『第4話 敵討ち』
第四話ヾ(≧▽≦*)o更新!
前回までの星屑達は……
サイキは勝手にアクセスキーを奪い、マゴス国の機密兵器に乗り込んでしまう。
しかしその直後連邦の機体が天井を破壊して強襲して来てしまう……
それは、私自身の自覚も無い声となって発せられていた……まるで呪いの様に紡ぎ出された言葉だ。
「う……煩い……黙れ……。お前は……アタシが殺す!!」
「……もう一度だけ告げるぞ?国際法で義務付けられているのでな……」
「国際法で?……だと!?アンタは……その機体で……無抵抗のアタシの家族を……命を……奪ったんだぁぁぁ!!」
『サイコフィジカルアームからサイコシナプスの伝達を確認。機体左腕にサイコフィールド展開。形状アローランスをデフォルトタイプにて展開開始……目標敵機へ射出』
『ブィィィン』
『バチバチ……ジュワ……バチバチ……バン!!』
突然機体が起動したかと思うと、連邦のパイロットは見たことも無い装備で、かなり離れた場所から攻撃された。
その攻撃は艦隊の装備する、レーザー装備を思わせる威力だった。
当然躱せる筈もなく、左腕から東部までを纏めて破壊される……
連邦のパイロットはコクピットを狙い撃ちされたと一瞬思った。
だが放置されたコンテナが邪魔をしたおかげで、射角にコクピットが収まらなかった様だ。
「な!?……なんだと!?この高出力武器は……連邦にない武器だと!?」
『なんだ?新型のメイン武装はヒートウェポンでは無いのか……』そう思いつつ連邦の兵士は、まだ機体が起動できるか各部位を動かす。
冷静に対処をしようと試みるも、敵パイロットには短時間でそれを成す事は出来なかった。
「く……やはりこれ程の破損では稼働は無理か。だが機体情報を敵に渡す訳には。せめて機体爆破だけは……」
サイキには聴こえていないが、そう独り言を言っていた連邦の兵士は『く……メインパネルも……それさえ出来ないか』と更に呟いていた。
パイロットは『機体を失い任務さえこなせない。その上、脱出機構を使うとは……私も……まだ甘いな……』そう反省をしつつ、今この場で死ぬわけにはいかない……と冷静に考えをまとめていた。
『部隊へ報告。ブルーセンチネル大破により、今から退却する』唯一残された外部スピーカーでそう言って、コクピットから丸い形状の何かが飛び出していく。
大方、仲間への通信のつもりだったのだろうが、メインシステムの破壊でそれは叶ってなく、メインスピーカーを通じて言葉が出るだけにとどまった。
そして丸いナニカは空中で分解すると、中から小型飛行装置を背負った兵士が飛び出て、飛んで逃げていくのが見えた。
「アイツが……39番コロニーやアタシの母さんを!!許さない……殺してやる……」
自我を失ったワタシは、怒りのままにコンソールを操作してコンテナから飛び出ようとした。
だが、『それが出来ない状況』だと気がつくまで時間がかかった。
その間ワタシは呪いを吐くように、苦しみ悶え続けていた……
「くそ!!動いて!!動いてよ!!アイツを……母の仇のアイツを逃がせないの!お願いだから……動いてぇぇぇ!!動けぇぇ……うううう……何で動かないの……何でよぉぉ!!」
『ダンダン!』と周りのモニターを蹴り、八つ当たりをする……
敵を目で追うのに集中しすぎていた。
目線の位置がモービルワーカーよりかなり高いので、実機の状況把握が出来なかった。
動かない理由は簡単で、タイタンの下半身は無くコードや内部パーツが剥き出しだったのだ。
脚のパーツどころか腰さえ無い……当然だが歩くことさえ出来なかった。
唯一ある腕で、ブルーオーガと呼ばれる機体を破壊出来たのは、本当に運が良かっただけだった……
◆◇
外部から強制解除され開いたコクピットから、私は掴み出されていた。
運が良いのは『それがドーガスだった』と言う事だろう。
「サイキ……この事は黙っておく。いいかお前は……もうタイタンは勿論、にもモービルワーカーにも乗るな。お前は勿論、義父グレゴリの為だけじゃない。今は亡き母親の為でもある」
「なんで?ドーガスさん何でそんなこと言うの?……ずっと願っていた仇が……やっと見つかったのに!!あの機体なの!アレに乗っていた奴が母を……」
「それだよ……。お前は……死神に魅入られた。兵役に就けば戦場で純粋に戦い……そして……奴に合う前に間違いなく死ぬ」
ドーガスにそう言われたワタシは、思いっきり憎しみを込めて彼を睨んだ。
「この機体があれば……そうならない筈よ!?あの機体に乗っていた人だって此れには敵わなかったじゃない!」
「いや……無理だ。個別機体の性能だけで連戦を抜け切るのはな。そもそも戦場に出る際の交換パーツはどうする?戦闘の素人の発想では、タイタンを使った戦争は出来ない」
そう言ったドーガスだに続き、真逆の方面から声をかけられた。
そしてその声は、聞き覚えのある声だ……
「お前は運が良かっただけだ。下半身が整備してないと分かっていたら……お前に勝ち目はなかった……」
「お義父さん……なんでそんな事をいうの!?そもそも次はその下半身があるでしょう!!」
「戦争はそんなに甘くない。敵にこの機体が知れれば、それ以上の機体を向こうが作る。地球連邦の奴とは遥か前からイタチごっこなんだ」
その言葉を聞いて、『それでもワタシはアイツを殺す!それがワタシが生きている理由なの!お父さんも知ってるでしょう?』と声を荒げる……
しかし自分の意識は、父へ怒鳴り散らした直後に何故か暗転した……
制圧用の医療麻酔銃で撃たれたのだ。
父の指示により仲間によって私は制圧され、こうしてセラフの制御キーは私の手を離れた……
◆◇
『グレゴリ隊長……ですがね!この数値は今までに無い情報なのですよ!』
『駄目だ!!いいか?娘は一般人だ。軍属では無い』
『では何故本人は戦いたいと言ったのでしょうな?軍属を志願したも同然なのですよ?グレゴリ隊長』
『それは敵を目視したせいだし、亡くなった母のことを思えばに決まっているだろう!』
『ならば、それを叶えるのも父親の役目では?』
『ならん……あの子は……駄目だ。死に際に頼まれたのだ!幸せにしてくれと……。戦争を忘れて……愛する人を永遠に思い続ける、心の清らかな娘にしてくれと……』
『だから言ってるではありませんか!タイタンへ乗るパイロットでは無く、システム調整のための人員だと』
『そう言っても、現状では敵が来たら戦う羽目になるでは無いか!そもそも動かせる様になったら……娘の気性では前線に行くのは間違いない……』
『だから貴方の目の届く場所で見張ればいいと言っているのです!システム部や機体開発部であれば実戦には出ない!それは承知でしょう?』
『特殊強化兵そして強化人間……しに完成を目指しているお前たちは、ウチの娘をそのどれかにしたいだけだろう!』
『……………』
「どうだい?聞こえてるかい?全く……コレがバレたら……私は超怒られちまう」
ドロシーは、私が軟禁されている部屋のスピーカーに、今問題の起きている部屋の音声を繋げてくれた。
その行為の理由は登園、どれだけ父親が私を愛しているかを知らせたかった事に他ならない。
そして、父の状況が非常に不味い状態にあると知らせたかったのだと言う……
何故なら機密事項である兵器に、自分の娘が勝手に乗り込んで起動させたのだ。
それも未だ嘗て『動かすまでに至っていない兵器』だったと言う。
軍内部のこの部門の関係者とすれば、喉から手が出るほど欲しい逸材……
事を不問にするには当然、それに匹敵するナニカが必要だ。
その為には私が協力する必要がある。
『自分自身を自制して、怒りに任せでしゃばらない我慢強さ』が必須となる。
「ワタシが協力して……戦場に行かないとサインしたら……義父は?」
「不問どころか昇進かもね?アンタを繋ぎ止めておくには、軍上層部として非常に有意義だろう?何せ問題の回避にも繋がる……」
「でも……父は悲しみますよね?」
「まぁ……間違いないね……。でもアンタがあのシステムを安定させてくれたら……アタイがアレに乗れる。アンタが心の底から怨みを抱えているやつは、アタイがぶっ殺してやるよ……」
ドロシーは『アンタが仕留めようが、アタイが仕留めようが結果は同じだろう?』という。
確かに結果は同じだが、その意味は大きく変わる。
しかし一番の解決策として、その状況が望ましいのは言うまでもない。
問題であるあの機体が安定すれば、量産化の目処が立つ。
そうなれば、誰かがあの憎い仇を葬ってくれるかも知れない……第3の希望までオマケでついてくるのだ。
自分の手でする事に固執するかしないか……ではない……
今、自分の義父さんの状況を好転させるには、この方法しかないのだ。
「そろそろスピーカー切ってこないと……まぁ……よく考えな。誰が誰を守ろうとしてるのかをね!」
「ドロシーさん……」
ドロシーは私の言葉を聞く前に手をヒラヒラさせると、ドアに施錠をして出て行った。
スピーカーからは今でも技術部の関係者と、お義父さんが言い争っているのが聞こえる。
当然ドロシーの言っていることはわかる……
グレゴリがワタシを守ろうとしている。
そして恨みを捨て切れない私は、その義父の健気な思いを踏み躙っている。
義父グレゴリにとっては、私の命は亡き娘の命と同等なのかもしれない……
そう思うと……もはや怨みと憎しみの連鎖を起こす道は選べないのも……理解は出来た……




