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ナイショの王子様  作者: 朱空てぃ
七夕祭り
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【閑話】演奏者達の控え室

 出店でご飯を食べた後、あおいは紗奈達と別れ、広場の奥にあるホールに向かう。そこの警備員にバッジを見せれば、すんなりと中に入れてくれた。


「どちらまで?」

「坂井音久くんの所です。友人でして」


 名前を記入するように促され、その通りに書き込んだ。そうしてやっと、音久の控え室まで案内してもらえる。


「こちらです。坂井様はいらっしゃいますか?」

「はい。いますよ」


 案内の人がノックをして声をかければ、音久はすぐに返事をしてドアを開ける。


「お客さんです」

「立花さん。来てくれてありがとう」


 あおいと合流すると、案内人は一礼してスっと元の位置に戻って行った。


 演奏者の控え室だけあって、音久がいる部屋には複数の楽器が並んでいる。


「ヴァイオリンだけじゃないのね」


 中にはフルートやオルガンも置いてあるので、あおいは興味を惹かれ、キョロキョロと中を見回した。


「うん。同じ奏者の人も使ってるから。今は家族と外に出てるみたいで、いないけど」

「そうなのね……」


 今この空間には二人きりだった。顔には出ないのだが、流石に緊張してしまう。


「だからちょうど良かったよ。連絡くれた時、兄さんが控え室から出ていくところでさ」

「お兄さんが来てくれてたの?」


 音久の兄と言えば、誰もが知っている有名人である。坂井(さかい)宗司(そうし)。十四歳と言う若さでプロのピアニストになり、スラッと長い足に綺麗なルックスで、十八歳になった今ではモデルとしても人気がある男だった。


「うん。演奏したがって大変だったよ。流石にプロに出演してもらう訳にはいかないしさ」

「ピアノが大好きなのね。お兄さん」

「うん」

「坂井くんのヴァイオリンはこれよね?」


 あおいが来るまでの間に音を調整していたようで、ヴァイオリンはそのまま剥き出しに出ている。


「そう。少し触ってみる?」


 と聞かれたが、あおいはブンブンと首を横に振った。


「本番前に何かあったら怖いもの」

「ふふ。そっか。じゃあまた今度だね」


 ナチュラルにまた会おう。と誘ってくれる。だから、ついあおいは口にしてしまった。


「私、坂井くんが好きだわ……」

「え? 急にどうしたの?」


 音久がポッと頬を染めるから、あおいはくすくすと笑ってしまう。好きなのはあおいの方なのに、いつも音久の方が照れさせられてしまうのだ。


「ふふ。また会ってくれるのね」

「あ、つい……」


 音久が恥ずかしそうに口元を押さえる。しかし、あおいはくすくすと余裕そうに笑って、逃がさなかった。


「嬉しいわ」

「ちゃんと返事もしてないのに、ごめん」

「あら。返事なんていいのよ。またこうやって楽器の話を聞けるだけで、きっと楽しいわ」


 あおいが笑っているから、罪悪感を覚えている音久も、ほっと息をついた。


「ありがとう。はっきりしないでごめんね」

「ふふ。そう思うなら、そうねえ…次は私のためだけに演奏して欲しいわ。……なんてね?」


 あおいはまたくすくすと笑っている。いつも余裕そうで、音久の方がドキドキしてしまう。彼女の事を好きなのかどうか、まだわからないのに……だ。それが少しだけ悔しかった。


「そう言えば、演奏者さんって男の子でもメイクをするのね?」


 今の音久は軽くだがメイクをしているようだ。


「ああ。うん。カメラが入るわけじゃないけど、舞台に上がるから……。変?」

「プロの人がやったのでしょう? 変なわけないわ。いつもと雰囲気が違って素敵よ」

「ありがと……」


 音久が照れていると、あおいは電車の中で紗奈達とした話を思い出したのか、自分の頬に手を当てた。


「私もメイクしてみたら、坂井くんは褒めてくれるかしら?」

「え? 立花さんってメイクするの?」

「普段はしないわね」

「そうだよね。そのままでも綺麗だし」

「……ありがとう」


 あおいは一瞬驚いたように目を丸くしたが、すぐに余裕そうにふわりと微笑むので、やっぱり音久の方が照れてしまうのだった。

※本日、閑話です。明日は本編に戻ります。

あおいと音久の関係もそろそろ発展して欲しいなあと思う今日この頃です。

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