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第０話 王子様
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『王子様とお姫様はいつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし…』
母の優しい声を聴きながら、キラキラとした瞳で絵本の中の王子様を見つめる少女。北川紗奈の一番古い記憶だ。
「私、大きくなったら王子様と結婚するの！」
「あらあら。この前まではパパと結婚するって言ってたのに」
母は優しく微笑んで、紗奈の頭を撫でてくれる。柔らかく大きな手が心地が良くて、うとうとしてきた。
「パパとも結婚するもん。パパと王子様と…ママと一緒にずっと暮らすの！」
無邪気に笑う紗奈に対して、母はくすくすと笑って言った。
「いつか、あなたの王子様が見つかるといいね」
「うん……」
優しく撫でられながら、母の声を遠くに聞く。いつか結婚する王子様を思い浮かべて、紗奈はその小さな瞳を閉じた。
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