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ナイショの王子様  作者: 朱空てぃ
仲良くなりたい
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第15話 報告

 悠が目を覚ましたら、既に朝日は昇っていた。


 部屋着でお風呂にも入らずに寝てしまったので、朝ごはんの前に急いでシャワーを浴びる。そして、部屋に戻ってきてスマホをふと見たら、昨日は無かったメッセージが一件あった。


 悠はタオルで髪を拭きながら、片手でスマホを操作する。


『悠くんが嫌じゃなかったら、本を借りてもいいですか?』


 紗奈からだった。


 あれだけ羊のキャラクターを気に入っているのだ。悠がその本を持っていることも、彼女には予想が着いていたのだろう。


 本を貸すことは嫌では無い。どころか、自分の母親の作品なので余りがある。母が貰ってきたものと、自分で買ったもの。初版本と、何冊かあるので、たとえ譲ったとしても困ることは無いのだった。


『いいよ』


 とにかく、貸すことはやぶさかでは無いので、そう返事をしておいた。


 向こうも学校へ行く準備をしているのだろう。返事は返ってこなかった。


。。。


 紗奈はマンションのエントランスで、一緒に登校すると約束をしていた菖蒲の元にバタバタと駆け寄り、興奮気味に話す。


「聞いて。悠くんが本を貸してくれるって!」

「え? なんで本?」


 脈絡もなくそう言われて、菖蒲は訝る。


「悠くんが持っている羊のキーホルダー。本に出てくるキャラクターみたい」

「ああ…あの妙に眠たげな羊?」


 男が持つには可愛らしいので、何かとあの羊は目立つ。


「目立つの嫌がってるのに、いつもつけてるよな」

「きっと大切なものなのね」


 物を大切にする人は素敵だ。と、頬を紅潮させて、紗奈はまた妄想の世界に身を投じている。


「はいはい」


 と言って菖蒲が肩を叩かなければ、そのまま妄想を続けて、学校を遅刻してしまうところだっただろう。


 それ程に、今の紗奈は彼に夢中になっているということだった。


「学校だと返しにくいだろうし、放課後にお返事するんだ」


 恋をする少女は楽しそうだ。菖蒲は幼なじみの嬉しそうな顔を見て、やはりどこか複雑で、しかしこちらも嬉しい。と分かる笑みを浮かべて見守った。


。。。


 昼休み、給食を食べ終えた後の紗奈は、あおいと、教室か廊下の窓際でお喋りを楽しむのがいつもの行動なのだが、今日は少し場所を変えて人が少ない空き教室付近の廊下で二人並んでいる。


「どうしたの? こんな所で」

「あおいちゃんにお話っていうか……」


 受験生であるためか、あおいの塾の日にちが増えてしまったので、内緒話をするタイミングもここ最近は無かった。


 あおいにはまだ、悠のことを話していなかったのだ。


 今日やっと伝えようと思って、いつもとは違う人気のない廊下にあおいを連れてきた。空き教室から出した机がいくつかあったので、それをいす代わりにして並んで座っている。


「うん。なあに?」


 あおいがにっこりと笑って聞く姿勢を取ってくれたので、紗奈はほっと息を吐く。


 そして、照れくさそうに口を開いた。


「あのね、私にも好きな人が出来たんだあ」

「まあ」


 上品に開いた口を手で隠して、あおいは目を丸くする。紗奈は更に照れくさそうにして、もじもじと指を動かしていた。


「まだちゃんと好きって感じじゃなくて……ちょっと気になってるだけなんだけど」

「そうなの? どんな人?」


 きっと紗奈の心を奪った人はかっこよくて、大人っぽい素敵な人だろう。


 そう思って、あおいは自然と温かい気持ちになる。見守るような暖かな視線で微笑むと、紗奈の答えを待った。


「この前ぶつかったって話した人」

「確か二組の子よね? からかわれてた子」

「うん。その後も少し話す機会があって……今、頑張って仲良くなろうとしてるところなの」

「そっか。紗奈ちゃんは可愛いから、きっと上手くいくよ」


 ふわりと微笑むあおいこそ可愛らしい。紗奈は少し照れながら、あおいの手を握った。


「あおいちゃんも、きっと好きな人と上手くいくよ。頑張ろ!」

「ふふふ。ありがとう。紗奈ちゃんも…お互い頑張ろうねえ」


 二人は顔を見合せてくすくすと笑った後、次が体育だったので仲良く並んで立ち上がり、別の話題に花を咲かせながら準備に向かう。

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