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令嬢は隣国の王女に救われる

作者: はち


「ベルメール・フォトナー、聞いたぞ貴様の数々の非道な行い!我が愛しのルミナリアへした仕打ち、到底公爵令嬢がとる行動とは思えぬ。貴様との婚約を破棄する!」


「そ…んな…私は何もっ」


「証拠は充分に揃っている、今更言い逃れはできないぞ。」


「私は…何もっ…(ガクッ)」


ザワザワ


ーカツンッーカツンッー


「ベルメール嬢、お立ちなさい。そして涙を拭なさい。」


「っ!貴方様はっ!」


「おい貴様。一体誰の許可を得てその女に声をかけている」


「…(ギロッ)」


「殿下ぁ。あの方生意気にも殿下のこと睨んでますよ〜」


「でっ…殿下この方は「なんだその目は!?メガネ地味女が、この国の第二王子である俺に楯突くとは!一体どこの家の(チャキッ)


私に無礼を働いたんだものうちの騎士達が黙っているわけない。まぁさすがにすぐさま剣をむけて囲っちゃうとは思わなかったけど…。


「メガネはこの瞳を隠すため、髪留めは認識阻害魔法、でもその2つをとった今なら分かるわよね?私が、ど、こ、の、だ、れ、なのか。」


紫の宝石眼、それが我が王家の特徴ですもの。


「っ…失礼致しました。キャリングストン王国第一王女リティアーナ・キャリングストン殿下にご挨拶申し上げます。」


グリード王国(ここ)の隣国でありながら武力、財力、国力すべてにおいて圧倒的な力を持つ我がキャリングストン王国。

その唯一の王女が私だ。上に3人の兄を持つ末っ子である私の家族からの溺愛ぶりは国境を超えて広まっている。

つまり、そんな私にこのバカは無礼を働いたのだ。


「ですがっ…いきなり現れるのは如何なものかと」


「いきなり?私は正式に国王陛下に招待されてこの場にいるのですよ?出席するというお返事も事前にしております。確認されなかったのは貴方でしょう。」


「ゔっ…し、しかし…なぜその女を助けるのですか!その女は令嬢らしからぬ非道な行いを!」


「まず、こんな大勢の前で見せ物のようにされてる人を放っておくことはできないですし、婚約者がいながら"我が愛しの"と言ってる時点で貴方に彼女を責める権利はありません。そして非道な行いに関しては、どこの国も王族の婚約者には王家の影を付けているはずなので、そこで彼女の行動を確かめた方が早いかと。」


「そ…んな」


「あぁ、もちろんそこにいる貴方もただでは済まなくてよ。王族への虚偽証言、証拠捏造、公爵令嬢を貶めた罪、そして他国の王族である私に向かって"生意気"なんて…命が惜しくなかったのね。」


「そっ、そんなぁっ!謝ります!すみませんでした!許してくださっーガシッー痛っ!」


あらら。一応女の子なのに騎士に頭を鷲掴みされちゃって可哀想に。でもしょうがないのよね。

このバカ王子はまだ王族だから私と対等(笑)で話が出来るだけで、こちらが求めてもいなければ発言を許可したわけでもないのに勝手に話しかけてくるんだもの。


「さて、これ以上話すことはないわ。追って処分が下るでしょうから。…ベルメール嬢行きましょう。」


「はっ…はい!」


こうして、婚約破棄騒動は幕を閉じた。

後日、フォトナー公爵家は国王に猛抗議、キャリングストンからも圧をかけられ第二王子は身分剥奪と国外追放、件の令嬢は一族もろとも身分剥奪、地下牢獄送りになった。

そして、現在キャリングストンへと帰る馬車の中。


「王女殿下、これからよろしくお願い致します。」


ベルメール嬢は私の侍女になった。

それに伴ってフォトナー公爵家もグリード王国を捨て、キャリングストンに来る運びとなった。

元々公爵夫人の実家が我が国の侯爵家だったため手続きはすんなりといったようだ。


「王女殿下、娘を助けて下さりありがとうございました。」


「まさかあのバ…第二王子がそこまで無能だと思わず…」


「ふふっ私も優秀な侍女ができて嬉しいのよ。あの時ベルメール嬢はすぐに私が王女であると理解し、あのバカの発言も止めようとしたわ。きちんと教育がなされていた証拠ね。」


あのバカは女にかまけて自分の業務すら疎かにしていたのだから、遅かれ早かれ王家から出されていただろうけど。


「あの、ずっとお聞きしたかったのですが、殿下はなぜ見ず知らずの私を助けて下さったのですか?」


「それは…」


"りーちゃん!"

"あはは!りーちゃん!"

"私たち、ずーっと友達だもんね!"

"りーちゃんっ!危ないっ!"


「ふふっ…また今度ね!さて、改めてようこそ我が国へ。」


腑に落ちないという顔をしながらもそれ以上は何も言ってこなかった、、というより王宮に直行したおかげで、王族への挨拶やら入宮手続きやらで目まぐるしすぎて、気にする余裕がなかったの方が正しい。

私にとってはよかったけどね、理由なんて言えないもの。


「私達、親友だったんだよ…」


そう、前世で私達は親友だった。

あの日も2人で遊んだ帰りに、信号を渡っていた私目掛けてトラックが突っ込んできたのだ。

"りーちゃん!危ないっ!"それが最後の光景だった。

目が覚めるとあの日2人で話していた小説の世界だったのだ。私はその小説の続編で出てくるはずの隣国の王女に、そして貴方はヒロイン登場により婚約破棄される悲運の令嬢になっていた。

それにしても、小説では断罪シーンなんてなかったのに…。

もしかしてあのヒロインも転生者だったのかしら。

まぁ、今となっては確かめようもないけれど。


コンコンッ


「本日付でリティアーナ・キャリングストン王女殿下付き侍女となりました。ベルメール・フォトナーです。よろしくお願い致します。」


「よろしくベルメール、普段侍女達は私を姫様と呼ぶの。貴方もそうしてくれる?」


「はい!姫様!」


こうして私達は他愛もない日々を過ごした。


ー2年後ー


ベルメールは王宮騎士団の副団長と結ばれ、私は帝国へと嫁ぐことが決まった。

お兄様達はギャン泣き、使用人達も泣き叫び、騎士達は魂が抜けて、お父様は落ち込んでいた。

お母様は唯一意欲的で色々準備を手伝ってくれた。

別に嫌々嫁ぐ訳じゃないのに。むしろ帝国の皇太子であるジェラルドは幼馴染で気心知れてるし、いつか結婚するのかなって思っていたくらいだ。


「グスッ…姫さまぁ〜っ…私もっ…着いて行きたかったっ」


そりゃ他の侍女たちは独身だから行けるだけで、家庭を持っている人を連れて行くことは出来ないからね。


「ベルメールったら…なにも一生会えなくなる訳でもないじゃない!たまには遊びに帰ってくるわ!あなたのお腹の子にも会わなきゃだしね!」


なんだか感慨深いなぁ。親友に子供がいるなんて…。


「絶対ですよっ!…手紙もください!夜更かししすぎないように、窓は開けたらちゃんと閉めてから寝てくださいね、食べ物は好き嫌いせず、1人で街にでちゃダメですからね、それから「もー!大丈夫だって!心配しすぎよ!」


全く、こういうところは前世から変わらないんだから。


コンコンッ


「時間ね。ベルメール、今日の私どうかしら?」


「とても愛らしく美しいです。」


「ふふっありがとう。じゃあ行ってくるわ。」


ガチャッ


「っ…綺麗だ、リティ。」


「ふふっ…貴方も素敵よ。ジェラルド。」


結婚式は帝国で行うため、キャリングストンでは婚約式と王国を回るパレードにより国民に別れを告げる。

そして、パレードが終わりついにここを離れる時が来た。


「ゔわーんっ…リティ〜っ…行かないでくれーっ…」

「「姫様ぁ〜っ…」」

「ジェラルド〜っ…お前よくもリティを〜っ」

「「我らの姫様がぁ〜っ…」」

「何かあったらすぐ帰ってこいよ!絶対だぞ!」


やれやれ。どうなってるんだこの国は。さっきもパレード中喜んでる人より泣いてる人が多かった。


「リティアーナ。私の可愛い娘。気をつけていってらっしゃい。たまには遊びに来るのよ。」


「はい!お母様!」


「リティアーナ。離れていても愛している。何かあったらすぐ連絡しなさい。…ジェラルド、わかっているな。」


「ははっ…身に染みております。」


ぎゅっ


「お父様、お母様、愛してるわ。これからもずっと。」


ぎゅっ


「お兄様達も元気でね。あとは頼みました!お義姉様方!」


最後に…


「ベルメール…幸せになるのよ。子供が産まれたらすぐに連絡してね、駆けつけるから。"私たち、ずーっと友達よ!"じゃあ、またね皆んな!」


ジェラルドの手を取り馬車へ乗り込む


「え……………あっ………りー…ちゃん」


っ!


「嘘っ…私っ…姫様がっ…りーちゃっ…」


ポロッポロポロッ


「全く、気づくの遅いのよ!行ってくるね、親友!」


「…ゔっ…グスッ…行ってらっしゃいませ!幸せになって下さいね!姫様!」(やっと気づいた、私の親友。待たせてごめん。助けてくれて、守ってくれて、ありがとう。)


全く、なんてタイミングで思い出すんだか…。


「リティがそんなに泣いてるところ初めて見るよ。」


「グスッ…ゔぅっ…私もこんなに泣いたの初めてよ。嬉し泣きだけど。」


「君を嬉し泣きさせるとは、やるねぇ彼女」


「あら、嫉妬はやめてね。あの子は私の唯一無二の親友なんだから。」


「うん。ちょっと妬けるけど、俺は君を泣かせるよりもいっぱい笑顔にしたいから。これから頑張るよ。」


「ふふっ…期待してるわ。」


帝国に着いた瞬間、彼の言葉の意味を知ることとなった。

国境を超えてからの全ての道に私の好きな花が植えられ、各領地では毎晩お祭りが開催され、皇都に入ると街全体が色とりどりに飾られていてとても祝福されているのがわかった。

結婚式はキラキラと幻想的な庭園とクリスタルでできた祭壇で行われ、誓いのキスの後には花火が上がった。


「もうっ…やりすぎよっ…あははっ!」


「その笑顔が沢山見れたから、やった価値はあったさ」


帝国の私への歓迎ぶりは各国へと伝わった。

もちろんそれはキャリングストンにも。

これで少しはわかってもらえたかな私が今どれだけ幸せか。


「伝わったかな〜?」



「楽しそうで何より。ちゃんと伝わったわ。姫様」



「「本当に君は彼女(姫様)と仲がいいね」」



「「ふふっ…だって私たちはずーっと友達だもの!」」

((だよね、親友))




〜Fin〜

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