東方project「因幡てゐ」の過去を想像して書いてみた
書けることなどあんまりない!
だってしょうがないじゃないしょうがないじゃない。
え、真面目に書いて?
お言葉ですが……やなこった!
(こいつどんだけ東方使うんだ…?)
※この作品は東方projectの二次創作小説です。
あ~あ。このまま私、死ぬんだな。
名もない野良ウサギで終わりたくなかったな。
妖怪ウサギになりたいなんて思わなきゃよかった。
子供に蹴っ飛ばされて死ぬ。
笑えるじゃないか。
死神への土産話に丁度いいわ。
でも、まだ生きたいよ。
「……くぅん」
ああダメだ、声が出ない。
はあ、おとなしく死ぬかぁ…
「あらウサギさん、大丈夫?!」
幻聴かな?まあいいや…
白が紅に染まりゆくのを眺めながら、魂がはがれていくのを感じた。
「くぅ?」
体があったかい。
よくわからないけど生きてたみたいだ。
「あっ、起きたのね。お母さん、ウサギさんが起きたわよ。」
あれ、この声って、幻聴かと思ったやつだ。
この少女が助けてくれたのかな。
おぉ、立ち上がれる。
跳ねたりもできるな。
「よかったー。死んじゃったかと思ったのよ。」
「くぅん♪」
「私が作った薬、効いてよかった。今日からあなたは、私の家で飼うからね。」
「くー!」
「そうだ。名前を付けなきゃね。えーと、てゐ!いい名前じゃないかしら?」
「く~!」
優しい子だな。
薬も作れるとか。
名前ももらったし。
感謝しかないな、この子には。
あれから十年ほど。
私はおいしいごはんをもらって。
ピカピカほかほかの庭で昼寝して。
幸せな毎日だった。
あの子ももう少女とは呼べない。
それはもう美しい女性になった。
あの子の両親は死んでしまったが、あの子はいつも前向きだった。
そんなある日、あの子は私にこう告げた。
「私ね、月に行くことになったんだ。」
私としては応援したかった。
でも寂しかった。
目から涙がこぼれた。
するとあの子も泣き出してしまった。
「私だってさみしいよ。でも、仕方がないから…。」
「くぅん…」
「ごめんね。でも、てゐは森に返さなくちゃ。」
私が泣いてたらこの子も悲しんじゃう。
私はもう一度、ある決意をした。
森に帰る日。
そして、あの子が行ってしまう日。
「じゃあね…」
「くぅん…」
あの子はもう見えなくなっていた。
それから私は、森の奥深くで、毎日修行を続けた。
妖怪ウサギになるために。
あの子がいつか戻ってきた時、おかえりと言うために。
いくら待っても戻ってこなかったら、もう月に行こう。
そう心に決めて。
なにせ私には、もうあまり時間がない。
今の年齢でもウサギにとってはかなりの長寿だから。
野良だったころの本能も忘れていた。
でも私はひたすらに修行を続けた。
あの子のためにも。
自分のためにも。
妖怪にならなきゃいけないから。
私は死を覚悟していた。
そりゃ当たり前だよ。
のんびりと安全に生きていたのに、急に体に負荷をかけたから。
もう無理だとわかっているのに。
生きなきゃ。あの子に会うために。
あんなに私をかわいがってくれたあの子に。
少しも恩返しできてないあの子に。
寂しそうに瞳を揺らしたあの子に。
会わなきゃ。
今死んだらもう会えないから。
だんだん意識が遠のいてきた。
ああ、今度こそ無理なんだ………
「くーっ」
あれ、また生きてる。
とんだ奇跡だ。いや、違うな。
三日三晩寝てなかったから、寝ちゃっただけっぽい。
何やってんだろう。
ちゃんちゃらおかしいわ。
まあ、次こそ死ぬかもしれないし、健康には気を遣おう。
とりあえず今日はゆっくり休もう。
死んだらもうどうしようもないから。
あの子は今どうしてるかな。
また幾年か経った。
ある日、自分に僅かな妖力が宿っていることに気づいた。
健康に気遣って長生きしたからかもしれない。
ここからもっと頑張れば妖怪変化ができるかも。
そしてまたしばらくして、妖力がだいぶ増えてきた。
これならいけるかもしれない。
妖怪変化の術をやってみよう。
そう思い立って、早速開けた場所で試した。
「くぅぅ…」
少し苦しい。
でも、なんだか体が変化している気がする。
視界が高くなっている?
人間らしい手になってる!
「…やった。」
成功だ!声も出る。
私は妖怪ウサギになれたのね!
それから私は、人間に退治されないように修行を続けた。
といっても、無理はせず、コツコツと。
前のようになって死にかけるのは御免だもの。
月に行くにしても力がなければ到底無理だし。
それに、今死ねば、未練が残って怨霊になってしまう。
人間になるべく会わないよう、住処も森から竹林へ移した。
そのうち、ウサギを妖怪ウサギに変えて従えるようになった。
妖怪ウサギたちは、因幡の白兎になぞらえてイナバと呼ぶ事にした。
ついでに、私の苗字も、『因幡』にした。
雑用をさせたりだとか、イナバは結構便利に使える。
その時間を修行と休息に費やした
そのうち、妖力もそれなりのものになってきた。
「てゐさま~。」
「あら、どうしたんだい?」
「てゐさまって、きっとお強いんでしょうね。」
「それを言いに来たの?」
「はい~」
まあまあ、あきれたもんだ。
「まあ、長く生きちゃいるが、隠れ暮らしてたから、実戦経験はあんまりないね。」
「そうなんですか~。」
「そうだよ。わかったら持ち場に戻りな。」
「は~い」
そう。
隠れ暮らしてたせいで、いや、お陰で、かな。
百年から先は数えてないけど、だいぶ誰とも会っていない。
イナバは除くけど。
その百年以上を費やしても月に行く方法は見つからない。
もう月に行くのはあきらめていた。
あんな優しい子が故郷を捨てるとは思えない。
変わり果てていても、必ず戻ってくる。
不思議な確信があった。
あれからもうどのくらいたったんだろう。
私は数え切れないほどの年月を過ごした竹林に、新しいものを見つけた。
それは立派なお屋敷だった。
警戒に当たらせているウサギが気付かないってことは、私がどこかで得た力なんだろう。
コンコンッ
私は扉をこぶしで叩いた。
あの子は家を訪ねる時、よくこうしていたから。
懐かしんでる場合ではない。
今では私はこの竹林の主だ。
勝手に入ってこられては困る。
ここはちゃんと、きっぱり言ってやらなきゃ…
「はい、どちら様?」
この声、聞き覚えがある…、まさか!
ガチャリ
「!?」
まさしくあの子だった。
来ている服も違うし、貫禄が出たような気もするけど。
え~と、あの子の名前は…、
「八意様、大変お待ちしておりました。」
「詳しく聞かせて。」
私は家に上げてもらった。
「わたくしのことを覚えていらっしゃらないのも無理はない。遠い昔のことですもの。」
自分でそんなことを言ったけどほんとはすごく悲しかった。
「えっと、私、あなたに会ったことあるかしら。それに、私の苗字を知っているなんて…」
「まあ、お忘れでしょう。わたくし、貴方様に名前をいただいたウサギにございます。」
「…?!まさか、私が地上の人間だった時の…?」
覚えていたんだ!忘れていなかった。私の今までは無駄じゃなかったんだ!
「そうにございます。もう一度お会いしたく、こうして待っておりました。」
「じゃああなた、てゐなのね…!」
「ええ、ごほっ、そうです。よかった。お変わりなきようで。」
こんなに待ちわびてはいたけれど、冷静でいなきゃ。
かなり無理はしてるけど、ここで泣いたら絶対止まらないから。
「私ももう一度あなたに会えてうれしいわ。お茶でも出すわね。それにさっき咳が出てたでしょ。体に傷
もある。さっと薬を作っちゃうわね。」
というと、私の前で薬を作り始めた。
手法こそ変わっていても、あの時の薬と同じ、苦くて甘い懐かしい味だった。
ゆっくり味わっていると、ガラッと障子が開いた。
「永琳、あなたそこで何をしているの?」
「あ、姫様、申し訳ありません。」
姫…?今はお姫様に仕えているのか。やるなあ。さすがだね。
「そこのウサギは誰かしら。地上のにしては強いわね。」
「お初にお目にかかります。わたくし、八意様が地上人の際にお助けいただいたウサギ、因幡てゐ
にございます。」
そうだ。今ここの家の主はきっとこの人だ。
この人に気に入って、認めてもらわないといけない。
「あなたが何の用?」
「その前にあなた様のお名前をお伺いしたいのですが。」
「あら、気にいった。私の眩しさに負けないわね。いいでしょう、私はね、月の姫、
蓬莱山輝夜よ。」
それから私は、お姫様とあの子、いや、八意様に私の過去を話した。
お姫様も、自分の過去を話してくれた。
「それであなたはなぜここに来たのかしら?」
「私が出たとき驚いてたので、元から知っていたわけじゃないのですよね。」
「まあ、一応この辺の竹林の主なんでね。勝手に入られちゃ困るって、くぎをぶっ刺しに来たんですが。
命の恩人となると、あんまし強いことは言えないんで。それで考えたんですが、協定を結ぶのはい
かがかと。」
本当はあんまりどころじゃない。強いことなんて言っちゃ、地獄に落ちる程度の恩はある。
でも、勤めて冷静に。涙腺は後で崩壊させよう。
「どういうことかしら。」
「私はここら一帯の主です。沢山の妖怪ウサギを使役できます。その代わりに、私達を仲間とし、
危険が迫った時守っていただきたい。どうです、損はないかと。」
噓。ただ私が八意様に会えるだけ会いたいだけ。
噓なんて数えきれないほどついてきたし、ばれてはないはずなんだけど。
「姫様、わたくしからもお願いいたします。あの時、命を救えたことが、私の道を決めたのです。」
「あら、この子のおかげなのね。いいでしょう、この永遠亭の一員として迎え入れてあげる。」
「ありがたき幸せ。」
よかったー!ほっとした。これからコツコツ恩を返していかなくちゃ。
「あと、八意様、のことをお師匠様と呼ばせていただいても?」
「いいですけど、何の師匠なの?」
「なあに、これからいろいろ教わるつもりですから。それに、万が一他人に見つかった時、ボロが出ると
いけませんでしょ。」
私のことがばれると、同時に八意家の昔が少しばれる。
そうなると〝わが主″にも迷惑なはずだから。
「うふふ。てゐってこんな性格だったのね。」
「まあ、数え切れぬほどの時がたっているのです。性格だって変わりましたよ。」
「そうよね…、私だってそうだもの。」
「あなた様はお変わりないよう見えますが?」
……くすくすっ
うふふふっ
こうして私は、無事に命の恩人と再会できたのでありました。
この後、鈴仙・優曇華院・イナバという玉兎が月からやってくるのですが、鈴仙は何となくお師匠様が
てゐに甘い気がしたりしなかったりするのでした。
終わりぃ!
いかがでしたか?
まあまあ頑張りました。
時系列だとかは結構ごり押しです。
まあ、読めたら問題無し!