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ナイショの王子様  作者: 朱空てぃ
紗奈の誕生日
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第98話 リベンジ

 アルバムは寝室の方の棚に入っているらしく、悠は今日も閉じていた、寝室に続くドアを開いた。


 「待ってて」と言われたので、紗奈は大人しく座って待っているが、悠が普段寝ている場所がどんな空間なのかが気になってしまった。覗いてしまいたい誘惑と戦いながら、紗奈はじっと緊張して、待つ。


「お待たせ。小さい頃のはこれ。子役時代だね」

「あ、私これのブルーレイ持ってた。菖蒲くんが好きな映画だよ」


 ある写真の下に書いてある文字を指さして、紗奈は言う。確かに、そこには映画のタイトルが書かれていた。


「ああ。この作品、俺はほとんど映ってないけどね」

「確かに……どこで出てたの?」


 その映画と言うのは、アクション色もあるラブコメで、主人公の新人教師が意中の同期先生を射止めるために、校内の様々な問題を解決する。舞台は学校だが、その学校というのが高校なので、この頃の年齢の悠がどこで出てきたのか、紗奈は覚えていなかった。


「言ったでしょ。ほとんど映ってないって。煙草で停学になる男子高校生役の弟。セリフも一つだけ」

「あ! わかった!」

「お兄ちゃん、なんで学校行かないのー!?」


 今も健在の演技力を悠が披露すると、紗奈がくすくすと笑ってくれた。声変わりがとっくに終わっているせいで、もう子どもらしいあどけなさは無かったが、聞いたことのあるセリフについ、紗奈は我慢が出来なくなってしまったのだ。


「うるさいって怒鳴られてた」

「そうそう。後は泣き声だけで、もう出てこない」

「そっかあ……。悠くんは他の映画にも沢山出てるんだよね。私、知らないうちに悠くんのこと、たくさん見てたかもしれないね」

「大抵の人はそうかもね」

「あんなことが無かったら、悠くんは私には手の届かない人だったのかもしれないんだ……」


 そう思ったら、少し寂しかった。紗奈は子役時代の悠が写っている写真を優しく撫でつつ、パラパラとアルバムを捲る。


「それを考えたら、あの時嫌がらせされてたのも悪くないのかもな」


 悠が独り言のようにボソッと呟くと、紗奈はページを捲る手をピタッと止める。

 

「それは違うよ! 何も悪くない悠くんが酷い目に遭うなんて、おかしいもん!」


 紗奈は怒った顔をして、悠をじーっと見つめる。


「そんなこと言っちゃやだよ」

「…ごめん」


 悠が眉を下げて謝ると、紗奈も眉を下げる。しゅんと落ち込んで、胸を軽く押さえて俯いてしまった。


 自分のことでこんなにも心を痛めてくれる紗奈が愛おしい。悠はそう思いながら、スルッと撫でるように、紗奈の頬に手を添える。


 すると、悲しげに伏せられていた紗奈の目が、まん丸に見開かれた。


「悠…くん?」

「紗奈……。リベンジ、してもいい……?」

「え?」


 なんの事だか分からなくて、紗奈は聞き返す。悠が真っ直ぐに見つめてくるから、ぽーっと目が離せないで惚けてしまっている。

 

「キス……してもいい?」


 サラッと、髪が悠の手で耳にかけられる。頬から頭の横に移動した手が、紗奈の髪を優しく撫でた。コツっと悠が額をくっつけて、悠の瞳がジッと見つめてくる。甘い視線が紗奈を射抜いた。


「紗奈……」


 悠の口から甘い吐息が漏れる。それが名前を呼んだので、紗奈はビクッと肩を震わせた。


 ドキドキして胸が苦しい。悠の甘い表情は、紗奈を溶かしてしまいそうだった。


「うん……」


 紗奈が緊張気味にギュッと目を瞑ったので、悠は愛おしそうに口端を上げる。


「可愛い」


 と小さな声で呟いてから、そのまま紗奈に口付ける。

 

 紗奈の唇は柔らかくて、どこから漂うのか、甘い香りがした。


 瞳を開ければ、紗奈の目が潤んでいるのが見える。顔は真っ赤になって、触れる手にも伝わってくるほどに熱くなっている。そして、唇は艶めいて見えるものだから、悠はゴクリと息を飲んだ。


「悠、くん……?」


 いつもよりも湿っぽい声が、悠の名前を呼ぶ。それに反応するように、悠はもう一度紗奈の唇を、自分の唇で堪能した。

※再三言いますが、煙草はダメですよ。これはフィクションですのでね。

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