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ナイショの王子様  作者: 朱空てぃ
紗奈の誕生日
110/309

第99話 悠からのお祝い

 暫く無言の時間が続いた。


 何度かキスを交わした後、二人とも恥ずかしくなってしまい、俯いたまま並んで手を繋いで黙りこくっていたのだが、「そろそろ……」と、悠が声をかける。


「紗奈。アルバムしまってくるから、待ってて」

「う、うん……」


 紗奈は悠を見送った後、頬を押さえて思考する。


(うわぁ。うわぁーっ……。悠くんとキスしちゃったー…。今日の悠くん、なんだかちょっと色っぽかったなあ……)

 

「紗奈」


 紗奈が悶えていると、不意に声がかかったのでハッと顔を上げる。すると、お皿に乗った一切れのケーキが目に入った。


「誕生日おめでとう。家でも食べると思ったから、小さいケーキだけど…許してね」

「わ……。う、嬉しい! ありがとうっ!」


 いちごのショートケーキに、チョコのプレートが乗っかっている。『HAPPY BIRTHDAY』と、ホワイトチョコレートでアルファベットが書いてあるプレートだ。


「はい、フォークもちょっと冷たいかも。冷蔵庫に一緒に入れてたから」


 悠の寝室には小型の冷蔵庫がある。よくそこに自分で買ったおやつや、起きて喉が渇いた時に飲むためのお水が入っている。


「ううん、平気! 私だけで食べていいの?」

「うん。紗奈に買ったケーキだからね」

「い、いただきます……」


 紗奈は一口食べると、片手でほっぺたを押さえてキラキラと顔を輝かせた。


「美味しい……! このケーキ、すっごく美味しいよ。どこのケーキ屋さんで買ったの?」

「知り合いがやってるケーキ屋。東京から宅配で送って貰った。気に入ったなら、今度デートで行こう?」

「えっ、嘘!? 私のためにわざわざ…ありがとう」


 紗奈は驚いて、今度は口元を手で押さえていた。

 

「紗奈に喜んで貰えたし、買ったかいがあるよ」


 悠の言葉や優しい表情に感極まって、紗奈は満面の笑みと、気持ちが溢れ出した。


「悠くん、大好き!」

「ふふ。俺も」


 本当に美味しくて、少し勿体なくて、紗奈は悠をチラッと見つめると、一口分のケーキをフォークで刺して、悠の前に差し出す。


「悠くんも食べて? 本当に凄く美味しいの」

「俺もお気に入りの店だから知ってるよ。それ、紗奈のなんだから独り占めしなよ」

「一緒に食べたいの……」


 なんて可愛いことを言われたら仕方がない。悠は差し出されたケーキをパクッと口に含んだ。


「うん。相変わらずいい腕してる」


 もぐもぐと口を動かして、悠もケーキの味を堪能した。


 紗奈がケーキを食べ終えたら、悠はもうひとつ用意していた袋を渡す。中身は当然、義人と一緒に選んだバッグ。それから手紙だ。


「はい。誕生日プレゼント」

「え? 今のケーキは?」

「誕生日ケーキだろ?」

「プレゼントも貰っていいの?」

「もちろん」


 紗奈は、悠からプレゼントの包みを受け取ると、そわそわとして、悠を見上げた。


「開けてもいいですか?」

「はい。どうぞ」


 悠はくすくすと笑って、開けるように促した。


 紗奈は、ドキドキしながらそーっと包みを開ける。その包みには見覚えがあった。好きなお店のラッピングである。


「か、鞄?」

「うん。紗奈に似合いそうだと思って。好みに合わなかったらごめん」

「ううん! 凄く可愛い! リボンチャームが凄く素敵」


 紗奈はぶんぶんと首を横に振って、キラキラと嬉しそうな表情でバッグを見つめる。

 

「ふふ。そこ、好きそうだなって思った」

「嬉しいよ! 二つもプレゼントもらっちゃった」


 ギュッとバッグを抱きしめて、嬉しそうに頬を染めている紗奈はやはり可愛らしい。


 悠は、(喜んでもらえてよかった)とほっとした。それと同時に、手紙はここで読まれると恥ずかしいので、(気づかないでくれ)とハラハラした気分にもなった。


「あ、本当は三つかも」

「え?」


 もしかしたら気づかれたかもしれない。と思ったが、そうではなかったようだ。


「バッグと、ケーキと……。キスも、してくれた」


 紗奈は頬を染めつつ、蕩けた表情で「最高の誕生日だ」とはにかんだ。


 そんな風に微笑まれると、また紗奈に触れたくなって困ってしまう。


 悠は邪な気持ちを必死に振り払うと、そろそろ遅い時間なので、紗奈をマンションまで送る。


「悠くん! 今日はありがとう! 楽しかったし、とーっても嬉しかった!」


 マンションのエントランスにつくと、紗奈は名残惜しそうに振り返って、悠の手をギュッと握る。

 

「こちらこそ。紗奈、最後にもう一回。誕生日おめでとう。家でのパーティーも楽しんでね」


 それに応えるように紗奈の手を握り返して、悠は微笑む。この後離さなければならないのが、少し寂しいと思ってしまった

 

「うん! 悠くん、また明日ね!」

「また明日」


 紗奈を見送った後、悠は「ほーっ」と長く息を吐いた。そして、自分の指で唇をなぞる。


「俺まで貰いすぎだ」


 そう呟いて、紗奈の恥ずかしそうな、艶っぽい表情を思い出して赤面してしまうのだった。

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