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ナイショの王子様  作者: 朱空てぃ
紗奈の誕生日
111/309

第100話 さめない熱

※祝100話! 閑話などを含めるともっと前に100話目を迎えているのですが、本編としては100話です。いつも読んでくださる皆様、ありがとうございます! まだまだ続きますので、これからもよろしくお願い致しますm(_ _)m

 誕生日の翌日。今日はいつも通りのネックレスに加え、義人から貰ったカチューシャを身につけて、マンションのエントランスに向かう。


「おはよう」

「はよー。はい、誕プレ」


 菖蒲から小さな箱のプレゼントを貰ったので、紗奈はそれを大事に抱えて、お礼を言う。


「ありがとう!」

「あと、昨日のあのチャットなんだよ! き、キス……とか、生々しいんだけどっ!」


 昨日の夕方頃に、紗奈から突然メッセージが飛んできた。


 菖蒲は差出人を見た時に、どうせ悠との事だとは予想が着いていたのだが、まさかあんな報告が来るとは思わなかった。あれからずっと、菖蒲は悶々としている。


「ご、ごめん……。浮かれちゃってつい」

「あーあ。俺も可愛い彼女ほしー」


 むくれてしまった菖蒲は、紗奈を置いてさっさと歩いていってしまう。紗奈は、貰ったプレゼントを鞄にしまっていたせいで出遅れて、慌てて菖蒲の後を追いかけた。


「待ってよー! ごめんってばー!」


 駅には、相変わらずあおいと悠が早くに来ていて、談笑していた。


「あ。おはよー」

「おはよ!」


 この四人で登校するのも、いつもの光景になっている。ただ、今日はいつもと違って紗奈のカチューシャが目立った。


「あ、それ。義人がお小遣いで買ったんだよ」

「聞いたよ。悠くんのお手伝いで買ったって言ってたけど……あれ、どういう意味?」

「ああ……。うん。お小遣い稼ぎ、頑張ってたよ。それに、凄く真剣に選んでた」


 足りなかった分を払った。とは言えず、悠は苦笑して誤魔化した。手伝ってもらったことも事実だし、わざわざいう必要もないと思ったのだ。


 あおいが紗奈のカチューシャを褒めており、紗奈はニマニマと嬉しそうな顔で義人の良さを語る。


 最近は、紗奈からの報告と言えば悠のことが多かったので、久しぶりに義人の惚気話が聞けたあおいは、いつもより満足気な顔で笑っていた。


「なあ……」

「ん?」

「……いや。やっぱりなんでもねえ」


 昨日の紗奈からのチャットのせいで、菖蒲は悠の顔の、主に下半分をつい見てしまう。昨日の出来事を聞こうとしたのだが、菖蒲は途端に照れくさくなってさまい、そっぽを向いて誤魔化した。


 しかし……。


「聞いたんだろ。キス」

「んぐっ……」


 そんな態度ではバレバレだ。悠は「ふふっ」と小さく笑うと、唇に人差し指を当てる。


「早く彼女作らないと、本当に糖分過多になっちゃうよねえ」

「うっ……。つーかさ、止めろよ」


 菖蒲はがしがしと頭をかいて、「彼氏なら手網を握っておけ」と憤る。毎回あんな報告を聞いていたら、本当に糖分過多で糖尿病にでもなってしまいそうだ。それくらいに甘い。


「別に。白鳥くんならいいかなあ……。と言うか、紗奈だって信頼してる人にしか話さないだろ」

「そうだとしても……。浮かれたチャットが毎回毎回……」

「俺も惚気てあげようか?」


 悠がニヤーっと笑って言うと、菖蒲が恥ずかしそうにキッと睨んでくる。


「本当、覚えとけよっ!?」


 少しだけ声が大きくなってしまったので、紗奈に「しーっだよ」と怒られてしまった。


「そうだ。悠くん」

「何?」


 今度は、紗奈から悠に耳打ちをされる。


「お手紙、すっごく嬉しかったよ。ありがとう……」


 手紙の話は少し照れくさかったが、紗奈がふわっと可愛い笑顔を見せてくれたので、悠も自然と笑顔になった。


 そんな様子を、菖蒲はやはり辟易した表情で見つめているのだった。


。。。


 教室につくと、紗奈は案の定、千恵美のハグを受ける。その隙に菖蒲がスっと自分の席に向かうのがいつものパターンだ。


「今日のカチューシャ、超可愛い!」

「えへへっ……チエちゃん、ありがとう」


 紗奈が千恵美にハグをされるのは、このクラスでは恒例のようなものになりつつあった。誰も驚かないし、くすぐったそうに笑う紗奈も、たまに戸惑ってしまう紗奈も、可愛い。


 男子達は、そんな紗奈をいつも微笑ましげに見つめている。


「珍しいね。いつもはシンプルなのに」


 今日はオシャレだ。と褒められて、紗奈は嬉しくなった。デレッと表情を崩して、紗奈は言う。


「昨日、義人くんが誕生日プレゼントにくれたの!」


 そんなはしゃいだ紗奈の声が、教室内にいる全員の耳に入り、どよめく。


 特に男子達は焦ったように、口々に言った。


「よ、義人って誰!?」

「まさか……」


 彼氏かどうかなんて聞いたら、絶望する答えが返ってきそうで、男子生徒達は尻込みする。


 桐斗ですら紗奈をじっと見つめるだけで、何も言葉を発しなかった。


 とは言え、千恵美達も不思議そうな顔をして首を傾げている。紗奈の恋人は悠のはずだ。そう思った。


「義人くんは弟よ。小一なんだ。お小遣いで買ってくれたんだって! すーっごく可愛いのよ」


 満面の笑みでそう言われて、男子達はほっとする。と同時に(可愛いのは君だ)と思った。


「へえ。弟がいたんだ?」

「うん。歳が離れてるせいか可愛くて可愛くて……」

「小一じゃあ、確かに離れてるよね」

「そうなの。私の事ねーねって呼んでくれてね? この前なんか、家族にお手紙を書く授業で、私宛に書いてくれたんだよー!」


 義人の話だから、いつもより紗奈のテンションは高めだった。


 男子達にとっては嬉しい表情が沢山見れてホクホクなのだが、女子達は面白くないようだ。「いい姉アピールがウザイ」と、ヒソヒソ紗奈に聞こえない声で話していた。


「溺愛してるんだねえ」

「えへへー、うん!」


 ちなみに、紗奈は義人の話をしようと思うと延々と出来てしまうので、ここで菖蒲のストップが入る。


「もうすぐ先生来るからストップー。義人暴走入りそうだろ。お前」

「だって……」


 まだ話し足りない……。と思った紗奈は、もの惜しげに菖蒲を見る。しかし、菖蒲にキッパリと首を横に振られてしまった。


「自分の世界に入ったら先生の声聞こえなくなるんだから、本当その辺にしとけって」

「はあい……」


 菖蒲に言われて、渋々と義人の話を辞める。紗奈が席に鞄を置いた直後、本当に予鈴が鳴ってしまったので、急いで教科書を出して準備をする。


 なんとか先生が来るまでに間に合ったようだ。菖蒲がチラッと紗奈を見たら、丁度準備を終えてほっと息をついているところだった。

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