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夜に消えた記憶

作者: 気鍵日和

あなたのお時間少々頂戴します。

本の世界へ、いってらっしゃい。

彼氏と喧嘩をした。

私はもう頭にきてて夜だというのに家を飛び出した。

私の気持ちも知らないくせに。

私ばっかりこんな気持ちになって馬鹿みたい。



どのくらい時間が経っただろう。

気づけばよく来ていた公園のブランコに座ったまま、日を跨ごうとしていた。

「…まだこの時期は冷えるな」

徐々に冷静になってきて私にも多くの非があったことに気づく。そろそろ人肌恋しくもなってきた。

「…帰ろ。」


仲直りをするために彼の好きなポテチと私も一緒に食べる用のケーキをコンビニで買った。

電話をかけるか迷い、スマホで連絡先を開いたが、直接伝えたいため電源を落とす。

彼はまだ怒っているだろうか。

彼は今なにをしているだろうか。

彼は…許してくれるだろうか。


側を通り過ぎていく車や自転車を横目にとぼとぼと家への帰り道を歩いていく。



「え…。」

ずっと下を向いていたのが悪かった。横断歩道を渡っている最中に赤信号を無視して走ってくる車が私にあたる。

鈍い衝撃が走り、地面に叩きつけられる。

痛みは感じないのに朦朧としていく意識の中、そばを通りかかった人の悲鳴が聞こえた気がした。


…あれ、これ死ぬのか。だめだ。体が動かない。


まだ、謝ってないのに。

まだ、まだ一緒にやりたいことたくさんあるのに。

まだ、行きたいところあるのに。

まだ…大好きだよって…伝えてないのに…。



ずっとずっと遠くに救急車のサイレンが聞こえる。

体の痛みなどは感じず、ただ、すっと意識が遠のいていく。彼との思い出が次々に蘇ってくる。

「…世界で1番、好き…だった。今までありがと…ね…」

眠りにつくような感覚に襲われ、そのまま私は永遠の眠りについた。




とある街で、彼氏と喧嘩をし家を飛び出した1人の女性が亡くなったあの夜。女性の亡骸の側には彼の好物であろうシュークリームと2人分のケーキが潰れていた。

後になってわかったことだがスマホを開くと彼と思われる連絡先が開かれていた。そして送信されていないメッセージが残っていた。


『さっきは怒って家を出てってごめんね。私も悪いところいっぱいあった。あなたの気持ちを考えずに怒りをぶつけるだけぶつけちゃってごめんなさい。今家に向かってるから、家に着いたらお話しさせてほしい。ごめんね。大好きだよ』

本の世界からおかえりなさい。

是非次の世界にも足を踏み入れてみてくださいね。

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