第101話 こっそり応援
今日の体育の授業では、体育館を男女で半々ずつ使うようで、全員体育館に集まっている。
「あおいちゃん!」
体育の時は紗奈とあおいがよく一緒にいる。そのおかげで、千恵美と美桜もあおいとよく話すようになった。
「あおいちゃんがくれたボディミスト、凄くいい匂いだよ。ありがとう!」
「ふふ。つけてくれてるのね」
あおいが今朝くれた誕生日プレゼントの中身だ。授業が始まる前にこっそり見て、軽く吹きかけてみた。
「えへへ。早速使っちゃった」
「それにしても、誕生日だったなんて知らなかったなあ」
高校に入ってからできたばかりの、新しい友達である千恵美と美桜には、お互い誕生日の話をまだした事がなかった。二人も紗奈の誕生日を知らなかったが、紗奈も二人の誕生日を知らない。
「そうだね。大したものじゃないけど、後でお菓子あげる」
「いいの? ありがとう!」
「来年は絶対お祝いするから!」
「ふふ。楽しみ」
今から既に、来年の誕生日が楽しみになってしまった。
「二人の誕生日は?」
「私は三月の七日よ。春の早生まれ」
名前に春らしい『桜』が入っている美桜は、やはり春生まれ。三月生まれのようだった。確かに、双子の春馬にも『春』の字が入っている。
「うちは夏生まれ。八月八日!」
「あ! 夏休みだあ。夏、一緒に遊びに行こーね?」
「ありがとう! 嬉しいよ。紗奈ちゃん!」
と、また千恵美に抱きつかれた。紗奈はくすぐったそうにくすくすと笑って、周りに花を咲かせている。
そんな紗奈を遠目で見ていたからか、悠はやる気が湧いてきた。
「余所見だ」
「あ、菊川くん……」
男子はバスケで女子はバレー。悠達のチームは、丁度試合が始まるところだった。
紗奈は待機中なので、こっそりと悠にガッツポーズを見せてくれる。千恵美達にはバレてからかわれているので、こっそりとも言い切れないかもしれない。
「ふふ」
「今日の小澤、ちょっと桃色」
「え、普通に恥ずかしいな。それ……」
悠は照れた顔で頬をかいた。
「ちょっとだけ雰囲気変わった気がする」
そう言われて、悠はドキッとする。少しでも変わることが出来たのだろうか。もしそうなら嬉しい。そう思いつつ、悠は更にやる気が湧いてきたので、ぐっと腕に気合いを込める。
「頑張ろうな」
とは言え、対戦相手の方も紗奈が観ている…という事で、凄いやる気だ。背景にメラメラとした炎が見えるような気がして、紗奈に対して何の気もない寛人としては、熱気に当てられてただ困ってしまうだけだった。
。。。
「悠くん、凄い……」
紗奈がボソッと呟く。丁度、悠がボールを奪い返した場面だった。じーっと熱の篭った顔で見つめているので、千恵美や美桜に小声ではあるが、からかわれてしまう。
「可愛いなあ」
「好きな人はかっこいいよねー?」
「う、うん……」
照れた様子で頬を押さえる紗奈は、千恵美だけでなく男子生徒達までもを虜にする。
しかし、それだけではなかった。誰を見てそんな可愛い表情をしているのだ。と試合を行っているチームを睨んでいる。
「ね、彼からもプレゼント貰ったんでしょ?」
「そう言えば…白鳥くんが怒ってたよ。俺に何でも話すって。立花が聞いてやれって言われちゃったあ」
女同士で話してくれ。と菖蒲は思っている。あおいもそれがわかっているので、苦笑して紗奈に提案した。
「放課後、スイーツ食べに行こっか。お話聞くよー?」
「いいね。それ! うちらも参加したい。いい?」
千恵美が手を挙げてそう聞くと、あおいはくすくすと笑って了承してくれた。
「もちろん」
「良かったね。丁度部活が休みの日で……」
「女子会だね!」
『女子会』。紗奈はそのフレーズにドキドキしてくる。女子会の経験なんて今まで無かった。定番の恋バナは、聞くことが専門になってしまって話せなかったのが主な理由だ。
「楽しみ……」
パッと花を咲かせるように笑うものだから、ついつい千恵美にハグされてしまうのだった。
「次ー! チームCとチームD!」
紗奈達はチームCなので、試合をする。運動が得意な千恵美が「よっしゃ!」とやる気に満ちた声でガッツを入れる。
「チエちゃん、元気だなあ……」
「紗奈ちゃんはバレー、一番苦手だもんね」
あおいにそう指摘され、紗奈はこくんと頷いた。バレーをすると、打ち方が悪いのかすぐに腕を痛めてしまうので、紗奈は一気に現実に引き戻されて、憂鬱な気分になってしまうのだった。




