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ナイショの王子様  作者: 朱空てぃ
七夕祭り
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第111話 お誘い

 紗奈の友達である立花あおいは、週に四日、地元の塾に通っている。その塾にはあおいの想い人である音久もいて、卒業以来、二人は会えばよく会話をするようになっていた。


「ねえ。立花さん」


 講義が終わって、あおいは帰ろうと思い、荷物を手に持ったところ、後ろから音久に声をかけられる。


 音久は卒業時よりも背が伸びて、今はあおいと同じくらいの目線になっている。日に日に成長する好きな人に、あおいは暖かい気持ちになった。


「どうしたの?」

「あのさ、前に俺の演奏を聞きたいって言ってくれたの、覚えてる?」

「もちろん。あなたとの会話は全て覚えているもの」


 あおいが「ふふっ」と小さく笑えば、音久の頬はほんのりと染まる。こういうところはまだまだ可愛らしい。あおいは更に笑みを深めた。


「あのさ、七夕の日に、祭りで演奏する機会があるんだ。お祭りだから堅苦しい感じじゃないし、あんまり音楽に詳しくない人でも楽しめるかなって思うんだけど……」


 音久はそう言いながら、チケットを渡してくれた。あおいはそのチケットをジッと見つめてから、音久に視線を返す。


「デートのお誘いかしら?」

「えっ!? えっと……そうしたい気持ちもあるんだけど、俺は奏者だから長い時間はいられなくて。菖蒲くんや紗奈ちゃんを連れて来てくれた方がいいかも」


(まあ、こんなもんか)


 あおいはそう思って、チケットで口元を隠す。


 考えるような素振りを見せて焦らしているが、その隠れた口元は弧を描いていた。


「わかった。紗奈ちゃん達も誘ってみる」

「うん。あと、これ。立花さんにだけあげる」


 音久がグーにした手を差し出してくるので、あおいは不思議そうな顔をして、手のひらを上に向けてやる。


「……バッジ?」


 あおいの掌にバッジが落とされ、今度はそれをジッと見つめた。


「これを持ってたら、俺の控え室に遊びに来れるんだ。菖蒲くんとかは、ぜんっぜん楽器に興味が無いから、入れてあげない」


 思わぬ収穫に、あおいはドキリとした。それでも顔に出さないのがあおいだ。ニコリと微笑んで、バッジを大事にハンカチに包む。


「坂井くんのヴァイオリンも間近で見れるのかしら?」

「うん。見れるよ。良かったらだけど……」

「ぜひ行くわね」


 あおいはニッコリと上品に笑って、そう返事をした。


。。。


 その翌日。あおいは早速三人に七夕祭りの事を話した。三人とは当然、毎日一緒に登校をしている紗奈と悠。それから菖蒲である。


 あおいの報告を聞いて、紗奈はキラキラとした瞳であおいの手をギュッと握る。


「素敵。いい感じなんだね。あおいちゃんと音久くん」

「なんとかね」


 あおいは「ふふっ」と優しく笑って、紗奈の手を握り返す。


「せっかくだから小澤と紗奈もデートしたら?」

「え? 菖蒲くんは来ないの?」

「うっ……」


 カップルに囲まれて寂しい思いをするくらいなら、遠慮したい。正直そう思ったが、紗奈はともかく悠まで少し寂しそうなので、堪えた。


 二匹の子犬が餌を前にお預けされて、しゅんと大人しくなってしまった時のようだ。


「なんだよ。可愛い女の子紹介してくれるなら考えなくもないけどさあ……」

「…誘えばうちの従姉妹が来ると思うよ?」


 と悠が言う。


「可愛い?」

「まあ……。少し男勝りだけど」


 母方の従姉妹らしい。来年谷塚を受験するらしく、前々から悠の家に遊びに来たがっていた。ただ、良くも悪くも男っぽくて無防備なので、あまり誘いたくはなかった。


 そんな彼女でも、恋のひとつでも経験すればお淑やかになるのでは無いか。と思っての提案だ。


「どんな子?」

「くせっ毛だな。ああ、紗奈のクラスの牧本さんに髪型は似てるかも。彼女と違って小柄だけど。学校でもガサツ過ぎてさ。親が俺に相談してくるのいい加減ウザイから、白鳥くんがあいつを女の子らしくしてあげてよ」


 軽くため息をついた悠は、困った顔をしてそう言った。菖蒲は今の話を聞いて、少し身構えてしまう。


「お、おお……。それはまた…大変そうな」


 菖蒲の元カノはどちらかと言えば可愛らしいタイプだった。好みに沿う感じでは無いので、恋愛に発展するかどうかは定かでは無いが、後輩として可愛がる可能性も捨てきれない。


「谷塚を受けたいんなら、まあ、そういうの関係なく連れて来てもいいんじゃね?」

「会ってみたい! 悠くんの従姉妹さん」

「楽しみね」


 みんながそう言って受け入れてくれたので、悠は声だけでもかけて見よう。と彼女の顔を思い出して頷いた。

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