エピローグ
【ゲームの流れ】
①参加者は0から100の中から整数を1つ選ぶ。
②目標値=(全員が選んだ数字の平均)×0.8 に最も近い数字を選んだ人が1ポイント獲得。
③ ①②を6ターン繰り返し、最もポイントが高い人が勝利。
④ただし目標値が16以下(16含む)となったらバースト。
そのターンでゲームは終了し、最もポイントが低い人が勝利。
【参加者】
・理想の上司 仏井正蔵(部長)
・とりあえず様子見 流矢重軟(課長)
・ゲーム理論の人 蛇島理人(課長)
・株大好き 桐株金治(課長)
・巻き込まれた若手 若葉萌
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<Side:源平氏>
(いやー、うまくいってよかった。まさかこんな盛り上がる展開になるとは)
最終結果発表の直前。司会の源平氏は仮面の下で満面の笑みを浮かべていた。練りに練ったイベントの成功。企画者として、これ以上に嬉しい事は無い。
特に苦労したのは、ゲームのルール決め。源は企画成功のために、以下の要件を満たすべきだと定めていた。
・容易に理解できるシンプルなルールである事
・ルールはシンプルだが展開は複雑である事
・最後まで逆転を目指してプレイできる事
・駆け引き、読み合いの要素がある事
・参加者がルールを理解できなくてもゲームが進行出来る事
・時間が伸びても15分程度に収まる事
・できるだけ多くの人が参加できる事
このうち多くの人が参加できる事以外は満たせたと源は自負していた。飲み会の出席者は数十人。さすがに全員参加して15分に収まるゲームは思いつかなかった。
ちなみに元ネタはあったりする。今際の国のア○スというデスゲームマンガに登場した「びじんとうひょう」というゲームだ。ただしそちらはルールが複雑になったり時間がかかるため、飲み会様にシンプルに作り直したのが今回のゲームなのである。
そうして考え抜いて作ったルールだという自負があってなお、源は決着が判明するまで安心できなかったのであるが。
なぜならこのゲームには1つだけ、排除できなかった懸念点が存在するからである。
(場合によっちゃ1ターン目で即終了になるからなあ。そうならなくて良かった良かった)
そう、1ターン目から目標値16以下もありえたのである。2ターン目や3ターン目で起こってもあまり嬉しくない。バーストするにしても、早々に起こるのではなく盛り上げった末に起こってほしいと源は期待していた。
結果、期待以上に盛り上がったのは嬉しい誤算である。
(若葉君が初手2連続得点した時はまじで焦った~。2人同時得点とか奇跡だよ奇跡。目標値がインフレしたり最後は人気投票みたいになったり、1試合でどんだけ展開変わるんだよ。面白すぎるでしょ)
エンタメとして完成された奇跡のような試合。源がそれを小説にしようと思いつくのは、少し先の話である。
ちなみにデスゲームと言えど、罰ゲームなどは特に用意されていない。さすがに上司に罰ゲームをさせるほどの肝っ玉は源にはなかった。じゃあそもそも上司にデスゲームをさせるなという意見もあるかもしれないが、源の主張はこうだ。
仏井部長なら笑ってすましてくれると思ったから。この一言に尽きる。製品開発部はこういった催しには結構寛容だった。
なお勝者への報酬などもない。なぜなら源が賞品を用意するのをめんどくさがったから。
結局この企画は、デスゲームっぽい演出をしただけの、普通の飲み会の、いい感じに盛り上がっただけのイベントなのである。
(でもまだ終わりじゃない。一番盛り上がるシーンが残ってる)
残すは最終結果発表。ゲームの勝者を発表する時間だ。飲み会の出席者たちが今か今かと待ちわびている。
(なんかターンを経るごとに結果発表が適当になってた気がするから、最後はきっちり司会進行するか)
源はネクタイを正し、仮面の位置を調節し、コホンと1つ咳払いをして喉を整えた。
そして気合を入れ、マイクをオンにした。
『ついに最終結果発表のお時間となりました。泣いても笑っても、これで最後。今宵のデスゲーム、果たして勝利は誰の手に輝くのでしょうか。運命の結果は……こちら!』
固唾をのんで見守る観衆。不安と祈りとそれ以外の何かが入り混じったような表情の参加者達。
彼らの前にこのデスゲームの集大成が映し出され、イベントは無事終了したのだった。
ターン 1 2 3 4 5 6
仏井 35 33 40 40 0 0
流矢 40 50 50 38 38 33
蛇島 43 77 33 46 19 51
桐株 35 60 10 20 30 30
若葉 30 50 45 25 100 100
目標値 29 43 28 27 30 34
仏井 0ポイント
流矢 2ポイント(win!)
蛇島 1ポイント
桐株 1ポイント
若葉 3ポイント
最終勝者:若葉
その後。
飲み会は続いたが、話題はやはりゲームについてがほとんどであった。
自分ならこうした。この戦略はここが強い。そんな話が盛り上がったのである。そして意外というべきか、それとも製品開発部らしいというべきか、同じくらいある話も盛り上がった。
こういうルールにすると面白くなる。
こういうルールにするとこんな駆け引きが生まれる。
こういうルールにするとこんな戦略も成り立つ。
そう、新しいゲームの開発である。彼ら彼女らの議論は和気あいあいと続いたのであった。
Q.なぜ仏井部長に投票しなかったんですか?
流矢「あの場面で0を選ぶのは露骨すぎて嫌だった。それに……」
桐株「舞台は整えましたが投票するとは言ってません。それに……」
蛇島「イチローの背番号が51なので。それに……」
「「「仏井部長なら笑ってすましてくれると思ったので」」」
― 完 ―
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まさかの続編です⇒【半分実話】再び会社でデスゲームを開催したらとんでもない頭脳戦が繰り広げられたという話