一応、だけどね。と含みをもたせるが、ルカが聞きたいのはそんなことではなかった。


「翼でひとっ飛び! ……しないの?」

「できるなら、とっくにやっていると思わないかな?」

「勝手なイメージかもじゃない。翼があるって」


 現に、ここの閻魔さまも死神もイメージとかけ離れている。


「……いやはや、本当に不思議なお嬢さんだ」

「褒めてる?」

「はっはっはっ。鋭いのか、そうでないのか。憎まれ口に、まっすぐ自分の意見を通してくるなんて」


 どこか事務的だった口調が和らいだ。


「翼はね、熱波で灼け堕ちてしまったんだ」


 そう言い切ったタイミングで、エレベーターの扉が開いた。



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