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ナイショの王子様  作者: 朱空てぃ
憂鬱な梅雨の季節
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第109話 悠の寝室

 放課後になったら、紗奈はあおいからプリントの束を貰い、帰り支度をして、急いで駅に向かう。


 電車を待っている間に、母には連絡を入れておいた。由美も心配をしてくれているようで、少しくらいなら遅くなっても真人を誤魔化しておいてくれるそうだ。


 悠の家に着いて、紗奈はいつもよりも緊張した面持ちでインターホンを押す。今日出てきてくれたのは将司だった。


「あの、悠くんのお見舞いに来ました」


 悠の家にはアポイントなしで来てしまった。大丈夫だっただろうか。と今更になって心配になるが、杞憂だったようだ。


「ありがとう、紗奈ちゃん。悠の奴、この時期は毎年こうでさあ……。風邪じゃなくて、ただの梅雨バテだから。悠の部屋に入ってもいいよ」

「あ、ありがとうございます……」


 紗奈はぺこっと頭を下げてから、玄関を上がった。


「なんなら、寝込みに悪戯しちゃってもいいからね?」


 ウインクでそんな事を言われてしまい、紗奈の頬がほんのりと染まる。それくらい、悠の容態には余裕があるのだろうが、流石に悪戯なんて出来ない。と思った。


「そんなっ……。きっと熱を出したの、私が昨日無理をさせたからなんです……」


 紗奈がしゅんと肩を落とすと、将司がリビングの方にニコニコと笑いながら手招きをする。


 そのリビングを通って、ダイニングを通り過ぎ、キッチンに招き入れられる。すると、将司は小さくため息をついて、呟くように言った。


「紗奈ちゃんに心配かけるなんて、罪な息子だよね」


 紗奈が慌てて否定すると、将司は今度はくすっと笑い、冷蔵庫を開ける。

 

「悠は、この時期はろくにご飯が食べれないんだ。見て、冷蔵庫の中。今日あいつが残したご飯」

「え……? 全然食べてない」


 開けてもらった冷蔵庫の中を見た紗奈は、思わず目を丸くしてしまった。


 普段の悠は、男の子らしく紗奈よりも沢山食べている。大食らいという訳では無いが、きちんと男の子の量を平らげているはずなのに。今日の悠は、いつもの紗奈の半分程度しか口にしていないようだった。


「だから、紗奈ちゃんのせいじゃないよ。あいつの自業自得だ」


 将司は軽く呆れたようにため息をついて、どうせなら。と、作ったお粥を紗奈に持たせた。


「これくらいなら食べるだろ。紗奈ちゃんがあーん。なんてしてくれたら、もっと食欲が湧くかもね?」


「ふふっ」と笑って、将司は紗奈を見送ってくれる。


「うちの息子をよろしくね」

「は、はい……」


 部屋に入った紗奈は、解放されたままになっている悠の寝室に、初めて足を踏み入れた。将司から寝込みに入ってもいい。と許可は貰っているから、悠には悪いがそのまま入ってしまったのだ。


 ベッド脇のサイドテーブルにお粥と、鞄から取り出したゼリーを置いて、眠る悠の額にそっと手を当ててみた。


「んっ……」


 ゼリーを取り出した時の保冷剤を手に取っていたので、紗奈の手は案外冷たい。紗奈の手に擦り寄ってきた悠に、一瞬ドキリとした。熱のせいか、悠の顔は少し熱い。


 前髪を軽くあげてみると、悠の綺麗な顔が顕になる。もっと苦しそうにしているかと思えばそうでも無く、すやすやと寝息を立てて眠っている。

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