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ナイショの王子様  作者: 朱空てぃ
三学期
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第59話 バレンタイン前日

 二月に入って、受験もいよいよ大詰めとなる時期。


 珍しく、あおいの方から紗奈に相談がある。と持ちかけてきた。


「どうしたの? あおいちゃん」

「あのね…。紗奈ちゃんに、って言うか…紗奈ちゃんのお母さんにお願いがあるの」

「うちのお母さんに?」

「うん。由美おばさんってお料理上手じゃない?」

「うん! 上手だよ!」


 紗奈はにぱっと嬉しそうに笑ってそう言った。


「バレンタインチョコ、作りたいの」

「バレンタイン…。音久くんに?」

「うん。受験前、最後に……。頑張ろうねって意味を込めて贈りたいのだけれど」

「わぁ……。素敵。分かった! じゃあ、前日にうちに来て一緒に作ろ? お母さんもきっといいよって言ってくれるから!」


 受験前で終業が早くなるので、帰りに紗奈の家で一緒に作ろう。ということになった。


。。。


 十三日、バレンタインの前日にあおいは紗奈の家にお邪魔する。


「お邪魔します…」

「いらっしゃい。あおいちゃん」

「今日はよろしくお願いします」

「こんちは!」


 てとてと歩いて来た義人は、由美の後にピッタリとくっついてちらっとあおいを覗いてくる。


 可愛らしい挨拶をしっかりとしてくれたので、あおいは「ふふっ」と上品に笑うと、義人の前でしゃがんだ。


「こんにちは。義人くん。お姉さんのこと覚えてる?」

「あおちゃん!」

「ふふ。良かった」

「義人。お母さん達、これから美味しいチョコを作るから、出来上がるまでいい子に待ってて」


 今日はいつもの積み木遊びではなく、えんぴつを使って文字を書いていた。もうすぐ小学生になるので、買ってもらったドリルで練習中なのだ。


「義人くん。最近上手に字が書けるようになったんだよ」

「へえ。偉いのね」

「ふふ。だよねー。最初は自分の名前も『おいと』なんて書いて、『と』の字だって間違って書いてたのに。今はちゃんと綺麗に書けるようになったんだよ!」

「紗奈も小さい頃はずーっと『ちな』って書いてたのよね」

「あれ? そうだっけ」


 紗奈は恥ずかしそうな困り眉で、誤魔化すように笑う。


「よしっ。早速作りましょうか。午前中に色んな材料買ってきたのよ。何がいい?」


 由美は予め、キッチンに色々な材料を用意してくれたようだ。彼女はいつものハーフアップではなく、一つ結びにくくって、袖捲りをしている。やる気満々だった。


 それに習って、紗奈も長い髪をひとつに纏めるとお団子にする。あおいは結ぶには微妙な長さなので、ヘアピンで髪が前に流れないように留めるだけにした。


「あの、私も材料を買ってきたんですけど」


 あおいは持っていた袋を由美の前に差出してみる。


「そうなの? なら折角だし、葵ちゃんはそれ使って作る? 何を買ってきたの?」


 あおいが見せてくれた材料で作れそうなのはブラウニーやトリュフだ。


「ブラウニーなんかどうかな?」

「は、はい。ブラウニーにします。」

「紗奈は?」

「私はクッキー。」


 今度は自分一人で作るのだと、紗奈は意気込んでいる。


 前に悠に渡したクッキーよりも上手に作れたらいい。と、そう思った。


「一人で作るのね」

「うん! だから、お母さんはあおいちゃんをお願いっ!」

「わかったわ」


。。。


「うん。こんなもんかな? いい感じに焼けてるよ。あおいちゃん、味見してみよっか」


 それぞれが作ったブラウニーとクッキーを、お互いに味見してもらう。


「しっとりしてて美味しー!」

「紗奈ちゃんのクッキーも美味しいよ」

「本当? 不格好になっちゃったんだけど、大丈夫かな?」

「一番綺麗なのはとってあるじゃない。きっと、小澤くんも喜んでくれるわ」


 あおいが優しく微笑むと、紗奈は自信がついたのか「ふふっ」と頬を染めて笑った。そして、あおいの両手を包み込む。


「ありがとう。あおいちゃんもぜーったいに喜んで貰えるよ!」

「ありがとう。紗奈ちゃん」


 ブラウニーを一切れと、ちょこっとだけ不格好だけれど、義人の好きな車の形をしたクッキー。その二つは勉強中の義人に差し出された。


「わあ。ありがとう! ねーねっ! あおちゃん!」

「「どういたしまして」」


 小さな紳士は、嬉しそうな表情で甘い幸せを口に含むと、ほっぺたを押さえて、リスのように頬張った。


 とても可愛らしいので、弟を溺愛している紗奈はもちろんのこと、あおいもほんわかと和んだ表情で義人を見守る。


「あの、今日はありがとうございました」

「ううん。久しぶりに若返った気分で、楽しかったわ!」

「それなら…良かったです。どうもありがとうございました」

「ふふ。また来てね」

「はい」


 由美にぺこっと頭を下げたあおいは、玄関まで紗奈と一緒に歩く。そして、改めて紗奈に向き直った。

 

「紗奈ちゃん、今日はありがとう。受験の日、頑張ろうね?」

「うん! みんなで合格しようね!」


 紗奈はあおいを見送った後、小さく気合を入れて明日に備える。


 あおいも、明日のために気合いを入れて小さなガッツポーズをすると、スマホで想い人に連絡を取るのだった。

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