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ナイショの王子様  作者: 朱空てぃ
紗奈の誕生日
115/309

第104話 女子会

 その日の放課後。約束通り、紗奈はスイーツを食べに女子達だけでカフェに来ている。


 ただ、あんなに楽しみだったのに、悠の事を考えると胸がチクリと痛んだ。悠は「楽しんで」と笑ってくれたが、どうしても気持ちを切り替えることが出来なかった。


「アイツ、本当くそったれだな」

「ふふ。同感ー。あんなの、紗奈ちゃんが好きになるわけないじゃない」

「いい性格してるわよねー。みんなあんなのに騙されるなんて……」

「顔()()はいいものね」

「悠くんの方がかっこいいもん」


 紗奈は、悠の痛みに歪んだ顔を思い出し、苦い顔をした。こんなに人を嫌いになったのは初めてかもしれない。そう思った。


「中学の頃も、からかってくる人は嫌だったけど……悠くんに酷いことをするなら、もっと嫌い」

「紗奈ちゃん……」


 みんなが同情してくれている。それに気づいた紗奈は、暗い雰囲気にならないようにニパッと笑った。


「でも、悠くんの事をわかってくれる人もいるから、いいんだ! ケーキ、沢山食べよー?」

「うん! でも、また何かあったら言いなよ。うちがぶっ飛ばしてやるから!」


 拳を前に突き出して、千恵美はキリッと笑う。


「ふふ。チエちゃん、かっこいい!」

「あら? 喧嘩した時に来るのは私のところよね? 紗奈ちゃん?」


 あおいは対抗心を燃やし…はしていないが、くすくすとからかうようにそう言った。


「あおいちゃんも、いつもスパッと言うからかっこいいよね」

「紗奈ちゃんだってそうじゃない」


 女子達で会話をしていると、いつの間にか楽しい雰囲気に飲まれていく。


 紗奈にも笑顔が増えたので、三人はほっとした。


「それで?」

「白鳥くんが怒った惚気ってやつを聞きましょうかあ?」


 あおいがからかい顔でそう言うと、紗奈の顔がぽっと赤く染る。ふしゅーっと、途端に大人しくなってもじもじしだしたので、みんなからもニマニマとしたからかい顔で見つめられる。


「あ、あのねえ…体育祭のリベンジがしたいって……。その、き、キス…してくれたの……!」


 頬を押さえて、紗奈は小さな声で暴露する。


 あまり大きな声は出さないよう気をつけるが、千恵美達も「きゃー」と興奮した声を出す。


「どうだった?」

「え? ど、どう……っ!? えっと……。ゆ、悠くん、いつもよりもちょこっと色っぽくて…な、なんかっ、男の人……なんだなあ……って…………」


 恥ずかしいが、あの時の事を思い出すと口が止まらない。自慢したい気持ちも強いのだ。


「うひゃあ。普段優しそうな奴が急に男を見せるのって、ギャップだよなあ」

「わかるー。彼、普段から甘いこと言うけど、強引さはないもんねー」

「どちらかと言えば奥手っぽいよね」


 三人は頷き合いながら、楽しそうに盛り上がる。人の恋バナを聞くのは楽しいのだ。ニマニマと口角が上がったまま、下がらない。


 紗奈も、物凄く恥ずかしいのに嬉しくて、聞いてもらいたいことが多くて、つい言葉にしてしまう。


「半年くらい付き合ってやっとだもん……。嬉しくて。で、でも…流れっていうか……。悠くん、何回もしてきて…あんなにセクシーな顔もするんだぁって……すっごくドキドキしちゃった」


 紗奈は、ついに手で顔を隠した。物凄く真っ赤になっている。お店の中じゃなかったら、千恵美が確実にハグをしていたであろう可愛さだった。


「いいなあ。羨ましー」

「ねえねえ、プレゼントには何貰ったの?」

「えっとね、バッグ。写真があるよ」


 凄く嬉しかったので、家族でパーティーをした時に、全部並べてプレゼントとケーキの写真を撮ったのだ。


「へえ。これ? 可愛いじゃん」

「私服も結構オシャレだったもんね。センスあるー」

「ふふ。私の好きなお店のバッグなの。お父さんに聞いたんだけど、義人くんと一緒に買いに行ってくれたみたい」

「ああ。だからカチューシャの事も知ってたのね」


 今朝の会話を思い出したあおいが、納得の表情で頷いた。


「うん! 義人くんってば、もう悠くんの事をにーにって呼ぶのよ」

「家族公認じゃん!」


 照れくさいけれど、物凄く楽しい。そう思った紗奈は、他にも写真を沢山見せてくれた。


「あ、この子が義人くん?」

「弟も将来有望そうな顔立ちしてんなあ」

「でしょ?」

「てか、両親も美形!」


 家族を褒められると、紗奈はついついデレデレとだらしない顔をしてしまう。それだけ、紗奈は家族が大好きだった。


「紗奈ちゃんと小澤くんの子どもも、ぜーったい可愛いよねえ。」

「こ、子ども……」


 悠との子どもがどんな子になるのか、紗奈は想像した。


 紗奈は髪が天パだが、悠はあまり癖が無い。髪はどっちに似るのだろうか……。目はくりくりした可愛い子になって欲しい。性格は、悠に似て優しい子に育って欲しいな。そう思う。


「キスしたら、それ以上の事もすぐかもよ?」

「え?」

「可愛い下着とか、用意しとかなきゃね」

「えっ…えぇ? は、早いよ。そんな……!」


 いつか子どもは欲しいとは思う。それに、付き合っている以上、()()()()()()もいずれはするのかもしれない。そうは思っていても、恥ずかしい。


 紗奈は悠の体を見て狼狽える自信があるし、自分だって見られてしまうのだ。そんなのは恥ずかしすぎて、まだ耐えられない。


「紗奈ちゃん。初心だもんね」

「でもさー。奥手な彼も男なんだし、向こうはそういうこと、考えてるかもよ?」

「え…あ、あぅ……」


 紗奈は真っ赤に狼狽えて、家に帰った後でさえも暫くはその熱が治まらなかった。


 だから、夜に悠から『楽しかった?』とメッセージが送られてきた時に、動揺してスマホを落としてしまったので大変だった。

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