コーヒーショップ
雨の日は憂鬱になる。何故?
それは私が雨が嫌いだからだ。
「今日も雨降ってるなぁ……」
仕事帰り、空を見上げながらそんな事を思っていた。時計を見ると18:40。
今日は帰るの遅くなりそう。
「あっ…そうだ、この前の資料の確認しなきゃ」
スマホを開き、先日、取引先から貰った資料を確認した。
「うーん……ここらへんは予算的にきついかな……明日部長に相談しよ」
そんな事を考えていると、雨は小雨になった。
「あっ、ラッキー早く家帰ろー!」
私は駆け足で駅に向かった。
だけど……また雨は強くなってきた。
「もぉー最悪。少し濡れたし」そう言いながら雨宿りする私。スーツに付いた水を払ってると、後ろからコーヒーの匂いがしてきた。
「あっ、いい匂い」
後ろを振り返ると、そこはコーヒーショップだった。
(コーヒーショップかぁ、入ったことないな。)
外を確認すると、雨はまぁまぁ強い。
(せっかくだし、美味しいコーヒーでも買って帰ろうかなっ)
そう思って中に入った。
「わーすごい。コーヒーってこんなに種類があるんだ」目の前には有に20種類以上のコーヒーが並べられていた。
「いらっしゃいませ。ゆっくり見ていってください」その声の主は若いお兄さんだった。
……社員さんかな?
「すみません、声大き過ぎましたよね」
「全然大丈夫ですよ」そう言いながら濡れてる私を見て、お兄さんはタオルを持ってきてくれた。
「すみません、タオルまで……」
「気にしないでください。濡れたままだと風邪ひいちゃいますしね。これよかったらどうぞ。僕のおすすめです」そう言って彼が渡してきたのは、小さめの紙コップに入ったコーヒー。
「いいんですか?ありがとうございます」
温かい……。
そしてこのコーヒー……凄く良い香り。
「これっ、凄く美味しい……香りも爽やかだし後味スッキリ」
「喜んでくれでくれて良かったです。これ僕が始めて選んで発注したコーヒーなんです」
「お兄さんが?めっちゃセンスいいですね!なら、これ買っちゃおうかなっ」
「いいんですか?」
「はい!いくらですか?」
「1480円です」
そんなやり取りをして、私はお兄さんおすすめのコーヒーを買った。
家に帰ったらこれ飲むの楽しみだな。
外を見るとまだ雨はやまない。
「雨……止みそうにないなぁ」
そんな私を見てお兄さんが「これ、使いますか?」と傘を差し出してきた。
「え、悪いですよ」
「いえいえ、お店の傘ですから」
「本当にいいですか?」
「はい」
(めっちゃラッキーじゃん!)
「ありがとうございます!」そう言って傘を受け取り、お店を出た。
「お兄さんありがとうございます!また来ます!─────あっ、傘は今度返しに来ます!」そう言うと、お兄さんは笑顔で手を振ってくれた。
雨の日は嫌いだし、憂鬱になる。
だけど今日は雨で良かったかも知れない。
「なんか今日、良い日かも♪」
そんな風に思えた雨の日の出来事でした。