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ナイショの王子様  作者: 朱空てぃ
動物園デート
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第29話 だから優しい

 秋も深まってきた頃。最近恒例になっている昼休みの仲良し作戦会議中、ふと思い出したかのように、あおいがこんなことを言った。


「そう言えば、虹の国って木村先生のデビュー作だったみたい」


 昨日の台風の後に綺麗な虹がひとつ架かったのを、紗奈と菖蒲も思い出す。


「前にチャットで聞いたんだけど……。悠くん、木村先生の作品は全部持ってるんだって」


 最近は毎日のようにチャットでやりとりしていて、紗奈はますます悠のことを好きになっていた。内容はほとんど木村真昼の本についてだが、たまに学校でのことや、家族の話をしたりする。


 昨日も、試験勉強の合間にずっとやり取りをしていた。昨日は学校が休みになったので、ずっと自宅で今月末に行われる中間試験の勉強をしていたのだ。電車が動かないという理由で大学の講義が休みになった父親に、みっちりと教えこまれた。そのため、紗奈は今回のテストには自信があった。


「へえ。相当なファンだな」


 菖蒲も、紗奈からよく聞いたせいで木村真昼の本が気になってしまったらしく、父親にお願いをして一冊だけ買っもらったそうだ。


「そういや、うちの親父が言ってたんだけど、木村真昼って俳優と結婚したんだって」

「そうなの? 誰だれ?」

「それは……」


 偶然なのかもしれないが、その俳優の名前が小澤(おざわ)将司(まさし)で、悠と同じ苗字なのだ。


 菖蒲は、二人にもそれを伝える。


「え? 悠くんと同じ名前だ」

「それもあってファンなのかしらね」


。。。


『ていう話をしたんだ』


 と、昼休みに話した内容をメッセージで送ってみた。返事は少し経って、暇になったのでリビングのソファにこてんと寝転がった直後に返ってきた。


『偶然でもなく、うちの母親だよ。黙っててごめんね』


 その一文を見て、紗奈は驚いた。思わず「えっ!」と声を上げてしまったので、積み木で遊んでいた義人が驚いて固まっていた。


「わ。義人くん。びっくりしたね。ごめんね」

「ねーねもびっくり?」

「うん。私もびっくりした」


 まさかとは思っていたが、本当に悠の母親があの素敵な作品を作った木村真昼だったなんて。当然、紗奈は驚いた。


(だからあんなに綺麗な顔をしているのかしら)


 木村真昼の息子。つまりは、小澤将司という俳優の息子でもあるはずだ。俳優全員が…とは言わないが、見た目の良い人がたくさんいるイメージだった。


 悠の顔を思い出した紗奈の心臓が段々ドキドキしてきて、キュッと胸に手を当てる。


(母親の作品だから、グッズもたくさん持ってるんだわ)


『悠くんのお母さんだから、優しい作品が沢山あるんだね』


 と、メッセージを送る。そう思ったのは事実だ。悠は優しい人だと思っている。そんな悠の母親だから、きっと優しくて素敵な人なのだろう。とも。今紗奈が読んでいる作品も、どこか暖かい話ばかりだ。


『ありがとう。きっと母も喜ぶよ』

『恥ずかしいから、あんまり感想は伝えないで欲しいなあ』

『ごめん。もう言った』


 羊の落ち込んだスタンプが送られてきて、紗奈は恥ずかしいながらもくすっと笑ってしまう。


『羊のシィ』。これがきっかけで悠と知り合えたのだ。紗奈にとっても思い入れがあるし、感動した物語のキャラクターだし、何より悠がよく使っているから愛着もある。


『シィちゃんに謝られちゃったら仕方ないなあ』


 と送って、紗奈はスマホから一旦目を離し、食事の支度をしている由美に歩みよる。


「お母さん」

「ん? どうしたの?」

「私もお料理したい」


 前に母の言っていた、胃袋を掴む作戦である。この前のクッキーが「美味しかった」といい反応をくれたから、もっと沢山練習をしてどんな料理も作れるようになりたい。紗奈はそう思った。


「そうねえ。今日のは殆ど仕込みを終えちゃったから、焼き加減を見てくれる?」


 今日は魚のパン粉焼きのようだった。パン粉に混ざって色々な調味料がまぶされている。焼く前だが、調味料のいい匂いがした。


「きつね色になるまで焼くのよ」

「うん」


 じーっと焼かれる魚を見て、紗奈は飛んでくる油を警戒した。由美が傍で優しく見守っているので、いざと言う時の心配は全くないが、パチッと言う度にドキドキしてしまう。


「このくらい?」

「ええ。そしたらひっくり返しましょう」


 由美からフライ返しを受け取ると、ドキドキしながら魚をひっくり返した。その時にまた油がバチバチと騒ぐので、警戒は怠らない。


「あっ、綺麗にひっくり返せた」

「ふふ。料理の才能あるかもね?」

「そしたら胃袋バッチリだね」

「あらあら。気が早いわね……。それで、この後は蓋をして、今度は弱火で焼くのよ」


 IHの温度をボタンで調節して、紗奈は一息つく。


「今度は仕込みから教えて欲しいな」

「うん。もちろんいいわよ」

「ありがとう」


 いつか料理が上手くなったら…と先のことを想像して、紗奈は顔を綻ばせた。

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